落合博満の『戦士の休息』という本を読んだ。
落合さんと言えば元プロ野球選手で、三冠王に三度輝いた超スーパースターであり、引退後は中日ドラゴンズの監督として華々しい実績を誇り「名将」と呼ばれ、さらには、声優デビューを果たしたあの落合福嗣(ふくし)くんの父親という、とっても凄いお人だ。
私の中で落合博満といえば、「頭脳派」「知将」 というイメージ。
この人の考えることは深くて鋭くて面白いので、テレビなどに出ていたらついつい観てしまう。
そんな落合さんの出したこの『戦士の休息』、実は野球に関する本ではなく、落合さんが大好きだという「映画」への熱い思いを語りつくした本なのである。
私も映画は好きでよく観るのだけど、映画の鑑賞法って人によって違いがあるよね?
本書の中で落合さんが自身の映画鑑賞法を語っているのだが、これがなかなか変わってるんだよね。
落合さんはね、何度も何度も同じ映画を繰り返し観るんだって。
例えば、オードリー・ヘップバーンの出演作を初めて観ると、どうしても視線は彼女に釘付けになってしまい、字幕を追うことができない。つまり、視覚は十分に満足するものの、ストーリーはまったくと言っていいほど頭に入らないのだ。そこで、二、三回観てオードリーの演技を楽しんだら、今度はしっかりと字幕を読み、どういう物語なのかを味わう。そうやって俳優の演技もストーリーも、あるいは舞台となった土地の様子やカメラワーク、バックに流れる音楽まで存分に楽しみ、そうしたすべての要素を自分なりに吸収して初めて、一本の映画作品を観たという実感が湧くようになった。
まさに「その映画のすべてを自分の中に取り入れる」というやつですな。
そんでね、この部分を読んだ時、私の現役時代の卓球観戦法と似ているぞと思ったわけであります。
当時はネットなんてなかった時代なので、ケーブルテレビで放送していた卓球番組や全日本選手権を録画して、ビデオテープが擦り切れるほど繰り返し観ていたものだった。
中でも私が最も観た試合は、85年の世界選手権の決勝「江加良VS陳龍燦」の試合。
ペン表同士の対決という今では考えられない奇跡的な一戦。
ペン表ソフトであった私は、練習終わりで毎晩のようにガン見していたのだが、ただ真剣に観ればいいというわけではない。
この二人は戦型は同じでも、プレースタイルはかなり違う。
私は二人の卓球エキスを余すところなく搾り取って自分のものにしてやろうと考えていたので、ポイントを絞りながら観るという方法をとっていた。
まず、江加良のプレーだけを集中して観る。
一回目は普通に観て、二回目は打ち方(ドライブ・ツッツキ打ち・ショートなど)に集中する。
三回目はフットワークとサーブに注目しながら観て・・・
と、こんな感じで4~5回観た後、次は陳龍燦に視点を移し、同じように繰り返し観る。
そしてまた江加良に戻る・・・。
こうしてポイントを絞りながら観ていけば、細かい技術まで盗むことができるというわけ。
これは何も自分と同じ戦型の選手の試合を観る時に限ったことではない。
例えば「ワルドナーVS金択洙」の試合。
シェーク対ペンドラの対決ではあるが、参考になる部分は大いにある。
まずは金択洙を集中的に観る。
同じペンということで、サービスの出し方、ショートやバックハンドの打ち方、フットワークなどに注目して繰り返し観る。
次にワルドナーに視点を移す。戦型はまったく違うが、強烈なサイドスピンをかけたブロックや多才なサービス、戦術など、集中して観てみるとペン表にも参考になるポイントがいくつもある。
こうしてひとつの試合をポイントを絞りながら観ていく観戦法は、落合さんの映画鑑賞法と同じであると言える。
私も現役時代はここまでしないと「試合を観た」という満足感は得られなかった。
私が中学生の時、顧問の先生が自分の持っていた一流選手の試合のビデオを部員みんなに観せたことがあったのだけど、みんなはただ漠然と観ていただけであった。これでは何の意味もない。
現役の選手(中高生)はポイントを絞って舐めまわすように観たほうがよいと思う。
でないともったいないもんね。
さすがに、「次は審判員とベンチコーチの表情に注目してもう一回!」なんて、そこまではしなくてもいいよ!
ということで、以前録画しておいた映画『卓球温泉』を今から観ようかと思いますので、本日はこのへんで。
まずは松坂慶子の「色気」に注目しながら一回目の鑑賞を・・・・。
自分も録画した試合は何回も見ます
超スローにして選手の手首、ラケットさばき、足の動き、位置、あらゆる動作を研究します
リンさま
超スローにするのはいいですねっ。
そういった研究が大事ですよね。