短歌とは、「5、7、5、7、7」のリズムで詠む、日本の伝統的な文学である。
その短歌と卓球を掛け合わせた「卓球短歌」を詠んでいる人がいる。
それが今回紹介する卓球本、『卓球歌人、魂の31音』(ひょっとこ出版)の著者・石川卓木(いしかわたくぼく)さんである
(「啄」を「卓」に変えるセンス、嫌いではない)。
この方、趣味で短歌をやっていて、ある日、学生時代に打ち込んでいた卓球を大人になって再開。
短歌と卓球を楽しむ日々を送っていたところ、「このふたつを掛け合わせたら面白いかも」とひらめいたという。
そしてこの卓球短歌を「卓歌(たっか)」と命名。
自らを卓球歌人と称して、仕事(エンジニア)のかたわら、卓歌を詠みふける日々を送っているのだという。
本書には、そんな卓木さんがこれまでに詠んだ卓歌の中から選りすぐった58首が収められている。
全ての歌に解説が付いており、その歌の意味もすぐ理解できるようになっている点もグッド。
そんなわけで、58首の中から、私が気になった歌をいくつかご紹介しよう。
打てども打てども 我が裏面うまくならざり ぢっとラケットを見る
《歌意》
どれほど練習しても、一向に私の裏面打法はうまくならない。
なぜなんだろうと、ぢっとラケットを見る。
たわむれに 父と試合し そのあまり軽きに泣きて 三球目打てず
《歌意》
父親に小さい頃から厳しく卓球を指導されてきた息子。中・高・大と親元を離れて強豪校で腕を磨き、ある程度の実績も残せた。
大人になり、ふざけ半分で父親と試合をしてみたら、そのあまりのボールの軽さに愕然とする。
父が年老いたことを実感し、涙がにじんで三球目攻撃ができなかった。
短歌には、文語体で書かれたものと、口語体で書かれたもの(現代短歌)があるらしく、本書にはそのどちらも収められいるが、そのほとんどは口語体で書かれた歌である。
現代人の我々には口語短歌の方がわかりやすく、素直に楽しめる。
以下に、口語卓歌を紹介する。
凡ミス5回連続 アイシテルのサインと言い訳して殴られる
《歌意》
ミックスダブルスの大会にカップルで出場し、彼の5回連続凡ミスというありえないヘボプレーなんかもあり、あっさりと敗退してしまう。
試合後、ぶちギレした彼女が問い詰めると「あれは、ア・イ・シ・テ・ルのサインなんだよ」と言い訳して、思い切りぶん殴られる。
※ドリカムの『未来予想図』をイジった1首であることは言うまでもない。
「また凡ミスしちゃって」
とつぶやく卓球未経験の母にイラつく
《歌意》
テレビで世界卓球を観ている僕。凡ミスに見えるけれど実際は強烈な回転がかかっていて返球が難しいのだが、となりで一緒に観ている卓球未経験者の母親はそんな事情もわからず、上から目線でつぶやいているからイラっとくる。
「それカッコいいよね」とあのコに言われて ペンホルダーの父に感謝
《歌意》
自分がペンホルダーなのは父親がペンだったから。シェークの方が良かったなあ・・なんて思うことも多いが、気になるあのコ(卓球部のマネージャー)が僕のラケットを指差して「カッコいいよね」と言ってくれたとき、喜びと同時にわいてきた父への感謝。
「モテそうだから卓球部に入ったよ」
そんな息子とTリーグを観る
《歌意》
自分が学生の頃は「ダサいスポーツ」の代名詞だった卓球。「モテそうだから」という理由で卓球部に入部した息子を見て、時代が変わったことを実感する父。
そんな息子を誘ってTリーグを観に行く。
こんな感じで、卓球をテーマにした短歌がたっぷり味わえる歌集となっている。
卓木さんは現在40代とのことだが、ある程度お金が貯まったら仕事をやめて全国を卓球行脚しながら思うままに卓歌を詠みまくる、という生活を送るのが夢なのだという。
本書のプロフィールには、どこに在住しているかは書かれていなかったけれど、どこかの試合会場や卓球場の片隅で、なにやら思案深げな顔をしている人がいたら、その人がひょっとすると卓木さんなのかもしれない。
てなことを考えると、ちょっとワクワクする。
第二弾の卓歌集の発売が、いまから待ち遠しい。
点数:95点
酔狂な人がいるんですねぇ。
おもしろそうなんでさっそくアマゾンでポチっちゃいました。
上には上の変な人がいるもんですねえ。ほんと驚いちゃいます。
さっそくの購入とは、行動がお早い!
卓歌の世界観、ハマると抜けられないかもしれませんよ。
卓木先生、実は高校時代に教師と生徒の関係でお世話になってたんですよね。そんな先生に当時思っていたことを詠みます。
ツッツキを練習したいと言われてもあなたの出してるそれは横上
横上を上書きするのも良い練習 だけど先生 下を出してよ
Kさん
なななんと!それはすごい!
卓木さんは教師をやられてたんですね(やはり国語かな)。
どんな人だったのか詳しく聞きたいですよ。
Kさんの2首、マジで良いですね。
定型を守っててリズムもいいし、クスリと笑えるし、ほんとお見事。
私も詠んでみたくなってきたけど、センスのなさが露呈したら恥ずかしいなあ・・(>_<)
「モテそうだから卓球部に入ったよ」そんな息子とTリーグを観る。…感慨深い歌ですね。
女性歌人が詠んだものでこんな句を見つけました。
「この曲がりがいいね」と君が言ったから7月6日はチキータ記念日。
恋人に誉められると嬉しいですよね♪
卓木先生の著書も是非読んでみたいと思います。
てぐすさん
さすがお目が高いっ。
私もその歌、気に入ってるんですよ。
なんだかグッとくる歌ですよねえ。
なんと女性卓球歌人もいるんですか!?
さっそく調べてみると、俵万智先生の弟子でフォア万智という女流歌人のようですね 笑
この人も要注目ですね。
ぜひ卓木先生の本、手に取ってみてください。書店ではスポーツコーナーじゃなく文学コーナーにありますので。
図書館の話題の書コーナーにあったので借りてきて読みました。
SNSでも盛り上がってますね。
確か今度オール3DCGアニメ化するんですよね?
えーと、確か有名な声優が参加していたような・・すみません、忘れました笑
オープニングは卓木先生自ら何首か選んで歌うと某アニメサイトで紹介されてました。
短歌のアニメ化は初の試みだそうで、今から楽しみにしています。
第1話
「友がみな われより強く見ゆる日よ てなじい剥がして アンチ貼りなむ」
いやー、絶対面白そうですよね。
影丸係長さん
ええっ!!
3DCGアニメ化するんですか!?
それは驚き。初耳でした。
てことでさっそく調べたら、MXテレビで放送されるみたいですね。
図書館やSNSでも話題になり、アニメ化も実現だなんて、卓木先生、勢いが凄すぎますね。
卓球短歌アニメなんて類を見ないので話題になること間違いなしですよ。
しかも第1話のタイトルになってる卓歌が秀逸すぎます。
見たい、これは絶対に見たい!