卓球王国を読む 2017年7月号

 

今月号は、半分は自宅で、半分は旅行先に持って行って読み倒しました。

 

卓球王国 2017年 07 月号 [雑誌]

 

今月号は世界卓球直前ということで、『来るぞ、世界卓球! 世界選手権個人戦 デュッセルドルフ大会・完全予想』と題した世界卓球情報が満載。

これを読むと、いよいよ世界卓球が始まるというワクワク感を最高潮に高め、予習ばっちりで本番を迎えられるだろう。

 

15歳のスーパーテク!

今月号で注目したい企画はコチラ。

徹底解剖! 強者のスーパーテクVOL.2
宇田幸矢のライジングバックドライブ

今回は15歳で東京選手権男子シングルス優勝を果たした宇田幸矢選手にスポットを当てている。
まずは宇田選手のインタビューがあり、次に宇田選手の得意とする「ライジングバックドライブ」について、本人と父親(コーチ)が解説している。

この技は、バウンドした上昇期(頂点前)をとらえ、一気に振り抜くという技であるが、その秘訣は「ひじと前腕の回転運動」だという。

前腕のねじれを使った回転運動で早い打球点をとらえる
ぼくが下回転(ツッツキ)をバックドライブ(以下・BD)する時に意識していることは、“回転運動”(ねじれ)です。
まず、バックスイングでラケットのフォア面が上を向くほど前腕をねじります(写真②)。このねじりでパワーを溜めて、ねじった前腕を戻しながらスイングします。この時に前腕を回転させるイメージで打っています。打球点は頂点より少し前。BDでは手首を使うとインパクトがずれやすくなるため、手首はほとんど使いません。
「幸矢もそうでしたが、BDを身につけるためには、下回転に対してクロスに打つことから始めるのがいいと思います。下回転を打つにはドライブをかけなければいけませんが、前腕のねじれがないと強い回転がかかりません。幸矢のBDのスイングを見ると腕の付け根を支点にスイングしているのがわかりますが、肩の回転運動もポイントです」(父・宇田直充コーチ)

 

※写真2はコチラ↓

バックスイングで前腕をねじることでパワーを蓄積しているわけであるが、確かにフォア面が上を向いている。
すごいねじり方ですな。

そして、「ねじった前腕を戻しながらスイング」↓

フィニッシュは「前腕を回転させながら腕の付け根を支点に下から上に振り抜く」↓

宇田選手ほどの前陣両ハンドプレーは難しくても、この打ち方のポイントをマスターするだけでも、レベルアップへの大きなヒントになるだろう。

この他にも「足のスタンス」「コースの打ち分け方」「上回転に対するライジングバックドライブ」「効果的にBDを磨くための多球練習」などが紹介されており、宇田選手の必殺技の秘密が丸裸となっている。

ちなみに「選手に聞いた 用具のこだわり」のコーナーにも宇田選手が登場する。
最先端技術を支える用具も同時に参考にすれば、宇田選手により近づけるかもしれない。

 

卓球と結婚した男

個人的に最もグッときた企画がコチラ。

吉田海偉 卓球と結婚した男

35歳にして全日本選手権でベスト4入りを果たし、日本トップ選手最後のペンドラとして暴れまくっている鉄人・吉田海偉選手へのインタビュー記事である。

山あり谷ありの卓球人生を振り返りながら、卓球への想いを語っているのだが、吉田選手の口をついて出る卓球愛の圧倒的な熱量に、私は感動すら覚えてしまった。

高校1年の時に中国からやって来た少年が04年に日本に帰化し、全日本選手権で初出場・初優勝を果たす。
その後、一旦はコーチ業に従事するが、32歳で現役復帰。

吉田選手を卓球に駆り立てるもの、それは「卓球が好き」という少年のように純粋な気持ちである。

自分を自慢できるのが卓球。ぼくには卓球があるからカッコイイと言われる。だから死ぬまで卓球をやりたい。楽しいし、健康にもいいし、いろんな人に出会うこともできるからね。
野球のイチローもサッカーのカズも現役でしょ。あんな感じになりたいよね。モチベーション? まずぼくは卓球が好き。卓球をやらないと1日がつまらない。でもやりすぎると嫌いになる。でも1日休むとやりたくなる。やらないと気持ちが悪いんですよ。

 

もちろんただ楽しいという理由だけで現役を続けているわけではない。
生活のために、プロとして勝たなければいけないのである。
吉田選手のプロとしての覚悟もまた、尋常なものではない。

プロというのは、新人が入ってきてもこなくても関係ない。自分が頑張らなければ、良い生活ができない。お金も入ってこない。生活のためにはなるべく長く選手をやりたい。その後はないんですよ。
ぼくが30歳を過ぎても頑張るのは、卓球しかないからですよ。安定しないし、卓球しかできないし、その後がないから死ぬほどやるしかない。実業団チームの選手たちには後があるわけ。選手をやめても会社に残れるから甘えがあるでしょ。28歳になって海外リーグに行ってみればいい。みんな30歳過ぎても、彼らはそれが生活だから頑張るでしょ。お金少なくても彼らは頑張る。来シーズンもまた契約をしてもらいたいから頑張る。それを見たら、「自分も頑張らなきゃ」と思うよね。

2014年からポーランドリーグでプレーを続けている吉田選手であるが、今シーズンは日本では東京アートのメンバーとして日本リーグにも参戦する。
吉田選手が1人加わるだけで、日本リーグの注目度はグッと上がることだろう。

 

そして驚くことに、吉田選手の卓球人生は、どうやらこれからが本番のようでなのである。

今回の全日本のベスト4は最低の目標だった。吉田海偉はこれからです。ぼくが強いのはこれからです。今回のベスト4は「吉田海偉はまだ引退していない、生きている」ことの証明ですよ。これからが本番。日本リーグも見ていてください。チームが優勝すればぼくが東京アートに入った意味がある。
ぼくは卓球しかできない。40歳までは今のような卓球スタイルでやりたい。それができたら後悔しない。なんでみんな引退って発表するんだろうね。一度引退って言ったら復活できないでしょ。だからぼくは引退なんて言わない。

なんという心を震わせてくれる言葉だろうか。
この人ならば、40歳までにもう一度、全日本で劇的な優勝を果たすなんてことをやってのけるかもしれない。

まだまだヤンチャなペンドラの勇姿が見られるかと思うと、嬉しくてしかたがない。

 

名古屋の名門クラブの秘密

もうひとつ取り上げたいのがコチラの企画

特別ルポ 卓伸クラブ

愛知県名古屋市にある「卓伸クラブ」は、40年以上の歴史を誇る国内屈指の名門クラブで、全日本チャンピオンやオリンピック代表など、多くの名選手を輩出している。

この企画は、そんな老舗卓球クラブの紹介と、代表の橋本允至(77歳)さんのインタビューで構成されている。

15年ほど前に鉄工所だった建物をリフォームしてできたという『卓伸卓球道場』は、1階に6台、2階に7台の卓球台を置き、8人の指導者(中国人コーチが4人)が熱血指導を行っている。

卓伸クラブの練習時間は、一部(小学生)も二部(中学生・高校生)もそれぞれ2時間だけと短いが、それでも強い選手が続々と誕生するのはどのような秘密があるのか。

橋本代表は「特に強くなる秘訣も秘密もないけれど、1台に2人、多くても3人しか入れないようにしているからボールはたくさん打っているかな」と語る。
練習場はピーンと緊張感が張りつめているらしく、その中で高い集中力を保ちながら練習しているため、上達のスピードが早いということらしい。

「うちは練習時間は短いけど、練習量は多い。昔と今でやっていることはあまり変わっていない。基礎を磨いて、フットワークを多くやる。最後は動ける選手が勝てる。ただ、練習内容や教え方は時代とともに変えてきた。今の子供にはノルマを与えている。時間で区切るといい加減にやる時があるから、これができたら次はこれ、というようにね」

 

橋本代表の指導の軸は40年以上ぶれない。
それは中国人コーチへの対応にも現れている。

「中国人コーチにはこちらから練習の指示を出します。彼らにおまかせして使われるのではなく、こちらが彼らを使わなくてはいけない。マンションも借りて、給料払って、社会保険も払っているから、うちの中国人コーチは他に移らない。生活は安定していますからね」

 

他にも独自の考え方がいろいろとあり、それがこの他に類を見ない老舗卓球クラブの秘密なのだと納得させられる。

ちなみに橋本代表は、国内最大手の卓球ショップである「タクシンスポーツ」を立ち上げ成功させた人であり、全日本選手権で高校生カットマンとして30年ぶりにベスト4入りを果たした橋本帆乃香選手のおじいさまでもある。

生ける伝説のような橋本代表の指導哲学に触れられるこの企画は、全国の多くの指導者にとって非常に参考になる内容だと思う。

 

ということで、今月号はこんな感じです。

今回特集されていた宇田選手は、私が若手の男子選手の中では最も好きな選手。

張本選手の陰に隠れがちだが、宇田選手の活躍はこれからである。
ライジングバックドライブの精度がもっと向上していけば、きっと世界で活躍する選手になるはずである。

「ねじり王子」として世間に名前が知られるようになる日は近い。

そのことを確信させられた7月号であった。

 

4 件のコメント

  • ライジングバックドライブってすごいですよね!
    いつも食らう方なので使ってみたいです笑
    吉田海偉さん格好いいですよね。ファンです笑
    某有名動画アプリで吉田選手のtable tennis for you
    格好いいですよ!ぜひ見てください笑

    • シェーク裏裏野郎さん
      私もペン表でライジングバックハンドスマッシュが打ちたいです(笑)
      吉田選手のカッコ良さはシビれますよね!
      「table tennis for you」は見逃してました。
      さっそくガン見します!

  • 世界選手権のところで許听選手は今大会が
    ラストチャンスみたいなことを言われてましたが、
    個人的に彼のプレーは好きなので優勝してギャフンと言わせて欲しいです

    • しんこうしんこうさん
      激しく同意です!
      私も日本人選手以外なら許昕かボルに優勝してもらいたいですねぇ。
      ここで活躍して、東京五輪で日本に来てもらいたいですね!

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