本日ご紹介する本はこちら。
田崎俊雄さん監修の『卓球 基本と戦術』
田崎さんと言えば、90年代中盤~00年代中盤にかけて、日本代表として世界を相手にブイブイ言わせていたお方(オリンピック3大会連続出場)。
ペン表ソフトながら、前陣のみならず、中陣・後陣から両ハンドで打ちまくるという独自のスタイルで、これほど観ていて面白い選手はいなかった。
私の現役時代のスーパーヒーローであり、今でも好きな卓球選手トップ3に入る(あとの2人は劉国梁と江加良)。
田崎さんは現在、大学卓球界の王者である明治大学卓球部の監督を務めている。
協和発酵キリン卓球スクールの校長でもあり、子供たちの指導もしているそうだ。
本書は、卓球の用具や技術の基本的な解説と、試合における戦術について書かれており、初心者の方に特におすすめしたい本である。
といっても、当たり前のことしか書かれていない単純な本などでは決してない。
丹羽孝希選手など、現役の明治大学の部員が手本を示し、そのテクニックを詳しく紹介。
現代卓球では欠かすことのできない技術「チキータ」などの解説もあり(手本は丹羽孝希)、中級者・上級者にも参考になる内容だ。
田崎さんは、「はじめに」で基本の大切さを語っている。
卓球には、いろいろな理論があって、指導者によって考え方も異なります。しかし、一番大切なことは「基本」です。最新のテクニックも必要だと思いますが、基本は変わりません。世界のベテラン選手が、長年選手を続けていて、しかも、まだまだ強い。これは基本がしっかりできていて、ミスをしないからです。基本が身についていないと、少しブレたりズレたりすると、すぐにミスをしてしまいます。基本さえしっかり身についていれば、どんどん伸びる。逆に、基本が身についていないと、伸びしろがなくなってしまいます。今、勝てないと悩んでいる人でも、基本が身についていれば勝てる日がきっとやってきます。(「はじめに」より抜粋)
これほど基本を強調する田崎さんが、他の選手には真似できない独特なフォームで超個性的なプレースタイルであったことが何だか面白い。
しかしそれも、しっかりとした基本があってこそというわけなのだろう。
基本ができていれば変な打ち方もできる(猪木風)。
基本あっての応用である。
私は先日、医師の人が書いた『「時間がない」から、なんでもできる!』という本を読んだ。
仕事・家事・育児に追われ、目が回るほど忙しい日々の中で、留学のための勉強まで加わる。それら全てのことをどのようにこなし、どのような時間の使い方をしたのか、その方法論について書かれた本なのだが、この中の、勉強法についての記述が興味深かった。
著者は、大学受験や国家試験を受ける際、すすめられた問題集を何冊も買い込んだものの、結局すべてを使うことはできず、未消化感が残ってしまったという。
その時の教訓を活かし、留学(ハーバード公衆衛生大学院入学)のための勉強では、問題集の使い方を工夫した。
そのポイントは「ひとつに絞って、繰り返す」こと。
まずは一冊に徹底的に集中する。これはもしかすると、受験勉強だけでなく、あらゆる物事の習得に通じる肝なのでは、とも思うのです。何か新しいことを勉強しよう、始めようというとき、その飛び込むときの一歩は、本であればできるだけ基本的な、考え方であればシンプルな「エッセンス」を選んで、それをとことん根こそぎ理解しつくす。完璧をめざすより、敷居を下げて「とりかかりやすさ」を優先させるのです。
著者も言うように、一冊に絞って繰り返すことは、どの分野にも当て嵌まる攻略法なのではないだろうか。
それは、スポーツの上達法にも通じるはずだ。
もちろん、いろいろな卓球本や卓球雑誌を読みまくることも大事なことだ。
けれど初心者は特に、いろいろ読むけれど「基本はこの本」という師匠的な一冊を決めた方が良いのかもしれない。
田崎さんの本は、まさにシンプルな「エッセンス」である。
卓球の本質と真髄がびっしりと詰まっている本書を徹底的に集中して学ぶことが、上達への近道となるでしょう!
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