魔女に願いを
僕にとって大一番となる部内戦が、いよいよ明日に迫った。
来月には中学校生活最後の大会が控えている。その団体戦のレギュラーを決める重要な部内戦なんだけれど、僕は実力的に選ばれるかどうか微妙なところだ。
もう少しレシーブがうまければなあ、といつも思う。他の技術はそこそこできるんだけれど、レシーブだけは本当に苦手。相手のサービスの回転がよくわからず、ツッツいても打ってもミスになることが多い。
サービスの上手い選手が相手だと、ほとんどネットミスやオーバーミスしちゃって、相手のコートになかなか入らないから試合にすらならない、なんてこともある。
「くそっ、レシーブ力さえあったらなぁ」
そう言いながら僕は足元にあった空き缶を蹴った。
すると、コンッという乾いた音がした。
「なにをするんだい」
げっ!? 人に当たった!?
「あ、ご、ごめんなさいっ」
僕は慌てて謝った。
「せっかく来てやったのにずいぶんな挨拶だね」
「えっと、あなたは、誰ですか?」
「裏卓球界に住む魔女だよ。卓球に関する悩みを解決するために動いているのさ。まあ、単なる趣味だがね」
「裏卓球界? そんなのあるんだ・・・」
「お前の願いを叶えてやろうと思ってね」
「僕の願いを?」
「わたしの魔法で卓球の技術をひとつだけパワーアップさせてやるよ。どの技術をどうパワーアップさせてほしいか、具体的に言いな」
僕は戸惑いを隠せず、魔女の顔を見つめていると、
「早くしな。わたしゃ忙しいんだよ」
「えっと、ぼ、僕はレシーブが苦手なんだけど・・・えーっと、だから相手のサービスを百発百中で返せるようにしてもらいたい! できる?」
「お安い御用さ」
そう言うと魔女は杖を振りかざし、「プンチャラポンチャラピンポンパン!」と呪文を唱えた。強烈な閃光が放たれ、僕の身体はビリビリッとしびれた。
不思議な感覚に僕はしばらくぼうっとしていたけど、気が付いたらもう魔女の姿はなかった。
翌日、僕は部内戦を必死で戦い切った。
驚いたことに、あの魔女の魔法は本当だった。僕は相手のサービスをすべて返球できた。ネットミスもオーバーミスもなく、すべてのサービスを相手コートに入れることができた。
で、試合の結果はどうだったかって?
8戦全敗だったよ・・・。
だって、すべてのレシーブが山なりになるんだから。
返す球がことごとくチャンスボールになっちゃうんだよ。
たまにスマッシュミスしてくれることもあるんだけど、ほぼ確実に1発で打ち抜かれてしまうんだ。
でも、魔女を恨むのはお門違いなんだろうね。
“相手のサービスを百発百中で返せるようにしてもらいたい!”
魔女は僕の言った通りにしてくれた。
僕はあのとき、「レシーブ力を世界チャンピオンレベルにしてくれ」と言うべきだったのかもしれない・・・なんて思っても、あとの祭りだ。
これから僕は、こんな大きなハンデを抱えたまま卓球人生を歩まなければならないのだろうか・・・。高校に入っても卓球を頑張ろうと思っていたのに、なんてことだ。
自宅に帰ると、リビングの隅のほうに笹竹が置いてあり、小学生の妹たちが書いたと思われる短冊が吊るされていた。
そういえば今日は七夕だったな。
僕はテーブルの上に置いてあった短冊を手に取ると、祈るような気持ちでペンを走らせた。
“これから対戦するすべての選手が、僕のレシーブをことごとくスマッシュミスしますように”
こんにちは!
このシリーズ大好きです。
これからも楽しみにしています。
しーさん
どうも、こんにちは~。
ありがとうございますっ。
私もこのシリーズは書いていて楽しいです。
これからもコツコツやっていきたいなあと思っとります (>_<)
おつかれ様です。
今週の月曜日、高野口p4会実行委員会の打ち合わせを行いました。
コロナで7月は見送ります。
8月から再開させる予定です。
関西のP4マッチも頑張って行きます。
高野口p4会の記事も書かなければ、ホンマに酒紹介ブログになっちゃいそうです
中辻さん
なるほどぉ。
このご時世だと7月の見送りも仕方がないですね。
関西P4マッチ界の雄として8月からまたバリバリ頑張ってください。
私も試合記事・P4記事が書けないので妄想記事ブログになっちゃいそうです 笑