先日、情熱大陸にコピーライターの佐々木圭一さんが出ていた。
115万部のベストセラーを記録した「伝え方が9割」の著者である。
この本は以前から読もう読もうと思っていたのにすっかり忘れておって、情熱大陸を観て思い出し、さっそくお取り寄せ。
そしてガン見。
内容を簡単には言えば「人の心にバズッと刺さるコトバの作り方を教えます」って本。
普通の人より伝え方が下手だったという佐々木さんによる「膨大な時間とトライ&エラーで導き出した方法論を整理し、誰でも魅力的なコトバを最短で身につける方法」が詳しく説明されているわけなんだけれど、コトバの伝え方というのは卓球においても非常に重要であるので、大いに参考になる部分が多々あった。
例えば第2章の『「ノー」を「イエス」に変える技術』の中に「認められたい欲」を巧みにくすぐる方法というのがある。
佐々木さんいわく『人間のDNAには「認められたい欲」が組み込まれていて、それを満たすためにちょっとくらい面倒なことでもやろうと思うのです』だそうで、
例えば残業を頼むとき何と言えば、快く引き受けてくれるか?
「残業お願いできる?」
これは頼む側のメリットしかないからダメ。
「きみの企画書が刺さるんだよ。お願いできない?」
こちらは認めているコトバから始まっていることで、面倒くさいこともやってみようとする気持ちが生まれるのでマル。
これを卓球に応用するなら、指導者が選手に練習の意味を説くときに使えるんではなかろうか。
「フットワーク練習をやりなさい」
ではなく、
「キミはフォアドライブがうまい。それを活かすにはフットワークが必要なんだよ。だからフットワーク練習をやろう」
認めているコトバから始まっているから、面倒くさい練習もやってみようとする気持ちが生まれる。
ある指導者から「最近の子供はしんどい練習をやりたがらない」と聞いたが、コトバを工夫するだけでやる気を起こさせることは可能なのかもしれない。
あと、第3章の『「強いコトバ」をつくる技術』の中で「クライマックス法」というのが紹介されておって、こちらは「寝ている人も目をさます、強烈なメッセージ技術」ってやつ。
人の集中力は20分といわれており、授業や会議の後半はどうしても集中力がとぎれてしまう。
大学で講座を持っている佐々木さんは、講義の後半になると聞き手の疲労度を見て、このコトバを使うという。
「これだけは覚えてほしいのですが、~」
もちろんそこが本当に覚えてもらいたいポイントでもあるが、聞き手の集中スイッチを入れ直すことが主な目的で、「これから重要な話が始まるんだ、聞いておかなくては!」と思わせて集中力をこちらに向かせる技術なわけである。
他にも、クライマックスをつくるのには以下のようなコトバがある。
「ここだけの話ですが、~」
「他では話さないのですが、~」
「誰にも言わないでくださいね、~」
「これだけは、忘れないでください、~」
「一言だけつけくわえますと、~」
「ワンポイント・アドバイスですが、~」
「3つのコツがあります。1つ目が~」
いきなり「伝えたい話」をせずに、クライマックスワードから始めるのがコツだそうである。
「ここだけの話ですが、私はカレーが好きです」
もともとの「私はカレーが好きです」だけだと、どうでもいいような独り言なのに、なぜか貴重な情報のように聞こえる不思議。
これも卓球の指導に応用できるのではなかろうか。
「これだけは忘れないでほしいんだけど、バックハンドドライブのコツは~だよ」
「カウンタースマッシュには3つのコツがあります。1つ目が~」
練習の後半で選手が疲れてきたなと思ったら、クライマックス法を使って大事なポイントを伝えるといいかもしれない。
あるいは練習終わりのミーティングの時や、卓球の講習会を開いている人なども使えるのではないだろうか。
「ここだけの話だけど、水谷隼選手のサービスがすごく参考になるよ」
こんなめちゃくちゃ当たり前のことでも、「いいこと聞いた!」と思ってくれるかもしれない。
あと面白いと思ったのは、迷惑行為をする相手に伝えるコトバ。
佐々木さんは、「ノー」を「イエス」に変える技術の答えは、相手の中にあるという。
「お願い」は、あなたのコトバではなく、あなたと相手の共作なのだと。
その3ステップがコチラ
ステップ1 自分の頭の中をそのままコトバにしない
ステップ2 相手の頭の中を想像する
ステップ3 相手のメリットと一致するお願いをつくる
例えば、「放置自転車」をやめさせたい場合にどのようなコトバを看板に書けばいいのか?
頭で思っていることをそのまま口にすると「自転車放置禁止」になるが、それでは見向きもされない。
次に相手の頭の中を想像してみる。「自転車を置かないで」とお願いしても、もともと放置自転車をしているのだから、「禁止されたって置いちゃうよ」というのが自転車の主の頭の中である。
そこで、相手のメリットと一致するお願いをつくるわけである。
相手にとってイヤなことは「自転車がなくなる」こと。そして自分の要求は「自転車を置かないでほしい」ということ。
この両方を一致させたコトバがコチラになる。
ここは自転車捨て場です
実にナイスなコトバのマジックである。
相手の頭の中からコトバをつくれば、相手を動かすことができるというわけである。
で、これはどのように卓球に応用できるのか……。
ちょっと難しいかもね。
使うとしたらあれかな? 「卓球台を勝手に使う他の部活の生徒」に対しての張り紙とか?
「卓球台を勝手に使わないで」
これではダメなわけである。
ではこれならどうだろう。
雑菌が繁殖しています。使用後は必ず体を消毒しましょう!
これなら使う気が失せるよね。
なんだか違う気もするが、ま、いっか。
とにかく本書は、エネルギーのあるコトバを生み出す力がほしい人には必携である。
いま調べたら、とっくに「伝え方が9割」のシリーズ第2弾が出ていた。
そっちも早よ読まんといかんね、なんて思っている次第。
友人に卓球を教える機会が多いので助かります!
最近読書にハマっているので買いたいと思います
シェーク裏裏野郎さん
友人へのアドバイスにもきっと参考になると思いますよ!
コトバを磨くことはどんな立場、どんな職業の人にも必須だと思うので、読んでおいて損はないと思います。
私も本好きなので、また参考になりそうな本を紹介できればと思います。
裏裏野郎さんの読んだ本のタイトルもぜひ教えてくださいねー。
語彙力というか、話し方って大切ですよね。
自分はそれを伸ばそうと思い、本をたくさん読むようにしてますが、
好む本の性質上、皮肉のレパートリーだけが増えて困ります笑
しんこうしんこうさん
語彙力はめちゃくちゃ大事ですよね。
そこを鍛えるのは読書が最適だと思います。
たまに辞書を読むのもいいですが。
皮肉も「ウィットに富んだ皮肉」であれば素晴らしいスキルだと思います 笑
こういう本にも卓球に活かせるヒントはあるんですねー。
伝え方ひとつでその選手がグンと伸びるかもしれないと思うと、コトバはとても重要ですね。
ラケットマンさん
どんな本を読んでも「どこか卓球に活かせないか」と考える癖がついてしまってます 笑
言葉力があるというのは優秀な指導者に必須の条件ではないかと思います。
相手の年齢や性別、レベルによっても使う言葉は変わってくるので、相当難しい技術ですよねw
相手によって有効な伝え方が少しずつ異なるというのがまたややこしい。Howを重視する人もいればWhyを重視する人もいる。感覚的にざっくり聞きたい人もいれば理詰めでしっかり聞きたい人もいる。使い分けが大変です。
…その分伝わった時の快感も素晴らしいんですけどね。
Kさん
マニュアル通りにはいかないところが人間を相手にする難しさですよね。
だから小学生を教えるのが抜群に上手い人、大人を教えるのがピカ一な人など、各世代のプロフェッショナルがいるんでしょうね。
大勢の生徒を相手にする学校の先生はほんと大変だろうなと改めて思います。
苦労がある分、自分の言いたいことが伝わって、相手が伸びた時の快感は得難いものがあり、指導者冥利に尽きるというやつでしょうね。
最近読んだのは内藤誼人さんの「断る」心理テクニックというものです。とても参考になりましたよ。おすすめです
シェーク裏裏野郎さん
心理学系の本は私も好きです。この本も面白そうですね。
イメージを悪くしないで断るって難しいですからねぇ。
さっそく読んでみます ^^
narukoさん
はじめまして、おはようございます。
この本のことは知りませんでした。
早速今日外出した際に本屋へ寄って探してみます。
今回のnarukoさんの記事を読んで、
デパートのトイレを綺麗に使ってもうらうには、
「トイレを汚さないでください」「トイレを綺麗に使ってください」より
「トイレを綺麗に使っていただいて、ありがとうございます」と
貼り紙をしたほうが効果的だ。
という話を思い出しました。
TNさん
初コメントありがとうございます!
オススメですのでぜひ読んでみてください。
トイレの貼り紙の話ですが、するどいてすねぇ。実はこの本の中でもチラッと紹介されております。
あれはもやは「神フレーズ」ですね ^^