『卓球王 水谷隼の勝利の法則―試合で勝つための99の約束事』

ついに読んじゃいましたよ。
ええ、そうです、チャンピオンの本です。
いや~すごかった、ほんと。

 


卓球王 水谷隼の勝利の法則―試合で勝つための99の約束事

 

雑誌などのインタビュー記事で、水谷隼という男は徹底的に卓球について考えている選手だという印象があったが、やはり本書には、その印象の通り、いやそれ以上の、卓球のあらゆる面での深い考察があった。
 
本書はいわゆる打ち方のハウツー本ではなく、水谷隼の、練習、技術、戦術などに対する考え方が綴られている。
 
第1章 戦略
第2章 身体
第3章 用具
第4章 練習
第5章 技術
第6章 戦術
第7章 メンタル
第8章 最後に
 
連続写真を用いての技術解説もあり、非常に勉強になるが、やはり面白いのは、卓球について水谷隼という卓球王が日頃どんなことを考えているのかということ。
 
例えば、ボールを打っていない時の水谷選手は、こんなことをやっている。
私は常に年中無休で、24時間イメージトレーニングをしている。たとえばサービスでもサポートの横から相手コートに曲がっていくイメージをする。それをずっとイメージしていると実際にできるようになる。
 ひとつのキーワードは「イメージ」。ボールを打つことだけが練習ではない。卓球台に向かっていない時、歩いている時、寝る時、暇さえあればイメージトレーニングをしている。そういうふとした時に、練習メニューなどの新しいひらめきが生まれることがある。
(第1章《戦略》20頁より抜粋)
 
また、水谷選手のストイックさの裏には、次のような考え方がある。
私は「これを我慢すれば富が手に入る」「試合で勝てる、名誉も得られる」という目的を常に考えている。目的がなかったら厳しい練習や生活を乗り越えられない。しんどい時には、自分の日給を計算して、頑張ろうと思う。
 お金を考えるのは嫌らしく映るかもしれないけど、それがプロフェッショナルであり、生活を懸けて卓球をやっている。今は趣味で卓球をやっているわけではないので、そういった目的を常に考えるのも自分にとっては重要なのだ。それで苦しい時を乗り切っている。
(第2章《身体》25頁より抜粋)
 
戦術についても、試合中にこれだけのことを考えているのかと心底驚かされる。
ごく一部中の一部を抜粋すると、
格下の相手への戦術としては、余裕がある時には普段の自分とは全く違う戦い方をする。全部YGサービスにする、レシーブは全部長くする、全部フリックするとか、自分を見せない戦い方をする。これを「A戦術」として、本来の自分の戦い方を「B戦術」とする。A戦術で1ゲーム目を取ればその試合は絶対勝てる。今までの経験で、そういう戦い方をして1ゲーム目を先取した時には100%勝っている。ただし、A戦術でやってみて、ダメだったら本来の自分の戦い方、B戦術に戻す。ところが、格上の選手と対戦する場合には、いつもの自分の戦い方(B戦術)でやってみて、それが通用しなくなったら普段自分がやらない戦い方、A戦術を用いる。
(第6章《戦術》137頁より抜粋)
 
本書を読んで、この人は24時間卓球のこと以外は考えていないのではないかと思わせるほど、卓球人としての熱量を感じた。
 
タイトルで「卓球王」と冠しているが、実力だけでなく、卓球に対する〝深い考察〟も兼ね備えているからこそ、堂々と「王」を名乗れるのだ、と納得した。
 
本書は、それほど分厚くもなく写真も多いのでとても読みやすい。なのに中身が非常に濃い、というめったにお目にかかれない秀逸な本である。
 
各戦型の戦い方、ゲームの捨て方、ガッツポーズについて、自分が卓球をやる意味について、などなど、水谷哲学が満載の本書は、
卓球選手、卓球の指導者、卓球の審判、卓球マニア、孫が卓球をやっている、水谷隼の追っかけ、ラージボール選手、など、卓球に少しでも関わる人すべてに強くお勧めしたい一冊である。
 
次に本を出す時は、「卓球王」ではなく、「卓球大王」となっていてもらいたいものである。
 
益々の活躍を期待するとともに、本書を読んで第二の水谷隼が続々と誕生することを願ってやみません!
 
 
最後に、私が一番感銘を受けた箇所を記して終わりにします。
 
ソフトボール、サッカーなど他のスポーツをいろいろやったけど、卓球が一番難しかった。だからこそ、卓球を極めたいと小学生の時に思った。その時には、一番難しい卓球を極めたら、スポーツ界の頂点を極めるものだと思っていた。だから、そこまで行きたいと思っている。
(第8章≪最後に≫196頁より抜粋)

 

【関連記事】
チャンピオンの異常性―「負ける人は無駄な練習をする」水谷隼(著)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。