・作品概要
※ブログで執筆する都合上、一般的なシナリオのルールとは少し違う書き方をしています。
【シナリオ用語】
N=ナレーション
М=モノローグ(心の声)
同=同じ場所
フラッシュ=数秒程度の過去シーン
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〇 東京駅・『駅弁屋 祭』(店内)
・建司、『駅弁屋 祭』で駅弁を選んでいる。
建司のN「東京駅にある『駅弁屋 祭』は、全国各地の人気駅弁やオリジナル駅弁を200種類以上取り揃えている駅弁専門店だ」
建司「う~ん、さすがにこんなにあると迷うな……」
・ふと、ある駅弁が建司の目に留まる。
建司のM「おっ、これは!? 」
〇 東海道新幹線のホーム
・建司、新大阪行きの「こだま」に乗り込む。
〇 新幹線・車内
・建司、空いている座席に座る。
建司のN「卓球人の楽しみと言えばいろいろあるけど、観戦旅行もそのひとつ。地方の大会を観に行き、現地で地元のグルメを味わう。これほど楽しいことがあるだろうか。
・独身時代は1人で日本リーグ、インターハイ、国体、ジャパンオープン、いろいろ観に行っていたけど、結婚してからはめっきり回数が減って、年に1、2回程度だ。
・今回は大阪に中学生の全国大会を観戦しに行く。芽衣には、知り合いが出ているわけでもない中学生の全国大会をわざわざ大阪まで観に行くなんて信じられないと呆れられたが、好きなんだからしょうがない」
・建司、袋から駅弁を取り出す。
建司のM「観戦旅行の楽しみは現地に着く前から始まる。そう、駅弁だ。まずはこれ。新潟県を代表する超人気駅弁『えび千両ちらし』。前から気になってはいたけど、まさか東京駅で買えるとは思わなかった」
(画像引用元:http://keio-dept-blog.cocolog-nifty.com/blog/2014/11/post-16a6.html)
建司のM「敷き詰められた厚焼き玉子の下には具材が隠れているはずだけど、何があるんだっけ」
・建司、ワクワクしながら厚焼き玉子を箸でめくってみる。
建司のM「おおっ。こりゃすごい。コハダにウナギにエビにイカ」
(画像引用元:http://city.living.jp/tokyo2/tokusyu/110629/01.html)
・建司、厚焼き玉子を食べる。
建司のM「うん、旨い」
・建司、具材を食べる。
建司のM「う~ん、これも旨い。どの具材にもしっかり味がついていて、まさに絶品だな」
・『えび千両ちらし』をあっという間に食べ終わる。
・お茶を飲む建司。
建司「ふぅ。(手を合わせて)ごちそうさまでした」
・バッグから卓球雑誌を取り出す。
・中学生の有望選手の記事をチェックする。
建司のN「将来の日本代表となるような選手の中学生時代の勇姿を実際に見ておくというのは実に貴重な経験だ。この選手は伸びるかもしれないと予想しながら観戦するのも、学生の試合を観るときの醍醐味である」
・建司、ふと車窓を流れる景色に目をやる。
タイトル『卓飯 ~テーブルでは卓球と旨い飯を~』
第7ゲーム『シンプル・イズ・ベスト 東海軒の元祖鯛めし』
軽快なラリー音が響く。
〇 同・車内
・電工掲示板に『次は静岡』の文字。
『間もなく静岡です。お出口は~』と車内アナウンスが流れる。
建司のM「(卓球雑誌からハッと顔を上げて)お、もう静岡か。危うく忘れるところだった」
・建司、荷物を持ってドアの前に移動する。
建司のN「静岡駅での停車時間は4分間。その間にホームの売店で駅弁を買ってすぐに戻って来なければいけない。『のぞみ』や『ひかり』と違って、『こだま』は車内販売はないけど、すべての新幹線の駅に停車する。だから停車中に各駅の売店でご当地の人気駅弁を買うことができるのだ」
・ドアが開き、新幹線から飛び出し、小走りで売店に向かう建司。
〇 ホームの売店
・建司がやって来る。
建司「すみません。『元祖鯛めし』をひとつ」
店員「はい。××円です」
・建司、お金を払い、お釣りをもらい、駅弁を受けとる。
店員「ありがとうございました」
・建司、小走りで新幹線へと戻る。
〇新幹線・車内
建司「ふぅ。間に合った」
・建司、空いている座席に座る。
・袋から駅弁を取り出す。
建司「これがあの有名な、東海軒の『元祖鯛めし』」
・包装を取って、フタを開ける。
(画像引用元:http://www.rurubu.com/season/special/ekiben/detail.aspx?id=00000017062821)
建司「ほぉ~」
建司のM「誕生したのはなんと明治30年。100年以上にわたり売れ続けている超ロングセラー駅弁。それが元祖鯛めし。この無駄のないシンプルさ。見事だ」
・建司、鯛めしを食べる。
建司のM「うぅ~ん、醤油味の御飯と鯛そぼろが絶妙にマッチして……絶品!」
・たくあんをかじって、また鯛めしをガツガツと掻き込む。
建司のM「昼食としてはこれだけでは物足りないかもしれないけど、『えび千両ちらし』を食べたあとだからちょうどいい」
『元祖鯛めし』を平らげる。
・お茶を飲む建司。
建司のM「ふぅ。元祖鯛めし、旨すぎだわ。鯛そぼろの甘めの味付けも俺好みだったし――。うん、満足」
建司のM「それにしても、駅弁としては極めてシンプルな構成なのに、これほど旨いというのは見事としか言いようがない。あれもこれもっていろんなオカズを入れて味がごちゃごちゃしちゃってる駅弁ってのもあるよなぁ……。まあそれはそれで悪くはないんだけど、なんか中途半端というかね……」
・窓の外の景色に目をやる建司。
建司のM「これって、俺の卓球にも当てはまるかもな……。あれもこれもって、いろんな技術を練習してるけど、どれも中途半端になってる気がする」
〇(回想)卓球場
・チキータ、裏面打法、ショート、表面バックハンドなど、いろいろなバック系の技術を練習している建司。
建司のM「試合で勝つことを考えたら、非効率かもしれないな。いろんな技術の練習をやり込んでも、結局試合ではほとんど使わずに終わるってことがよくあるもんな。
・これを使えたら強力な武器になるとか、この技術は役に立つ時がきっと来るなんて信じて練習しても、結局試合では使えない。だったらその無駄になっている練習時間を、得意な技術を磨く練習時間に使えば、もっと効率よく腕を上げられるのかもしれない」
・ × × ×
(フラッシュ)
『えび千両ちらし』の厚焼き玉子をお箸でつまんでめくっている。
・ × × ×
建司のM「えび千両ちらしみたいに、何が出て来るかわからない引き出しの多い選手というのも憧れるけど、自分には無理だな。俺が目指すのはそこじゃない」
・ × × ×
(フラッシュ)
『元祖鯛めし』。
・ × × ×
建司のM「俺が目指すのは、最高に旨い鯛めし1本で男らしく勝負する、元祖鯛めしだ。得意な技術を磨きに磨いて、少ない持ち技でもしっかり勝てるような卓球――」
・『間もなく浜松です』と車内アナウンスが流れる。
建司「自分はどんな技を磨いていくべきか――。まあ、ビールでも飲みながら考えるかな」
・新幹線が浜松駅に到着する。
・建司、ホームの売店で缶ビールを買って新幹線に戻る。
〇新幹線・車内
・建司、空いている座席に座る。
・ビールを飲む建司。
建司「あっ、おつまみ買うの忘れた……」
・建司、一気にビールを飲み干す。
建司「ふぅ。――――――――寝よ」
・建司、リクライニングを倒し、そっと目を閉じる。
(了)
※「大阪編」へ続く。
【関連】
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僕もついつい欲張って、いろんな技術に手を出してしまいます。
日の丸弁当くらいシンプルにしないとダメですね 笑
ラケットマンさん
趣味でやる分にはいろいろやった方が楽しくていいんですけど、試合で勝つことを目指すならある程度使う技術も絞った方がいいですよね。
私も幕の内弁当から日の丸弁当くらいに技術整理しないといけません 笑
確かに、試合で使わない技術に時間を割くのは
問題ですよねー
関西に住んでいると試合がほとんど関東でやるので観戦に行きづらくて
困ります
大阪編、期待しておりまする
しんこうしんこうさん
絶対にこれは使うと思ってもやっぱり使えずに終わる、というあの毎度のパターン 笑
東京だと学生の試合もレベルが高いので観戦好きにはいい地域ですねぇ。
でも次の全日本選手権は大阪開催ですから、私も大阪に行きたいです。
グルメな街「大阪編」頑張りますっ。
そうか、大人は各地の大会に遠征できるのか…羨ましい…
Kさん
時間がなかったり金銭的なことであったり、なんだかんだで観戦旅行ができる人は少ないと思いますよ(泣)
T2とか生で観られたら最高ですけどねw