100年にひとりの天才! ワルドナー伝説(前編)


本日ご紹介する卓球本はコチラ!

 

『ワルドナー伝説』
 
ワルドナー伝説 (卓球王国ブックス)
イエンス フェリッカ
卓球王国
2003-12

 

 

先日引退を発表したばかりのヤン=オベ・ワルドナーについて書かれた本なんだけど、いやあ~ほんと面白かった。

 

少年時代のエピソードから、38歳のベテランとなっても世界のトップ選手として活躍し続ける現在(出版当時)のことまで、ワルドナーの全てが詰まっている本である。

 

この本の著者は、フェリッカ・イエンスさんというスウェーデン人のジャーナリストで、82年のスウェーデン国内選手権のダブルスで準優勝(パートナーはアペルグレン)という実績を持つ元卓球選手。

 

そして翻訳は卓球王国の編集長としておなじみの今野昇さんである。

 

人口850万人の北欧の小さな国から、どのようにして「100年にひとりの天才」「神の子」と呼ばれるスーパースターが出現したのか?

 

少年時代に練習環境に恵まれていた       

 

ワルドナー少年は、先に卓球に興味を持って熱をあげていた2歳年上の兄を追いかけるように卓球を始める。

 

ワルドナー兄弟はスウェーデンの首都ストックホルムにある『スパルバーゲン』というクラブチームに入るのだが、このクラブには、トーセル、ラガフェルト、アペルグレンというナショナルチームクラスの個性的な選手がいて、彼らをお手本にしながら卓球に打ち込むことができた。


クラブの練習以外でも、家に置いてあった卓球台で、兄弟はひたすら練習に励んだ。
まさに少年卓球選手にとっては理想的な環境だったと言える。

 

規則的な練習は嫌い! 試合が大好き!

 

そんなワルドナー少年は、規則的な練習が大嫌いだったという。

 

この頃のスウェーデンは、日本の影響を強く受けていたので、規則的な練習を長時間行うことが主流で、サービス、レシーブ、速攻、フットワークというように一つひとつのテクニックを切り離して考えていた。

 

そうした練習にワルドナーはうんざりしていたのだ。


ワルドナーらは少年時代から「ふつう」のスウェーデン選手ではなく、実験的なことを好むプレーヤーだった。明らかに規定練習から逸脱し、台から離れてロビングを上げてみたり、自由なプレーを楽しんでいた。サービスを出す時でも、ワルドナーはいろんな回転のサービスをテストしたり、思い切り回転をかけたりしたために、サービスミスが多く出て、そのたびに練習は中断された。

 ふつうの練習を嫌っていたこの頃のワルドナー少年は、試合をすることがとにかく好きだったという。

ワルドナーの兄は、こう証言する。
「試合をすることが、信じられないくらいに好きだった」
「彼は週末になるといろんな大会に出場し、朝から晩まで試合をしていた。小さい時に、彼ほど数多く試合を経験した選手は少ないんじゃないだろうか」

 

ワルドナーの両親はトップレベルのボウリング選手で、子どもたちがスポーツに打ち込めるように、いろいろとサポートしていたという。
両親はクラブのボランティアとして、会場設備係などをやったりしていたそうだが、決してでしゃばったり、コーチに指導方法などの文句を言ったりすることはなかったそうだ。

 

兄や両親、クラブの先輩など、恵まれた環境の中でワルドナーは、自由に自分らしい練習方法で、独創的なプレースタイルを構築していったということだ。

 

周りの人からは怠けているように見えることもあり、誤解をされることもあったよ
うだが、怒られて潰されることがなくて本当に良かったと思う。

 

高校へは進学しない! そしてやっぱりゲーム練習がお好き

メキメキと腕をあげ、82年のヨーロッパ選手権で、16歳にして準優勝という快挙を成し遂げたワルドナーは、高校へは進学せず、プロの道を選んだ。

 高校へ進学しないという選択は、当時のスウェーデンでも一般的ではなく、学校の先生も何人かは反対したというが、ワルドナーの両親は息子をサポートした。

 高校生活を始める代わりに、フルタイムで卓球をするプロフェッショナルな生活をスタートさせたワルドナーであるが、やっぱりこの頃もゲーム練習がお好きだったようだ。

 ストックホルムにいる時にはチームメイトのアペルグレンとクラブの卓球ホールで練習。ウォーミングアップのあと、いくつかの練習メニューをこなし、そのあとにアペルグレンとワルドナーはゲーム練習に入っていくのが常だった。
「ぼくらはすごい練習をしていたと思うよ。お互いが闘志を燃やし、プライドをぶつけ合いながら行うゲーム練習。そしてお互いが最後のゲームまでギブアップせずに戦う。時々、4時間くらいぶっ続けでボールを打ち合い、練習後のシャワーに歩いて行けないほど疲れ切ったこともあったんだ」とアペルグレンは回想する。

 

ワルドナーの精神面の特徴

 

ワルドナー自身は自分の能力については、とても謙虚な考えを持っていて、相手をよく研究し、いつも相手から学ぼうとしているという。

 

そんなワルドナーの精神面の特徴を、本書ではこう紹介している。


  ワルドナー自身は意識的にメンタルトレーニングをしたことはない。それに、彼は決して、『成功するための方法』という類の本を読んだことはない。しかし、無意識のうちに彼の直感は彼自身を正しい方向に導いている。
  たとえば、彼は重要な対戦相手のビデオはよく見ているし、それは同時に自分の試合を分析することにもなる。ただし、その時に決して自分の負けた試合は見ない。自分に関するマイナスイメージは排除している。
  代わりに、いつも勝つ時のイメージを大切にし、自分の頭の中にポジティブなイメージをインプットしていく。そこでは自分に批判的になったり、ミスばかりを気にかけることはしない。常に勝つイメージを持つことをワルドナーは繰り返してきた。自分の犯したミスばかりを考えすぎると、次の試合で、ミスばかりを恐れることになってしまうからだ。

 

ただ単に才能だけでやっているわけではないのです(当たり前だけど)。

 

ワルドナーの変幻自在の技術や戦術の裏には、地道なビデオ研究という努力があったわけですな。

 

技術面に精神面、どれをとっても奥が深すぎるワルドナー。

 

一回では書き切れないので、続きは後編で!

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