卓球王国を読む 2015年3月号

 

今月号は興味深い特集が満載で、いつにも増して面白かった。

 
「最強の男 張継科はなぜ暴れるのか!?」
「史上最強スーパー小学生に密着 怪物・張本智和の強さの秘密」
「荻村伊智朗没後20 特別企画〈後編〉 日本にはオギムラがいた」
「国際卓球連盟新会長 インタビュー」
 
どれも素晴らしい内容だった。今号を読む前は、張継科と張本智和の記事について紹介しようと思っていたのだけど、私が今回、特に面白く読んだのは、それとは別の2つの特集記事だった。
 
 
一つ目は『Another Story [Vol.21]西村雅裕』
 
昨年、全日本選手権マスターズの部フォーティで優勝し、42歳にして今年の全日本選手権に、シングルスとダブルスで出場した西村雅裕選手のインタビュー記事。
 
西村さんは、東北大学(薬学部)の大学院を卒業し、持田製薬という大企業の研究所勤務という、全国レベルの卓球選手としては異色の経歴。
 
学生時代は、独自の価値観を押し付けてくる顧問に振り回されたり(中学時代)、練習環境の整っていない進学校のために存分に練習できなかったり(高校時代)ということもあり、たいした実績を残しているわけではない。
 
社会人になってからの練習量も少なく、平日は週に一度、30分から1時間できれば良いほうで、土日も2、3時間程度だとう。
製剤研究所の研究職で、いくつものプロジェクトを率いるサラリーマンである身の西村さんは、少ない練習量の中でどのようにして無名の選手からマスターズチャンピオンにまで登り詰めたのか?
 
その秘密は、西村さんの練習に対するユニークな考え方にある。
 
西村さんは、練習では試合しかしないのだという。
基本練習やフットワーク練習などは学生時代からほとんどやったことがなく、やれと言われてもできないと思う、と話し、「そういうことが試合に必要だとは思わないんですよ」とまで言ってのける。
 
サービスでさえ、試合でしか練習しないというのだから驚きだ。
 
「サービスは相手に効くかどうかがすべてですから、ひとりでやっても上達しないと思うんです。それに、プレッシャーがない状態でできても意味ないじゃないですか」
 
卓球では、実戦的な練習をやらなければいけないと言われているが、実戦でしか練習しないというのだから、すごいと言うほかない。
 
日頃、若者たちと接することが多いという西村さんは、アドバイスを請われた時によく言うことがある。
相手が何をやりたがっているのか、何をやられるのが嫌なのかを考えること。相手の心理をつかみ、精神的に優位に立って試合をすることが大切だということ。
 
「右手でラケットを持ちながら左手で相手の襟やマワシ、究極的には肝臓をつかんで試合をするんだとよく言いますね。要するに、相手をいかに“蛇に睨まれた蛙”状態にするかなんです」
 
知性派の西村さんならではの表現である。深い。
 
記事には他にも、西村さんが試合で勝つために見出した、役に立っているのかどうか疑わしい独自の戦略なども紹介しているので、ぜひチェックしてみてほしい。
 
今後も、全日本選手権やマスターズの連覇を狙っていくという西村さん。
遅咲きのサラリーマン戦士から、益々目が離せない!
 
 
そしてもうひとつの特集は、
「四大ライバル用具対決 Vol.4 回転系テンション表ソフト」
 
プラスチックボールに変わると回転量は落ちてしまうと言われており、表ソフトでは強い回転がかけられず、苦しくなるのではないかと噂される。
そこで、人気の4枚の回転系テンション表ソフトを比較し、各々の特徴を検証するという企画である。
 
4枚のラバーというのがこちら。

バタフライの「レイストーム」

 

ヤサカの「スピネイト」

 

ミズノの「ブースターSA」

 

VICTASの「VO>102」

 

記事の前半では、この4枚のラバーの特徴や売れる理由、田㔟邦史(現役時代レイストーム使用。男子ナショナルチームコーチ)のコメントなどが紹介されている。
 
後半では、ペン表(裏面なし)の川口陽陽選手(YOYO TAKKYU)と、シェークでバック面が表ソフトの大坂亮輔選手(中央大)が4枚のラバーを試打。
 
各々のラバーに対しての2人の細かい分析が掲載されている。
そして対談形式でお互いの感想を言い合いながら、4枚のラバーの特徴と適性を見出だす。
 
最終的に、プラスチックボール時代に自分ならどのラバーを使うかという問いに答える。
 
果たして2人が選んだラバーとは?!
 
この特集を私が大いに楽しめたのは、私の現役時代の戦型がペン表ソフトだったからだ。
近年めっきり使い手が減り、絶滅危惧種としていつレッドリスト(絶滅危機にある野生生物の一覧)に掲載されてもおかしくないペン表ソフト。
 
しかし、ペン表ソフトが他の戦型より劣っているとは、私はまったく思わない。
世界を制することができる戦型であると信じている。
 
裏ソフトほどではないが、色々と種類がある表ソフトラバー。
現在使っているラバーよりも自分に合ったラバーが他にあるかもしれない。
 
この特集を参考にして、今まで使ったことのなかった表ソフトラバーを試してみてはどうでしょうか。
 
有望な表ソフトの使い手(特にペン)が出現することを、私は願ってやみません!

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