日本最大級の卓球ダイニングBAR

 

卓球BARなるものをご存知だろうか。

 

タカシは仕事を終えると新宿にある行きつけの卓球BARへ向かった。
地下一階にあるBARのドアを開け店内へ入ると、小粋な口ひげを生やしたマスターが、キュッキュとグラス、ではなくピン球を磨いている。

「いらっしゃいませ。ご注文は」
「おまかせで」
マスターは、手首のスナップを利かせシャカシャカとリズミカルに振っていたシェーカーを福原愛のサービスのように頭上高く投げ上げ、キャッチする。
グラスに注いで、そっと差し出す。
「当店のオリジナルカクテル、『海辺のチキータ』です」
コースターの代わりにグラスの下に敷かれているのはラバーである。ラバーの種類はカクテルによって違う。

普通のラバーであれば良いがツブ高ラバーだと安定しないため、グラスを倒してしまう客が後を絶たない。

タカシはこの日、会社でミスを犯してしまい、上司にこっぴどく叱られて落ち込んでいた。
浮かない表情のタカシの前に、パステルブルーのカクテルが差し出された。
「当店人気No.1カクテル『さー!』です」
「頼んでないよ」
「サービスです」
「……いいのかい、マスター」
「卓球もバーも、サービスが大事ですから」
タカシは店内に流れるジャズに耳を傾けながら、「さー!」を時間をかけてじっくりと味わう。
不思議と心が軽くなり、明日からまた頑張って働こうという気持ちが湧いてきた。
「ありがとうマスター、また来るよ」
「お待ちしております」
タカシは地上へ続く階段を、軽やかに駆け上がった。
 
というのが卓球BARではない。
 
ほとんどの方が上記のような情景を思い浮かべたことと思うが、卓球BARとは、お酒が飲めて食事ができるBARに卓球台が置いてあって、客が楽しくプレーすることができるお店のことである。
 
私が住んでいる東京には卓球BAR・卓球居酒屋がいくつかあるが、どの店もだいたい卓球台は一台だけで、客同士が適当に交代しながら打つため、自分たちのグループだけで長時間占領するわけにはいかない。
 
しかし先日、福岡の中洲に「UNDER SPiN」という日本最大級の卓球ダイニングBARがあるという情報をキャッチした。
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引用元

 

広い! オサレ! 
値段は1台30分/500円。安い!
 
 
2013年にオープンしたUNDERSPINは、「卓球王国」にも取り上げられたことがあるそうだ。
 
福岡に行く機会があれば立ち寄ってみてはいかがでしょうか。
経験者でなくともワイワイと盛り上がれるはずです。
 
 
そう言えば私は数年前に、高校の卓球部時代の友人と2人で野方(東京)にある卓球ダイニングに行ったことがある。
 
店に入ると、卓球の練習終わりと思しきジャージ姿の中高年の方々(4~5人の男女)がいて、楽しそうに飲んでいた。
私たちはカウンター席でお酒を呑みながら料理をつまみ、ほろ酔いになった頃、卓球台へ向かった。
 
2人で久しぶりの卓球を楽しみ、再び席に戻って呑んでいると、中高年グループの一人のオバちゃんがやって来て、
「お兄ちゃん、ビールをかけてワタシと勝負しない? 負けた方がビール一杯おごるの」
 
オバちゃんはけっこう呑んでいるようでご陽気だった。
見たところ40代後半かひょっとしたら50代かもしれないオバちゃん。
酔っ払いの小柄なオバちゃんに負けるはずがない。
私は受けて立った。
 
賢明なあなたはもうお気づきであろう。
そう、私はコテンパンにやられてしまった。
 
私はオバちゃんにビールを奢り、友人に慰められながら梅酒を呑んだ。
オバちゃんたちが帰った後、店長が教えてくれた。
「あの人、元全日本でベスト8に入った人だから」
 
しどい、しどいよオバちゃん……。
 
「でもね、奢ってもらった相手に次に会った時には必ず奢り返すんだよ、あの人。粋だよね」
 
とてつもない実績を隠してコテンパンにやっつけている時点で粋ではないと思うのだが、凄い人と試合をするという思い出をビール一杯分の値段で買ったと思えば安いと自分に言い聞かせて、私はお酒を呑み続けた。
(その後お店には行っていないのでオバちゃんに会うことは二度となかった)
 
これが私の卓球ダイニングでの思い出であるが、バーや居酒屋は値段も高くて頻繁に行けるわけではないので、「卓球喫茶」なんてのがあれば良いね。
カコンカコンという心地良いリズムの打球音を聞きながらおいしいコーヒーを飲む。
実に優雅ではないか。
 
卓球を絡めたお店はビジネスチャンスなのかもしれない。
女の子と卓球ができる「卓球キャバクラ」とか、美容師全員が元カットマンの「卓球美容室」(ラケット型のハサミで髪の毛をカット)とかね。
 
いやそんなことよりも私は、バッティングセンターのようにマシン相手に一人で卓球ができる卓球場が登場してくれないかと願っている。
 
卓球場はたくさんあるが、相手がいないと打てないし、経験者は初心者の友達とやっても面白くない。身近に自分とやり合える強い人なんてそういるものではない。
そこでマシン相手にプレーできる卓球センターがあれば、一人で会社帰りにふらっと立ち寄って軽く汗を流せる。
 
今や時流は“おひとりさま”
ひとりカラオケ、ひとり旅、ひとり焼肉、
 
次に来るのは「ひとり卓球」で決まり!

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