今月号もリオ五輪観戦並みに熱中して読み倒しました。
今月号の目玉企画はコチラである
吉村真晴の
プラ時代を制する
フォアハンド
2014年8月、ボールの素材がセルロイドからプラスチックへと変更された。
そこから吉村真晴は急激に世界ランキングを上昇させ、ついにはオリンピック代表の切符を手にしたわけだが、「なぜ吉村が急成長したのか」に焦点を当て、その真相に迫る、という内容である。
吉村選手と言えば、強烈なバックハンドドライブが印象的だが、プラスチックボールになってからは、両ハンドで速さを求めるよりも『どれだけ自分からしっかり攻撃できるか』が大きなポイントになると考え、フォアハンドドライブをより多く使っていこうと決めたという。
この企画では、吉村選手のフォアハンドドライブの進化の理由を「用具」「技術」「戦術」の3つの視点でひもといている。
例えば、技術面のポイントとして挙げているのが、「スタンスの変更による打球の威力の向上」である。
「プラスチックボールに変わり、セルロイドボールに比べて回転量が減り、スピードも遅くなったことで、今まで以上にフォアハンドドライブの威力が必要になると考えました。そのために見直したのが、スタンスです。
以前は台のエンドラインに対し両足を平行に並べて体を正面に向ける平行足のスタンスで、早い打球点を捉えることにこだわっていました。しかし、プラスチックボールになってからは、右足を大きく引いた左足前のスタンスをつくり、半身の体勢をつくってから打球することを心掛けています」
つまり腰を右に大きくひねって、体全体でスイングするということ。
左足前のスタンスにすることで、腰を右に大きくひねることができるので、体の右側に打球スペースを広くつくることができる。
広い打球スペースができるということは、ボールを引き付けてから打つことができるため、打球の威力と安定性が増す、ということだ。
そしてスイングする時に意識しているのが「体を回転させること」だという。
スイングで意識しているのは「体を回転させる」ことです。体の回転を使うとラケットをスムーズに振り抜けるので、打球に威力が出ます。また、体が前に移動しないので、その分、戻りをスムーズに行うことができます。僕は、よほどのチャンスボールや浅いボール以外は、左足を踏み込まずに、その場で体を回転させることを意識してフォアハンドドライブしています。
なるほど、確かにしっかりとひねってるね。
踏み込むのではなく「体を回転させる」という意識を持つというのは本当に大事なポイントだと思う。
プラスチックボールになった現在の卓球だからこそ、「腰をひねって右足から左足へ体重移動しながら体の回転で打つ」という、卓球の基本ともいうべき打ち方に立ち返る必要があるかもしれませんね。
そしてもうひとつの注目企画がコチラ
2016秋、新製品表ラバー
『インパーシャル』シリーズの実力
2016年11月21日にバタフライから、2種類の表ソフトラバー『インパーシャルXS』と『インパーシャルXB』が発売された。
このインパーシャルシリーズとはどのようなラバーなのか、その実力と開発の裏側に迫るという内容。
企画の後半では、バック面に表ラバーを使用している香港代表の唐鵬選手がインパーシャルシリーズを試打して、その感想を述べている。
バタフライ研究開発チームが「これまでにない高性能の回転系ラバー」を目指して開発した『インパーシャルXS』について唐鵬選手は、
「『インパーシャルXS』は、表ラバーを使いつつも、ドライブを打ってプレーに安定性を求めたい選手や、ツッツキなどで打球に回転をかけたい選手にとって良いラバーだと思う。あるいは、ドライブやツッツキで回転をかけるのが苦手だという選手が使えば、回転をかける感覚をつかみやすいだろう。
このラバーを使うとしたら、フォア面の方がいい。なぜなら、フォア面だと体全体を使って威力のあるドライブで攻撃しやすく、このラバーの優れた回転性能を生かすことができるからね。
このラバーでさまざまな技術を試してみたけど、総合的に見て、回転性能に優れている。表ラバーながら、回転重視のプレーを目指したい選手をサポートしてくれるラバーだと思う」
(一部抜粋)
そして、打球の回転とスピードのバランスを追求し、従来のバタフライのラバーのパワーアップ版と位置づける『インパーシャルXB』については、
「僕はバック面に表ラバーを使っているけれど、表ラバーを選ぶときは、直線的に飛ぶ打球のスピードや、ナックル性ボールの出しやすさを重視している。裏ラバーとの違いが大きければ、球質の違いで相手を揺さぶることができるからね。
その点から見て、『インパーシャルXB』は僕のようなプレーをする選手に向いている。
僕は今『フレアストームⅡ』を使っているけれど、『インパーシャルXB』は『フレアストームⅡ』の性能を高めたようなラバーだね。
表ラバー特有のはじくように打つバックハンドが打ちやすく、打球のスピードが速い。また、ナックル性ボールも出しやすい。だから、裏ラバーとの性能の違いを出しやすい。『インパーシャルXB』で打ったボールの軌道は直線的になりやすく、どちらかというとスピードを重視しているラバーだと感じた。
だから、打球のスピードを生かした攻撃力を重視する選手や、ナックル性のボールでラリーに変化をつけたい選手に向いていると思う。
(一部抜粋)
生粋の表ソフトっ子の私としては、この記事を読んだ瞬間「今すぐに試してみたい!」と思った。
いやあ、実に惹かれるラバーですよこれ。
今後、表ソフトユーザーの間でブームを巻き起こすかもしれませんな。
また、今月号では、女子代表の新監督に就任する馬場美香さんのインタビュー記事も掲載されており、これからの女子代表の展望を語っている。
こちらも必読である。
ということで、今月号はこんな具合です。
『卓球王国』2017年1月号を読む、『卓球レポート』2016年12月号を読むの記事を拝読いたしました。良く読み込まれており、雑誌編集者にとってまさに「編集者冥利につきる」といったところでしょうか。吉村選手の活躍の背景にはプレイスタイルの変更があったことにガテンが行きました。水谷選手に関する記述は「眼光紙背に徹する」書きぶりで、だからこそ行間のさきに神々しい瀬戸内寂聴のお姿が予言のごとく見通されるのです。妙に納得です。
ペンドラ直ちゃんさん
嬉しいお言葉です。日頃より、書評・感想を書くからには、上っ面をなぞるだけの読書ではダメだと肝に銘じながら読んでおります。
吉村選手と水谷選手、それぞれの躍進の裏にはまったく異なるストーリーが隠されており、非常に興味深いものですね。
水谷選手のさらなる深みに光を当てるのは卓球界以外の人間しかいないのではと思います。将棋の羽生さんあたりと対談しても面白いかもしれません。ただやはり表紙がお似合いなのは「寂庵」の庭に佇むお二人の姿ですね。
卓球レポートで今月は吉村選手だったので次は丹羽選手ですかね。丹羽選手は最近ラケットを変えたので、丹羽選手の用具について気になります。また、最近の丹羽選手が前より下がっていると感じるのは私だけなのかということもこれでわかるかもしれないので楽しみです。
ターゲットブルーさん
丹羽選手の可能性はありますね。
丹羽選手が下がり気味でプレーしているとしたらその意図が気になりますね。飄々として思考が読めない丹羽選手の裏側を覗いてみたいものです。
私も次の卓球レポートを期待して待ちたいと思います。