数か月前の話。
ある人と練習をしていたんだけれども、その人はチキータがとってもお上手な人で、私のサービスはチキータによってホイホイと返されておったので、こりゃ何とか封じなければいかんってことで、私はロングサービスをちょいちょいはさみながら、チキータをなるべく打たせないようにする戦術を取った。
そしてもう1つの対策は「フォア前への下回転系サービス」である。
チキータ対策としてのロングサービスの有効性はよく言われることだけれど、もうひとつの有効な対策はやはり「フォア前」だろうと思ったからである。
ロングサービスはある程度功を奏したのであるが、フォア前がアカンかった。
フォア前へのサービスは、見事なチキータによって私のフォアへバックへピュンピュンと返って来て、逆に私が振り回される結果となってしまったのである。
呆然とする私にその人は、「チキータは意外とバック前への短いサービスが打ちにくいんですよ」と言い放ったのである。
ほんまかいな、と私は思った。
ウソよウソ、ウソだと言って、と身をよじる私にその人は説明してくれた。
曰く、チキータの上手い人からすれば、「フォア前からのチキータ」は、相手のフォアにもバックにも打ち分けることが比較的容易なのだそうで、素早く前後に動ける俊敏性と確かなチキータの技術を持つ選手にとっては、フォア前サービスはチャンスボールでさえあるのだと。
「チキータ上級者へのフォア前サービスは餌食にされる」というのはなるほどそうなのかと思ったが、それでもバック前のサービスがチキータ対策になるというのはにわかに信じ難く、ほんまかいな? の状態は続いていた。
そしたら、卓球レポートの2017年8月号を読んでいたときに、元日本代表の坂本竜介さん(upty 卓球ステーション)が、世界卓球の決勝戦を分析するという企画の中で次のように言っていて、ワオ、と思った。
樊振東はほとんどのサービスに対して強烈なチキータで先手を取ることができますが、その威力が最も弱まったり、ミスが出るコースがバック前です。「バック前のサービスはチキータされやすいのでは」と思う選手は多いかもしれませんが、実はそうではありません。
・なぜバック前が有効なのかは、チキータのスイングの仕組みを踏まえると理解しやすいでしょう。チキータは体の右側(フォア側)にバックスイングを取る技術です。そのため、チキータする側にとってはバック前が最も遠いコースになるので、威力が出しにくいのです。
またしても「ほんまかいな」と小さく叫んだが、実際にスイングの仕組みを意識しながら確認してみると、なるほど打ちにくい。
坂本さんは、樊振東はどんなサービスを出されてもチキータで返せるので、チキータの威力を弱めることが最善の策になる、ということを仰っている。
一般的にバック前のチキータはストレートに打つのは難しいので、返球のほとんどはミドルかバックになるわけだから、坂本さんの言うようにチキータの威力を弱わめることができれば、コースも限定できるので3球目を狙い打ちやすくなるということである。
これができればチキータ上級者に対する戦術の幅がグッと広がりそうだ。
この「チキータ対策のためのバック前サービス」は、今後ぜひ試してみたい戦術である。
とは言え、フォア前からのチキータというのはかなり高度な技術であるのは間違いないので、かなりの上級者でないと使えない技術だと思う。
つまりチキータ封じとしての「フォア前へのサービス」というのは中級者レベルにおいては効果的なサービスであることは間違いないだろうとも思う。
なので私は、「ロングサービス」と「フォア前」に加えて、「バック前」へのサービスというのも、チキータ対策として使っていきたいと思う次第。
そんなわけで、本日はチキータ対策についての記事であったわけだが、今回の経験で、何事も先入観はよくないということがよくわかった。
私がチキータで振り回されるはめになった悲劇は、「チキータはフォア前が打ちにくい」という思い込みが招いたものであった。
人はすぐに決めつけたがるもので、「力士は歌がうまい」「おばあちゃん子に悪い人はいない」「競馬場にいるオジサンは前歯がない」などなど、挙げれば枚挙にいとまがない。
こうした決めつけは思わぬところで足元をすくわれるかもしれんので、気をつけなければいけないと思った次第である。
カットマンってロングサーブが主体なのでチキータされる
ことって少ないんですよね〜
でも、逆に使うことはあるのですが
チキータ使うのはバック前だけだと思っててフォア前に
回り込むという考えがありませんでした
やって見ます
しんこうしんこうさん
カットマンに対するチキータ、カットマンがやるチキータ、これも面白いテーマですね。
やはりフォア前チキータは高等技術で、一般的ではないのかもしれませんね。
試合でフォア前にサービスをしっかり出せるというのも難しい技術なので、一般レベルだとフォア前チキータを見る機会はほぼありませんね。
フォア前サービスをチキータされると「レベルが違う」とビビってしまうので、かなり有効だと思います。
ぜひやってみてください。
ましてやカットマンにフォア前チキータされたらその瞬間「お手上げ!」と心が折れちゃうかもしれません 笑
一時期自分もチキータを使っていましたが、バックが変化表なので全然回転が乗らず狙われ続けてやめました(笑)
しかし、バックの主要な台上技術であるチキータだからこそバック前を狙う、というのは盲点でした。
チキータ対策でバック前にサービスを出す人が増えれば、自分のようなバック表がフリックで主導権を握りやすくなるので、この情報は広くひろまってほしいです(笑)
卓球主義さん
変化系表のチキータは効果が薄そうですね(笑)
「意外にバック前が打ちにくい」というのはなかなか気づかないポイントなので、これをチキータ対策として使っている人はほとんどいないと思います。まさに盲点ですね。
そしてバック前にサービスを出す人が増えれば、「表が主導権を握りやすくなる」とはこれまた盲点!
一緒に情報が広まることを祈りましょう 笑
バック前の方が得意な自分にとってはその情報もっと広まってほしいです。狙いやすくなるんで。
と言うか、チキータのバックスイングって右に取るのが一般的なんですね…肘を高く上げ、その先が体の正面で背骨のラインに沿うように取ってました。真横を捉えるか後ろor上を捉えるかの違い?
Kさん
バック前サービスはかなり厳しめに出さないと狙われやすいということですね。サイドラインギリギリを狙うくらいに。
肘を高く上げてヘッドをお腹の方に回してバックスイングを取るんで、普通のバックドライブのバックスイングと比べて「右寄りに動いている」ということだと思います。
坂本さんの表現に当てはめればKさんのチキータもおそらく右にバックスイング取っているということになるのではないかと。
表現の違いということですかねぇ。
バック前は紙一重に思います。
自分はチキータ多い人には、ロングとナックルも出しますね。フォア表を生かしてナックルサーブを出すと結構ミスってくれるように思います。
でこさん
まさに紙一重なので、ロングサービスやフォア前で揺さぶりながらバック前もたまに出していく、くらいがちょうどいいのではないかと思います。
バック前はサービスエースではなく、威力を弱めて3球目を狙うためのものとして使うという意識も必要でしょうね。
表のナックルサービスがチキータ対策になるというのはまだ試していませんが、ナックルだとチキータされてもこちらの回転がない分、いやらしい球は返って来ないのでしょうかね。
今度試してみたいと思います。
ナルコさん。お久しぶりです。
この記事は素晴らしいですね。
その通り、チキータはフォア前の方がやり易いんです。
こういうことをちゃんと言葉や文字にして下さったのを
個人のブログで見たのは初めてです。
ありがとう。
ベルゼブブ優一さん
お久しぶりです!
ありがたいお言葉、恐縮です。
やはりチキータはフォア前の方がやり易いんですねぇ。私のようなチキータ初級者は言われないと気づかないことなので勉強になります。
チキータが得意な相手に対して思いきってバック前に出せる勇気を持つことが大事ですね。
理屈で理解できてもビビってなかなか出せないのが現実ですが 笑
バック前、というより右対右における順回転横下、横系統のバック側に出されるショートサーブが非常に返球しにくいと思われます。
坂本選手も仰るとおり、一番遠い所での打球。まして逃げるように出されるサーブは返球できてもやはり追う動作が発生するので最も強い打球は出来ません。
逆回転系統のサーブはラケット面と噛み合い強い打球ができると考えます。
所謂、「オーソドックスなサーブ」がチキータ対策に一番有効だと考えます。サーブの質は求められますが。
ぱんだまさん
コメントありがとうございます!
「回転にもよる」という視点、深く納得し、合点がいきました。
同じバック前でも繰り出す回転次第では打ちやすい球にもなるということですね。
この視点を抜きにしたらみすみすチャンスボールを与える結果になりますね・・・。
対左に対しては回転を逆にして考えるという点も注意しなければ、ですね。
改めて勉強になりました。