ロビング打ちの品格 ~打ち続けるべきか、途中で手前に落とすべきか~

 

トップ選手の試合を観ていていつも不思議に思うことがあるんだけれど、それは「なぜロビングをスマッシュし続けるのか?」ということ。

私はどうしても、何回か打ったら一度手前に落とした方が効果的なのではないかと思えてならないのである。
もちろん手前に落とす(ストップ)こともあるが、基本的にはスマッシュを打ち続ける傾向にある。

昨年、大横綱の白鵬が、立ち合いの時に変化をしたり、相手の顔を張ったりかち上げたりすることが「横綱の相撲じゃない」と批判されて「横綱の品格」というものを問われていた。
ルール上は禁止されているわけではないので他の力士がやるとオッケーなんだけど、横綱がやると批判されてしまうという不思議。

つまり「横綱は小細工抜きで真っ向勝負」ってことなんだろうけど、卓球のトップ選手のロビング打ちを見ていると同じような空気を感じてしまう。

「ロビングvsロビング打ち」の攻防というのは卓球人でなくとも楽しめる卓球観戦の醍醐味のひとつであるので、スマッシュし続けて盛り上がっているのにストップでラリーが途切れると、観ている側に「なんだよぉ、打たないのかよぉ」というガッカリ感が漂ってしまうのも事実である。
相撲よろしくストップなどという変化を入れようものなら「ロビング打ちの品格に欠けるやつ」となってしまう(考え過ぎか?)。

まあ、トップ選手が観客を楽しませることを考えてスマッシュを打ち続けているかどうかは別として、

A:かたくなに打ち続ける「連続スマッシュ派」
B:途中で手前に落とす「ちょっと打ったらストップ派」

という2種類にざっくり分けるとしたら、私は断然Bである。

しかし私も現役時代はAであった。
「ロビングは最大のチャンスボールだからスマッシュすべし」という刷り込みがなされておったので、ストップするのはみすみすチャンスボールをふいにしてしまう行為だと思っていた。
ストップしようものなら指導者に怒られることさえあった。

けれども今は違う。
スマッシュを数回打ったらストップするようにしている。
ロビングというのは、基本的にはロビングを上げている選手よりも打っている選手の方が有利なわけなんだけれど、ロビングが得意な選手相手に打ち続けるのはかなりリスクが高いんじゃないかと思うのである。

エンドラインを狙ってスマッシュしろというロビング打ちのコツもあるが、それも相当な高度技術なわけで、簡単にできるものではない。

「下手にストップなんかしたら体勢が立て直って反撃されてしまうやんけ」というのもわかるんだけれど、「ストップからの形勢逆転のリスク」より「打ち続けるリスク」の方が高いのではないかと私は思っちゃう。

ゲーム練習の時に試しているうちにそう思うようになったわけなんだけれど、去年試合に出た際に格上の選手とやった時にも、ロビング打ちからのストップは抜群の効果を発揮した。

もちろん中途半端なストップではダメなのであって、台上でツーバウンドするくらい短く止めなければいかん。
だけど多少長めのストップになってしまったとしても、大抵は「返球するのがやっと」であるから形勢逆転のリスクは低い。
むしろちょうどいい高さのロビングが返ってくるので次球が打ちやすくなることもある。

まあ、相手のロビングの上手さや自分のロビング打ちの上手さによって状況は違ってくるだろうし、カットマン相手だとストップよりスマッシュし続けた方がいいような気がするというのはあるが、とにかく私はロビングに対して「打ち続けるより途中でストップする」方が得点率は高いと思っているので、これからもこの戦術は貫いていこうと思っているわけである。

 

それにしても、なんでトップ選手はあれほどかたくなにスマッシュを打ち続けるのだろうか。
いつも「そこでストップ!」と念じるんだけれど、通じたためしがない。

もちろん観ている側としてはそっちの方が楽しいんだけれど、戦術としては手前に落とした方がいいのではないかという思いが拭えない。
やはり「小細工なしのスマッシュ勝負」というチャンピオンの品格がそうさせるのであろうか。

私はペン表のくせに「スマッシュし続けない」という戦法を選んだ。
ペン表の品格は捨てた。
だけどこれが効くんだから、しょうがない。
しょうがないのである。

 

26 件のコメント

  • 僕はA派ですね。ビタ止めストップに自信が無いというのもありますが、前に落としたボールに対して台の死角で横回転などの変化を付けられるのが嫌なのです。見えないところで変化を付けられるとやはり慎重にならざるを得ませんし、そこで攻めきれなければ、こちらの圧倒的優位な状況を手放すことになります。その点、打ち込み続ければ相手の打球点は基本的に後陣なので変化の情報が得られないということはありませんし、対応する時間的余裕もあります。

    • Kさん
      そうなんですよ。「死角で変化をつけられる」これは私も最も恐れていることなのでよくわかります。
      これをやられると次球が難しくなるのできっちりビタ止めできる技術がいりますね。 
      私はKさんとは逆で打ち込み続ける自信がないのでストップに頼るという選択になります。
      あとスマッシュに威力がないので後ろから打ち返されてしまうのではないかという恐怖もあるので早めにストップしてしまいます・・・。

  • 私もロビング打ちの時は虎視眈々とストップのチャンスを狙っています。
    ジャンピングスマッシュで豪快に決めるのも悪くないですが、突然ピタッとストップで止めて2バウンド3バウンドさせることができればそれはそれで気持ち良いものです。
    と口で言うのは簡単ですがロビングに対するストップはかなりの高等テクニック。
    バウンド直後を捉えるのがストップのコツですが、高いロビングはバウンド位置の予測が難しいです。
    衝撃を吸収するようなタッチセンスや横回転を加えるテクニックも求められます。
    下手くその私は失敗してばかりです。
    ワルドナー選手がロビングに対するストップを決めるのを見てよくあんなにピタッと止められるなぁと感心します。

    • ベーゴマさん
      お、ベーゴマさんもストップ派ですか。
      ストップで得点した時の快感ってありますよね!
      スマッシュでぶち抜くのと同じくらい気持ちいいものです。
      おっしゃるように高いバウンドのロビングはやっかいですし、深く入ってきたロビング(エンドライン付近)もストップするにはかなりの技術力がいりますよね。
      ワルドナーはスマッシュと見せかけてストップする技が天才的ですねぇ。
      中国選手の打ち続ける豪腕ロビング打ちも素晴らしいですが、ワルドナー的な芸術技も見たいです。
      丹羽選手あたりに期待したいところですね。

  • よく僕もストップしたくなってストップしますね…
    トップの選手になるとロビングにも深さや変化が出ますし特に深いロビングは厳しいストップが難しいのではないでしょうか。単純にスマッシュミスが少ないというのもありますが笑

    • てんてるさん
      次のスマッシュは打ちミスしそうって思っちゃって、ついストップしちゃうんですよねぇ 笑
      やはり上級者になればなるほど打ち続ける選手が多くなるのでしょうかね。まったくスマッシュミスしない選手とかいますもんね。
      女子選手はストップする率が男子より高い気がしますが(身長が低いからロビングが打ちにくい?)、男女の違いによるロビング打ちの違いというのも注目したい視点です。

  • 私もBなんですよね(笑)

    ただ「ロビングをストップ」というのはそもそもの難しさと、Kさんがおっしゃるような反撃・難しい変化をつけられる可能性もあるので、必ず何本か打ったら止めるわけではないですが。
    特にボールタッチのセンスがある相手に対しては下手に前に止めると意味不明な変化をつけてくる場合が多いので、そういう相手との対戦の時はストップがしやすい球が飛んでこない限りは打ち続けます。

    トップ選手の試合では、ロビングをする側も強いですから甘いストップは逆に反撃されてしまう。
    だからストップするとしたら、「回転のあまりかかっていない浅く入ってきたロビング」を待つ必要があると思います。
    そういう甘いロビングは何本の来るものじゃないですし、頭を「ロビングはとにかく全部打つ」モードにしておいた方が結果的にミスは減るから、トップ選手でロビングを止めるシーンは多くないのでは。
    ロビングの名手と言われる水谷選手やメイス選手のロビングを見ますと、回転や深さが凄いという印象がありますし。

    • しろーとさん
      なるほどぉ。至極納得です。
      やはり確実にストップできる浅いボールが来ない限りは「全部打つ」という意識が大事なのかもしれませんね。
      私の場合「ストップしてやる」の意識が先行しちゃってる感じなんで、これじゃさすがにダメかもしれませんね 笑
      ボールタッチのセンスのある相手、あとは前後のフットワークが驚異的な相手にも安易なストップは禁物ですね。

      言われて確かにと思いましたが、水谷選手などのロビングのプロは、実際に受けてみないとわからない「えげつない回転と深さ」があるんでしょうね。
      だからトップ選手は簡単にストップはしないのか(納得)。
      トップ選手のロビングがいかにストップしにくいか、一度受けてみたいものですねぇ。

      • 実際水谷選手は「厳しい強打を防ぐためにロビングを上げる際は台に深く返すことを意識している」とどこかで言っていたはずです。
        あとナックルロビングみたいなのも球が揺れるので取りづらいですね。この1:20~のラリーで丹羽がやって、あの王皓が空振りしてます。
        https://www.youtube.com/watch?v=-bArEx2Rdoo#t=1m20s

        あとつい最近「全盛期のワルドナーと打ったことがある(試合ではない)」という卓球上級者の方と話したのですが「とにかくロビングが上手くて猛烈に伸びたり左右に曲がったりした。しかも未だにどう回転をかけているのか分からないのが、ワルドナーの方に戻っていく下回転ロビングもしてきて打てなかった。台上の小さなプレーでネット際に戻すならまだ分かるがロビングでも出来るのかと驚いた。」と言っていましたね。

        • しろーとさん
          これほどいろいろとロビングの技術があるとは、まさに驚きです。
          ロビングで空振りさせるなんて魔術の領域ですね。

          そしてワルドナーのロビング技術の凄さたるや。
          下回転のロビングというのは非常に興味深い!
          相手コートに戻っていくボールを強打するのは至難の技ですよね。できないだろうけど真似してみたいです。
          さらに伸ばしたり左右に曲げたり・・・。
          ロビング1つでこれだけの使い分けができるワルドナー。引退して何年経とうが勉強になりますねぇ。ほんと凄い。

  • 自分もBですね。よく、練習してた時でもロビングで打ち抜けずにスマッシュしても点が取れない事があったので、必然的にストップするようになりました。その結果、その技術だけは部内で一番上手くなりました笑(だいたいみんな打ち抜けちゃうから必要ないというのがある)

    自分としてはロビングされたボールが浅いか深いか、相手がどこにいるか両方見ながら判断したり、その前のスマッシュでだいたい浅く落ちる傾向があるとか分かってたのは狙ってやってたりしてました。

    • リンさん
      部内イチのストップ上手! 素晴らしいですね 笑
      ストップはやっているうちにコツが掴めてきてヤミツキになりますからね。

      打つ祭に相手のポジションを見る、これも重要ですね。相手のポジションとボールが落ちる位置の両方を確認しながら判断する。
      わかっちゃいるけどどちらかがおろそかになっちゃうんですけど・・・笑

  • 相手によって使い分けることも必要かもしれませんね。水谷選手は著書『水谷隼の勝利の法則』で、“普段とは違う戦い方(α戦術)と本来の戦い方(β戦術)を用意し、格下相手にはα戦術から入りそれで第1ゲームを取れればOK、ダメなら普段のβ戦術に戻す(普段のβが上手く行かなかったときにパニックになるため)。逆に格上相手にはβ→ダメならαと組み立てる(最初から奇襲的にαを使うとジリ貧)。今までのやり方で勝てない相手や「このままの展開だと勝てない」と思った時にはリスクを負う戦い方を実行する。”といった内容のことを述べています。卓球と言うのは相手の存在を無視できないスポーツなので、自分のやり方に固執し過ぎるのも不味いのかもしれません。

    ※引用部分のα、βは著書内ではA、Bとなっていますが、このブログ記事内のA、Bと紛らわしいため置き換えています。

    • Kさん
      さすが水谷選手。戦術の組み立て方が圧倒的ですね!
      これを1つの技術に対する対策として応用できそうです。
      つまり、ロビングに対してストップを多用するだけでなく、相手によってスマッシュし続ける戦法に切り替えるということ。
      水谷選手のように臨機応変に対応できるようになるためには、あらゆる個性の選手と対戦して経験値を積むことが大事なのでしょう。
      私のように練習時間が少ない選手は、せめて動画を観まくって視覚から経験値を上げるしかないですが 笑

  • 練習の時ロビングに対してカットで返すと、(個人的に)強打より安定して入った
    相手は返しづらいだろうから、普通に強いと思う
    だが、試合でロビングを打って来る人はほとんどいない模様

    • 中ペンで表ソフトを使ってる珍しいなにかさん
      ロビングに対してカットで返すのは効きそうですね。
      かなりセンスのいりそうな技術ですが 笑
      確かに一般レベルの試合ではロビング対スマッシュの激しい攻防になることはあまりないですね。
      でもいざそうなった時のために備えておきたいものです。

      • なにかさん
        とんでもないです。
        コメントはほんとにありがたいので、またいつでも気軽にお願いします!

  • ご無沙汰していました。
    自分はロビング打ちの時はスマッシュの合間にクロスを短く狙うサイドカットのような打ち方を混ぜていました。
    こうすると普通に打つよりも短く止まりますし、いい感じに横に曲がって死角ができにくく相手の変化が分かりやすくなったり、打てるコースが限定されるので、相手が前に出て打ってきた時でも落ち着いて空いたコースにブロックを通せば得点しやすいので一時期はまっていました。

    • 卓球主義さん
      お久しぶりですー。
      サイドカットのストップ。これはすばらしいですねぇ。
      うまく決まれば普通のストップより絶対取りにくいでしょうね(ワルドナーとかがやりそう)。
      おそらく実際にやってみるとかなり難しい技術だと思いますが、さっそく次の練習で試してみたいと思います(バックとフォアの両方で)。

    • なにかさん
      とんでもないです。
      コメントはほんとにありがたいので、またいつでも気軽にお願いします!

  • なにかさん
    とんでもないです。
    コメントはほんとにありがたいので、またいつでも気軽にお願いします!

  • トップ選手でも当たる瞬間にラケットを引いて
    ボールの勢いを殺せる選手は、ストップよく使いますよ!

    マリン選手、ワルドナー 選手、シュラガー選手
    マリン選手は、世界選手権上海大会で中国選手を次々撃破したメイス選手のロビング戦術をこれで打ち破りました。

    僕もやったことありますが難しい…なかなか殺せません。

    • 卓球観戦者さん
      マリンやワルドナーは天才的にうまいですよね!
      我々一般選手がやる場合、弾む用具を使っていると難しいかもしれませんね。
      私の用具はあまり弾まないのでやりやすいです。
      あと、個人的にはフォアでのストップよりバックでストップする方がやりやすいですね。
      スマッシュすると見せかけて、とっさにバックでストップするのが私の得意パターンです。

  • トップ選手がひたすらロビングをロビング打ちしているの僕も不思議に感じます
    ロビングとはそもそも台から離れた打法の一つです
    当然ロビングする側は離れます
    逆に相手は距離が近いです
    やろうと思えばストップも出来る筈です
    にも関わらず永遠と打っているのは体力消耗しかなりません
    卓球界はロビングをロビング打ちで打ち返しなさいと言う暗黙の了解が有るのかそれともストップを混ぜるのはナンセンスなのでしょうか
    僕から言わして見れば非力な選手はロビングに対してどんどん使うべきな筈ですが
    豪腕選手は打ち抜いた方が早いとは思いますが

    • つばきさん
      そうですよね。ほんとに不思議でしょうがないんですよ。
      やっぱり暗黙のルールというか「空気を読む」というのはあるんじゃないかと思ってしまいます。

      よほど打ち抜ける自信があるパワーファイターならわかりますが、丹羽選手とか小柄な選手まで打ち抜こうとしますからね。
      トップ選手だと安易にストップしたら逆襲されかねないのかもしれませんが・・。

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