【架空卓球本書評】『猿でもわかるツッツキ入門』/柏原元気(著)

 

緊急事態宣言中につき、外出もままならないという状況のいま、やれることといえば読書である。

なわけで、ネット上を隅から隅までさ迷いながら、まだ見ぬオモシロ卓球本を探しまくっていたところ、またまた私の鋭い卓球嗅覚が、ひとつの卓球本の匂いを嗅ぎつけた。

それが今回発見した卓球本『猿でもわかるツッツキ入門』(マヨネーズ文庫)である。

著者の柏原元気氏は、熊本県在住の歯科医で、本業の傍ら週末に子供たちに卓球を教えている方らしい。
卓球本を出してみたいという夢を持っていた柏原氏は、自身の患者だった出版社の社長に頼み込み、幸運にも出版の夢が実現したとのこと。

タイトルからもわかる通り、本書はツッツキに特化した初心者のための指南書である。
ツッツキに的を絞った入門書なんて実にオモシロそうではないの、ってさっそく読んでみたんだけれど、私はいま怒りにうち震えている。なぜかというと、本書が駄本だったからである。

書籍だろうが人だろうが、良いところを見つけて褒めるというのが私の基本的なスタンスなんだけれど、本書に限ってははっきり言おう、駄本であると。

 

まず、「はじめに」の部分でいきなり驚かされた。
なんと本書のタイトルについて、全国のお猿さん、ならびにその飼い主に対するメッセージが綴られているのである。

本書のタイトルには「猿でもわかる」という言葉が付いておりますが、決してお猿さんをバカにするという意図はございません。
世に出ているあらゆるジャンルの入門書には「猿でもわかる〇〇」というタイトルが数多あり、本書もそれに倣って付けさせていただいた次第です。
もし本書のタイトルによって不快な思いをされたお猿さん、もしくはお猿さんをペットとして飼われている方がおられましたら、まことに申し訳なく思います。
(中略)
むしろお猿さんという生き物は動物の中でも賢い部類なわけで、私も小さい頃よりテレビで日光猿軍団などのお猿さんの芸を拝見し、頭がいいなあ、凄いなあと感心しておりました。また、藤子不二雄A氏の漫画『プロゴルファー猿』も大好きでしたし、『おさるのジョージ』は幼少期の私の愛読絵本のひとつでした。そんな私がお猿さんをバカにするなどありえないのです。

 

こうした、本書のテーマ(ツッツキ)とはまったく関係のないタイトルに関する言い訳が、12ページにもわたって綴られているのである。

 

その無駄な文章が終わってやっと本題に入ったかと思うと、こちらもまた、駄文・蛇足のオンパレードであった。

例えば、「第四章・そもそもツッツキとは何か?」の中で、ツッツキに関する実にどうでもいい話を長々と語っていたりするのである。

ツッツキという言葉は文字で見ると「キツツキ」と似ており、キツツキという文字を見た時に、一瞬「ツッツキ」に見えてしまうことがあります。これはおそらく多くの卓球人が経験したことのある「卓球あるある」のひとつではないでしょうか。
私が初めてそれを経験したのは、中学2年生の春でした。
(中略)
「国語の授業中にキツツキをツッツキと読んでしまった時は、先生をお母さんと呼んでしまった時以上に恥ずかしかったです」

 

この圧倒的無駄エピソードに約28ページも費やしているのだから恐れ入る。

さらに「おわりに」では、「お猿さんたちへメッセージ」と題し、またまた、自分はお猿さんを決してバカにしていないことや、どちらかというと猿好きであることなど、念を押して訴えかけている。

がしかし、そこまでしておきながら、最後の最後、絞めの挨拶文において、「なにぶん本の執筆作業が初めてなもので、エテ公のごとき稚拙な文章になってしまったことは、平にご容赦ください」と、うっかり猿をバカにした言葉を使ってしまうというマヌケっぷりには心底呆れた。

まあ一応、ツッツキの基本的な解説や試合での効果的な使い方など、入門書としての体をなしている有益な部分もあるにはあるのだけれど、本書の大部分が無駄な内容で占められており、つまり本書は、ギュっとすれば30ページ程度でまとめられるペラペラな内容なわけである。

というわけで、私はこの本を絶対におすすめしない。
お金と時間の無駄ですよ。
(私のブログの読者は好奇心旺盛な変な人が多いから、面白がって買っちゃいそうなのが心配である・・・)。

点数:24点

2 件のコメント

  • ツッツキを重視するのもつい話が脱線するのも医歯薬あるあるですね。一応学生時代には全日本歯学生卓球選手権大会ベスト256の実績を持っているようですし、柏原先生の次回作に期待です。

    • Kさん
      そうか、これは医歯薬あるあるだったのか! なっとく。
      いま確認したら確かにベスト256でしたね。ただこれは「ベスト」を付けて凄い実績のように勘違いさせるという言葉のマジックかと思います・・。セコいなあ柏原氏は。
      でもなんだかかんだで、次回作は期待したいですね!

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