ツッツキで大流血した思い出


卓球というスポーツは世間の人たちが思っている以上に「激しいスポーツ」であることは間違いない。
だけど「危険度」で言えば、他のスポーツと比べると遥かに低いだろう。

試合中に、例えば足首をひねって捻挫したり、肉離れを起こしたりすることはあっても、骨折などの大怪我をすることはほとんどない。

しかし私は、試合中に大流血したことがある。しかもその原因が「ツッツキ」というのだから自分でも驚きである。

 

それは私が中学3年生の頃に市大会(高知市)に出場した時の話である。

その日の開会式で、「今日はお医者さんと看護師さんに来てもらっている」という話があった。
詳しくは覚えていないが、何かの理由で試験的に来てもらったというような話をしていた記憶がある。

この時私は、中学生の卓球の試合で医者の出番はないだろ、と思ったことをはっきりと覚えている。

試合が始まり、熱戦が各コートで繰り広げられる。

ふと見ると、体育館の舞台上にお医者さんと看護師さんが所在なげに座っている。
「何だか気まずそうだなあ」と思いながら、私は完全に他人事として眺めていた。

そして私の試合がスタートする。
確か2回戦だったと思うが、実力的には相手より私の方がだいぶ上なので、ある程度力をセーブしながら、どちらかというと「調子を整える」的な、あまり激しく動かない戦い方をしていた。

そして、1ゲーム目の中盤あたりだったと思うが、相手の下回転サービスに対し、私は思いっきりツッツキをした。

とその時、腕に激痛が走った。

卓球台の手前の部分(エッジになるとこ)に肘をぶつけたのである。

私はラケットを放り出してとっさに肘を押さえ、痛みに顔を歪ませる。

確認してみると、肘(正確に言うと肘から人差し指1本分のとこ)がざっくりと切れ、流血している。

タオルで押さえてみてもどうにもならない。ドバドバと血が溢れてくる。

ちょっと切れたというレベルではない。軽く肉がエグられている状態である。

「大丈夫?」と相手選手も心配そうに訊いてくる。
このままでは試合が続けられない。
どうしようかと思っていると、相手選手が舞台上を指さし「診てもらったら?」と言う。

それしか方法はないようだ。
私は相手選手と審判に「ちょっと行ってきます」と言って、お医者さんのもとへ向かった。

「台にぶつけちゃったんですけど……」と言って傷口を見せると、「手当てするからそこへ座って」と言われ、私は椅子に座った。

まだ大会は始まったばかりなので、選手も観客もたくさんいる。そんな中で舞台上で医者の手当てを受ける姿というのは非常に目立った。

しかもゼッケンを付けていて、コート側に背中を向けて座っていたので、どこの誰だか丸わかりでとても恥ずかしかった。
私は県内ではそこそこ名の知れた選手だったので、余計に恥ずかしい。

会場の注目を一身に浴びる中(自意識過剰?)消毒をしてもらい、バンソウコウか何かを貼ってもらった。

この時の医者の表情などはまったく覚えていないが、「マジで?! 卓球の試合でこんなことってあるの?」と驚いていたに違いない。

 

手当てが終わり、コートに戻ると、相手選手と審判に待たせたことを詫びて、試合再開となった。
怪我の影響はそれほど大きくはなく、無事に勝つことができたが、相手選手も自分のリズムが崩れてやりづらかったと思う。
確か試合が終わってからもう一度謝ったような記憶がある。

初戦を無事に突破した私であるが、この後の試合のことはまったく覚えていない。
良い成績をおさめたはずであるが、ツッツキ事件の印象が強すぎて、さっぱり記憶にないのである。

 

ドライブを打とうとして指を台にぶつける人はたまにいるけれど、ツッツキでここまでの怪我をしたおっちょこちょいはなかなかいないのではないだろうか。

ツッツキで肉がエグれるほどの怪我をするというありえないことが起こり、その日に限ってたまたまお医者さんがいたというのはあまりにでき過ぎた話のようだけれど、本当の話なんです。

今でも私の肘(の近く)にはその時の傷が残っているが、いまだになぜツッツキであんなことのなったのか不思議で仕方がない。

ちなみに私は、同じく中学3年生の頃、ある高校に練習に行った時に、ボールを拾おうとして机の角に頭を思いっきりぶつけて大流血したこともある。

顔面が血だらけになるくらい流血し、部員の皆さんが駆け寄って来て心配してくれて、死ぬほど恥ずかしい思いをした。

このことは思い出したくもないくらい痛かったのでこれ以上詳しくは書かないが、それ以来私はボールを拾う時は必要以上に慎重になった。

 

ということで、卓球と言えども大怪我に繋がる可能性を秘めていますので、皆さんも気を付けてください。

私ほどのドジはそういないと思いますが……。

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