「ピンポン接待術」 清水義範(著)


本日ご紹介する本は、私が大好きな作家・ 清水義範先生の『ピンポン接待術』 である。

 

ピンポン接待術 (祥伝社文庫)
清水義範
祥伝社
2015-03-13

 


清水先生は独自の視点のユーモア・ギャグ小説を得意とする作家で、本作もスポーツをテーマとした笑える小説集である。

その中のひとつが『ピンポン接待術』だ。

20✕✕年、環境保護の目的で「ゴルフ禁止法」が成立。すべてのゴルフ場は閉鎖、ゴルフ練習場も取り壊され、もちろんゴルフ用品店も潰れた。

そして警察の手により「クラブ狩り」が実施され、ゴルフ・クラブ及びその他のゴルフ用品がすべて没収されてしまう。
それでも密かにゴルフ用品を隠し持ち「ゴルフ用品不法所持」で逮捕される者が続出した。

こうして日本国内では完全にゴルフが消えてしまったわけだけれど、人々は案外すんなりとゴルフを忘れてしまう。
酒や祭りやポルノを禁止されるのに比べれば大したことではないというわけだ。

しかし、その結果、ひとつだけ大いに困る問題が生じた。

それは「接待で、何をしたらいいだろう」という問題。

「比較的誰にも楽しめて、若い人が必ず勝つわけでもなく、わいわい皆で楽しめて健康にも良い」

まさにゴルフは接待に打ってつけのスポーツであったのだ。

それに代わるスポーツがあるだろうか……。

あったのである。

そう、それが「ピンポン」だ。

卓球ではなくピンポンというのがミソ。
接待ピンポンの正統派スタイルは「浴衣にスリッパ」である。
ただし使っているラケットはエルメスやグッチといったブランドラケットなのだ。

接待ピンポンの花形はやはり混合ダブルスで、銀座のバーのホステスや芸者、コンパニオンなどを呼んでダブルスを組ませるのである。もちろんお得意さんのお偉いさんには好みの女性と組めるように配慮しなければならない。

ゴルフと同じくハンデがつき、実力の差があってもいい勝負ができるようになっているというのが接待ピンポンの良いところだが、卓球の上手い若手社員が得意先の部長に勝ちそうになっていたりなんかしたら上司に呼ばれて「絶対に負けろ。会社からの命令だ」「お前のピンポンの腕なんか誰も見たくはないんだからな」と怒られてしまう。

そこそこの勝負を演じながら、最後は惜しくも負けてしまう、それが接待ピンポンの極意なのだ。

 

確かに接待でピンポンを使うのは効果的だ。
以前紹介したが、アメリカでは会社内で社員同士が行う卓球を通じて、ミュニケーションを図る取り組みが広まっているそうだ。

グーグルやコカ・コーラも顧客に!!~オリジナル卓球ラケットをオーダーできるサイトがスゴイ~

この傾向はつまり、卓球は接待に向いているスポーツであるということを物語っていると思う。
場所を確保して休日に皆で集まってやるだけではなく、来社した取引先の人と卓球をするという手もあるのだ。

卓球ができるオフィス用テーブル「ピンポンワークテーブル」なんてものもあるので、社内で本格的な卓球をすることは十分可能なのである。

社内・社外を問わず接待ができる卓球はまさにキングオブ接待スポーツ!

日本中の会社が接待目的で卓球を活用するようになれば、また違う角度から卓球の裾野が広がることになり、それはそれで素晴らしいことであると思う。

 

本書にはピンポン接待術以外にも、面白いユーモアスポーツ小説がいくつもあるので機会があれば読んでみてはいかがでしょうか。

私のお気に入りは、引退した口下手な力士が名コメンテーターとして活躍する様を描く「どすこいコメンテーター」だ。
めちゃくちゃ笑いました。ごっつぁんです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。