卓球の技術本はたくさんあるが、卓球用語をまとめた本はあまりない。
そんな卓球用語本の中でも、これほどたくさんの用語を正確に、かつ面白く紹介している本は他にないのではなかろうか。
著者の藤井基男さんは、日本初のシェークハンドのカットマンで、現在は「卓球史研究家」である。
卓球のことならあらゆることを知っている藤井さんが著す卓球本が、単なる用語の羅列で終わるはずがない。
卓球用語だけを扱う『卓球辞典』ではなくて、世界卓球史や古今東西の名選手のこともわかる『卓球の小百科辞典』を目指して書いたという本書には、用語に関連する面白いエピソード(コラム)も満載だ。
ちょっこしそのコラムを紹介する。
Colum 上衣を脱げ!!
大正時代の日本では、上衣を着たままやポケットに片手をつっこんだままでプレーする人がいた。わが国最初の卓球技術書(『卓球術』大正13年=1924年刊)で、鈴木貞雄は、これをいましめ、次のように述べている。
「是非とも上衣を脱ぎ、練習する習慣をつけねばならぬ」
「競技中左の手をポケットに入れたりする人があるが、これも習慣になるから注意すべきである」
Colum 第1回大会で女子複なし、なぜ?
1926年の第1回世界選手権で男子ダブルスと混合ダブルスを行ったのに、女子ダブルスはなかった。その理由をモンタギュ初代国際卓球連盟会長にたずねたところ、「当時イングランドでダブルスの人気がなく、女子ダブルスをやっていなかったから」という。
このようなコラムがいっぱい載っている。これを読むだけでも十分楽しめるよ。
本書はあいうえお順に色々な卓球用語が解説されているが、今の若い選手たちは知らないかもしれない用語もたくさんある。
木べらとコルク張りラケット
< p class=”p0″ style=”margin-bottom:0pt; margin-top:0pt; “>「木べら」とは、木の板の上にラバーも何も張らない木そのままのラケット。「コルク張りラケット」とは、木の板の上にコルクを張ったラケット。
共に1947–48年頃まで、日本では主流のラケット。現在は、表面にラバーを張ることになっており、木べらもコルク張りラケットも存在しない。
一本差し
シェークハンドラケットのグリップ(握り方)の一種。バック面の人さし指を、ラケットの先端方向に向けるグリップ。フォアハンドの強打がやりやすい反面、バックハンドを自然に振ることが難しいため、
現在このようなグリップの選手は少ない。このグリップの選手としては長谷川信彦(1967年世界チャンピオン)が有名。
(これが一本差し)
また、日頃よく使っている用語だが、意味を問われるとよくわからないという言葉もある。
例えば、テンション系ラバーなどの「テンション」。
テンション
バネを引っ張ったときのように、ラバーを構成する分子同士が引っ張られた緊張状態のこと。スピードグルーを塗ったラバーや、テンション系ラバーは、テンションがかかっているため、弾みや打球音がよいとされる。
めちゃくちゃ弾むバラーに思わず「テンション」が上がる、という意味のテンションだと思っていた人もたくさんいるでしょ?(いねえよ)。
知らなかった知識や用語を覚えたり、気になる言葉を調べたり、エピソードを楽しんだりと、本書はとってもお得で便利な本なのです。
この本を持ち歩いてさえいれば、いつ誰に卓球の質問をぶつけられたとしても即座に答えることができ、いつしかあなたは「卓球博士」あるいは「卓球界の一休さん」と呼ばれ、皆からの尊敬を集めることでしょう。
卓球通を目指す人には欠かせない一冊です。
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