打たれる勇気――動かない卓球の源流「ペンドラー」の教え

 

2013年に発売され大ベストセラーとなっている『嫌われる勇気――自己啓発の源流「アドラー」の教え』
水谷選手も最近購入したと言っておったが、私もちょっこし読んでみた。
今回は本書の感想を書きたいわけではなくて、「嫌われる勇気」も大事だけど「打たれる勇気」も大事だよねって話をしたいだけなのである。

ちなみに、タイトルの「ペンドラー」ってのはもちろん「ペンドラ」から来ているわけだが、「アドラー」と卓球用語をひっかけるためにそうしただけであって、今回の記事は別にペンドラに限った話ではないのであしからず。

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私は現役時代、とにかく自分から攻撃することを徹底して教え込まれた。
レシーブから積極的に仕掛けなければいけないし、相手のツッツキは必ずフォアで攻撃し、こちらがツッツキをするなんてのはもってのほか。ロングサービスも打たれる危険性が高いのでほとんど使わない。
ショートでさえも、連続で3回ほど続けようものなら「なぜ回り込んで打たないんだ!」と怒られたものだ。

この時の「すりこみ」により「先手を取らなければ悪」的な思いが私の中にはあって、卓球を再開してからも、自分から攻められなかった時などは「もっと動かんかい」「もっと打たんかい」とショボンとなってしまうこともある。

しかし、最近では「あまり動かない卓球」を目指すべきなのではないかと思うようになった。
こう言うとずいぶん消極的に聞こえるが、決してそうではなく「わざと打たせる戦術」を駆使して戦うということである。
つまり「後の先(ごのせん)」ってやつ。
つまり「相手の攻めを受けてから攻め返す」ってな戦術である。

ただし、打たせるとはいっても「強烈なボールを打たせない」というのが絶対的な条件である。
チャンスボールを与えたり、フルスイングで打つ余裕を与えることのないような打球をかましてやる必要がある。

たとえば、バックサイドへのブチ切れツッツキやサイドスピンツッツキ、フォアサイドへのブチ切れツッツキや相手から逃げるような軌道のサイドスピンツッツキなど。
あるいは、以前ブログでも「もっと積極的に使うべし!」と書いた、両サイドへのロングサービスなど。

関連記事→ロングサービスの重要性 。もっと積極的に使うべし

 

で、相手に威力のあるボールを打たせないことに成功した後は、基本的には以下のような技術で反撃する。

・プッシュ
・攻撃的なブロック
・カウンター

また、強打できない絶妙なナックル系や横回転系のショートサービスを出し、軽いフリックをさせておいてそれを狙い打つ、というのもアリだ。

シンプルではあるが、私がやろうと考えている後の先とはこのようなことである。

ただし、いくら守備にある程度の自信があるといっても、相手の攻撃力が圧倒的にそれを上回っている場合は、リスクを負ってでもこちらから先に仕掛けて攻めまくらないと勝ち目はないだろう。

たまにブロックが鉄壁な人がいるが、そんな人に対しては逆に「ほれほれ打ってみろ」と強気で後の先の戦術を用いると良いのではないだろうか。

つまりあれだね、タイトルでは「打たれる勇気」としたけれども「打たせる勇気」ってことですな。
ただ打たれるわけではなく、うまく打たせるわけである。

後の先というのは「自分から仕掛けたにもかかわらず得点できなかった」という精神的なダメージも与えることができ、相手のリズム(調子)を崩すことにも繋がる可能性もあって、非常に効果的な戦術だと思う。

アドラー心理学の大きな特徴のひとつは「トラウマの否定」である。『嫌われる勇気』の著者・岸見 一郎先生もアドラー心理学について「過去を振り返らない心理学」と答えている。

私も「先手を取らないと怒られる」というトラウマを払拭し、「後の先の卓球」を前向きに追及していこうと思う(もちろん攻撃することが基本ではあるが)。

 

【おまけ】
今回、アドラーをもじったタイトルでちょいとふざけてみたのだけれど、ただのおふざけだけでなく、これによる利点を発見した。

それは「やるべき課題が頭に定着する」ということ。

私は、練習で検証すべき課題をすぐに忘れてしまいがちなんだけれど、パロディ化することによって頭に定着し、練習時にパッと思い出すことができるのである。

皆さんも、やるべき課題を忘れないために、自分なりに工夫したネーミングやパロディ化してみたりすると良いのではないだろうか。

 

 

16 件のコメント

  • 僕がカットマンとして心掛けていることは
    打たれないようにするのでは無く打ってもらうということです
    打ってもらう事で自分も相手も練習になるという考え方なのですが
    考え方が似てますね

    • しんこうしんこうさん
      わざと打たせることによる練習法というわけですね。
      実戦の時だけでなく練習時にそれを心掛けることで守備力の強化にもなりますからね。
      あと、カットマン相手の後の先というのも研究したいと思ってます(なかなか難しそうですが)(>_<)

      • わざと浮かせられて打たされそれをブロックでまわされズルズル
        負けてしまったという試合はありましたよ
        それから一週間くらい悔しくて攻撃ばっかりしてたら並のドライブマン
        には負けなくなりましたよ

        • しんこうしんこうさん
          最も精神的にダメージを受けるやられ方ですねw
          しかしそれをきっかけに攻撃力を身に付けられたのは大きな収穫だと思います。
          まさに災い転じてなんとやら、的な。
          この精神は非常に大事ですw

  • 前にも書いたような気もしますが、個人的にはいわゆる『速攻』って言葉は、戦型に付くんじゃなくて戦術に付く言葉なんじゃないのかなと最近考えてます。
    相手より先に自分の主戦技に持ち込むのが速攻なのかなと。
    攻撃型なら相手より先に攻撃する事かも知れませんし、守備型なら相手に攻撃をさせてカットやショートで変化をつけていったり。
    何にしても気持ちでしっかり攻めているのが大事なんでしょうかね。

    それにしてもタイトルが何回見ても宇宙人を呼びそうだなと思って笑ってしまいますね。
    スペースピープル。

    • つぐさん
      非常に鋭い視点だと思います。
      表ソフトだから速攻とは限らないということですよね。
      相手より先に得意戦術に持ち込むということが第一なので「スピード」も関係ないということ。
      守備をしていても気持ちが「攻め」であればそれは攻撃であり速攻であると。
      ペンドラー心理学の1ページ目に書き記しておきたい概念です ^^;

  • 私のチームに「椛澤かえ」と言う選手がいます。シェーク異質前陣速攻型なのですが、得意技が「ツッツキ」…… 先日の東京選手権でもツッツキでノータッチを量産、またジュースの緊迫した場面でも平気でフリックスマッシュをするターミネーターぶり。笑 観ていて面白いプレーをします。(監督としてはドキドキですが) 戦型のイメージ変わりますよ。
    また機会があれば観て下さい!

    • カントクさん
      ツッツキでノータッチを量産とは凄いですね!
      そんな選手がいるだなんて。
      まさに私の理想とするところ(笑)。
      どうしも似たようなプレーになりがちですが、観ていて面白いプレーをする選手というのはそれだけで貴重ですね。
      ああ、観てみたい。
      さっそく動画を探して見ます!

  • 後の先は最近自分も意識してます。
    前にあった誘いこみの要領で、フォア側を
    開けておいて打たせてカウンター、という
    流れですね。
    ただ、部内に同じような戦術の人がもう一人いるので、その人とやると大体膠着状態に
    陥ります(笑)

    • 卓球主義さん
      そうですね、例の誘い込みと組み合わせられると理想的です!
      「同じような戦術の選手との対戦で膠着状態」これを想像すると面白いですね。
      まさに我慢比べ(>_<)

  • あまり動かない卓球、わざと打たせる戦術ですか。
    何志文選手などベテランのペン表に多いような気がします。
    狙ってそういう卓球ができれば良いですが、私の場合、結果的にそういう卓球をしてしまっているところがあります。
    相手にガンガンドライブを打ち込まれ、こちらはブロックでコースを散らして対応するしかないという。
    私としてはそういった消極的な卓球はやっていてあんまり気持ち良くありません。
    できれば先手先手で攻め倒す卓球がやりたいと思っています。
    (いい歳して)フットワークを駆使し、ミスを恐れずスマッシュを乱打する卓球。(その結果、自滅するかもしれませんが)
    まあ、言ってみれば自己満足であって、現実的に勝ちを目指す卓球とは違うかもしれませんね。

    • ベーゴマさん
      勝ち負け以上に「やっていて気持ち良い卓球」は大事ですよね。
      後の先も狙ってできれば気持ち良いのだろうと思います。
      私も基本的には両ハンドで打っていく(田崎さん的な)卓球を理想としており、あまり動かなくても両ハンドでガンガン打っていくスタイルをベースにしたいと考えてます。
      かなりリスキーな卓球ですが、唯一無二なスタイルをやりたいのでそこを追求しています。
      そしてその中に後の先を織り交ぜていく、ということができればプレーに幅が出ると期待しているところです。
      勝ちにくいスタイルだとは思いますが……。

  • 打たれる球を後陣でさばくのは格好いいですよね!
    僕も後ろに下がるのですが、高い球ではなく、低い球でしのぎますね!低い球だとスマッシュよりドライブがくるので返しやすいですね!

    • シェーク裏裏野郎さん
      後ろからさばくのがうまくいけばカッコ良く、自分も気持ち良くなりますね!
      いかに低い球で返せるか、確かにここがポイントです。
      私の場合はペンなので、バック側に来たボールをしっかりバックハンドで打ち返せるか、これが勝負の分かれ目となりそうです!

  • 大昔、まだ現役だった頃は似たことをしていました。
    相手をよく観察して、わざと相手の得意コースに球を送り打たせました。
    それにヤマを張っていてカウンタースマッシュ。相手はショックを受け、それに乗じて一気に有利な形勢に持って行く。

    今では自分の思うとおりの球が打てなくなったので、そんなのプレーは過去の幻とあいなりましたが。

    • あいうえおさん
      コメントありがとうございます。
      「わざと相手の得意なコースに送ってからのカウンタースマッシュ」これが決まれば相手選手の受けるショックたるや相当なものなのでしょうね。
      そこから一気呵成に畳み掛けることができたらまさに理想的な戦術です。
      試合で使うにはかなり勇気が必要ですが、私も思い切って試してみたいと思いますww

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