卓球王国を読む 2017年10月号

 

今月号も、全ページじっくり味わい尽くしました。

 

卓球王国 2017年 10 月号 [雑誌]

 

今月号の目玉企画はコチラ。

【独占インタビュー】
樊振東
卓球を愛する現実主義者
【技術特集】
世界に学べ!最強の得点術
vol.2 樊振東

まずは、6月のジャパンオープンで来日した際に敢行したという独占インタビュー。
貴重な樊振東の独占インタビューはファンにとってはたまらないだろう。
(ちなみに現実主義者の読みは“リアリスト”である)

そして「世界に学べ!最強の得点術」では、樊振東の得点のシステムと、パワープレーの秘密に迫るということで、日本男子NT監督の倉嶋洋介さんが、樊振東から学ぶべきポイントを解説している。

「最先端の両ハンド速攻を樊振東に学べ」と題し、そのポイントを3つ挙げているが、そのうちの1つが、前陣パワープレーを生み出す「低い重心」である。

倉嶋さんいわく「自分の体勢をうまく上下させて、床ギリギリの低いボールや台からわずかに出るボールでも、質の高い攻撃ができる。これが中国選手の強さの大きな要因であり、現代卓球では非常に大切な部分だ」とのこと。

まるで連続スクワット!「打球点を落とすFW」
樊振東の大会会場での練習を見ていると、わざと相手にストップ性のブロックをさせて、それに対してフォアハンドでフットワークをしている時がある(右写真)。打球点が落ちたボールに対して、低い重心でフォアドライブを打ち、また動いて低い重心で打つ。連続でスクワットをするような、非常にハードなフットワーク練習だ。
樊振東クラスの選手になると、あまいボールに対しては質の高いカウンターを何本でも連打できる。中陣に下がった時にブロックで前に落とされたり、読みが外れたりして打球点が落ちてしまった時に、どれだけ質の高いボールを打てるかということに重点を置いているのだ。
日本男子ナショナルチームでも、ボールの打球点を限界に近いくらい落として、キュッと回転をかけて打球して戻ることを繰り返す練習を取り入れている。確実にフォアハンドの安定感が増し、下半身の強さと柔軟性を養うことができる。「打球点を落とすな」という指導者は多いが、それは通常のラリーでの原則。より高いレベルでは、「より厳しい状況で質の高いボールを打つ」という視点が必要になるのだ。

文中の右写真というのがコチラ↓

 

樊振東はフォアもバックも低い重心からパワードライブを打っている印象があるが、ここにフィジカルの強さを活かした中国卓球の強さの秘密があるようだ。

日本のナショナルチームでも取り入れているという「打球点を落として打つフットワーク」
これは若い人たちも日々の練習に取り入れてみるといいのではないだろうか。

未来の世界チャンピオンの樊振東から「最先端の両ハンド速攻」を学べるこの企画。
時代に取り残されたくない人はガン見すべしですよ。

 

ハイクオリティなフォアドライブ

そしてもう1つ、注目したい企画がコチラ。

徹底解剖! 強者のスーパーテクVOL.4
上田仁のHQフォアドライブ

HQ(ハイクオリティ)とは「質が高い」を意味し、回転やスピードなど質の高いフォアドライブのことを「HQフォアドライブ」と表現。

日本のトップ選手たちは「上田のフォアドライブは質が高い」と評するという。
この特集は、上田仁選手のフォアドライブの「質の高さ」を本人が紹介するとともに、どのようにフォアドライブの質を高め、身につけていったのかを解説する、という内容。

上田選手がフォアドライブを打つ時に最も重視しているのは「手首の使い方」だという。

コンパクトなスイングで
ドライブの威力を出すには
フォアドライブはぼくの得点源です。周りの選手から、「スイングのイメージよりもドライブが重くて速い」と言われることがありますが、コンパクトなスイングのわりにはドライブの威力があると自負しています。
ぼくのフォアドライブは手首と前腕を中心にしたスイングです。質の高いドライブを打つには手首の使い方が最も重要で、バックスイングでラケット面を開いて、そこからインパクトにかけて手首を内側に戻しながらスイングします。スイング自体はコンパクトですが、インパクトでしっかりとボールをつかんでいるので回転とスピードも出ます。

 

上田選手は高校時代に邱建新さんからの指導によりフォアドライブの質を意識するようになったそうだが、その邱建新さんからのコメントも掲載されている。

手首と前腕を使えば
難しボールも攻撃的に打てる
上田選手のように手首と前腕を使ったスイングのドライブは、回転とスピードが増すだけではなく、台から出るか出ないかという難しいボールに対して攻撃的なドライブができるというメリットがあります。ラケット面が内側に向いていると台にぶつかるので、外側に開いて打球することがポイントです。

球威を出そうとすると、重心移動や腕を大きく振ることなどに意識がいきがちであるが、質の高いドライブのポイントは「手首と前腕」という小さい動きの中にあるようだ。

この企画ではほかにも、HQフォアドライブを打つためのいくつかのポイントと、その感覚を掴むための練習方法などを紹介している。

自分のドライブがロークオリティだとお悩みの方には、必読の企画と言えるだろう。

 

デスバックサービス!?

今月号で個人的に最も衝撃を受けたのが「我ら、ペンホルダーズ」である。

「クニヒロ卓球」のプロコーチ・庵木伸吾さん(片面ペン表)による連載で、今回が最終回となる。

最後のテーマは「必殺サービスを伝授」ということで、庵木さんの必殺技だというバックでのアップダウンサービスを紹介している。

これは「同じモーションで上回転と下回転を出すバックサービス」なんだけれど、庵木さんの解説を読んで、そんなやり方があるんかい! と驚いてしまった。

平野友樹選手(協和発酵キリン)の「今までぼくが見てきたバックサービスの中では一番すごいですね」というコメントが載っているが、まさにデスサービスのバックサービスバージョンといったところか。

そして最後のページに「ペンホルダーの読者に贈る言葉」が掲載されており、これがまた本当にグッときた。

ここではその一部をご紹介。

異端になろう! そして偏ろう!
定石を知ることで「型破り」になれる
私は卓球を始めた時からペンホルダーでプレーしてきました。裏面打法は高校生の時、そして社会人でも試しましたが、勝てなくなってしまうのが嫌で、結局はやめました。我慢して続けていればもしかしたら勝てるようになったかもしれないですが、私は少しの負けにも耐えられませんでした。
裏面打法はバックを振るという発想です。それはペンがやるから新しいのであって、シェークは昔からやっています。私はシェークと同じ武器を身につけるよりも、今の時代ならばペンはもっと偏った卓球で良いと思います。
現代ではシェークが全盛であり、正統の戦型です。それに対して異端と呼ばれる戦型は、少し前まではカットマンや粒高攻守などでしたが、今ではペンも異端な存在になっています。人とは握りが違うラケットを使い、片面のラバーでプレーするペンは異端なのです。だからこそ、頭の中も異端にならないと勝てないと思うのです。シェークと同じようにバランスを重視すると、ペンもバックを振れないといけないという発想になってしまいますが、ペンだからこそフォアに偏る卓球でも良いでしょう。
もちろん弱点を突かれた時のもろさはありますが、それを相手にいかに見せないか。また、自分も目をつぶることができるか。マイナスが出てもそれを補うだけのプラスがあるという考え方をしなければいけません。

ほんの3分の1程度の抜粋だけど、これだけでも痺れますね。

必殺バックサービスのやり方とともにこのメッセージを読めば、ペンホルダーの可能性を大いに感じられるのではないだろうか。

ペンホルダーズの新連載が誰になるのか、そちらも楽しみである。

 

こんな感じの10月号でした。

楽しみにしていた「卓球で飯を食う」の中編も期待通りのいい内容であった。

そして次号予告によると「世界に学べ! 最強の得点術」で取り上げるのは許昕とのこと。

倉嶋さんがどのように解説してくれるのか、楽しみでしかたがない。

 

10 件のコメント

  • こんにちわ。
    ペンホルダーの言葉はしびれましたね。
    ちょうどここ2年くらい集中して裏面打法を練習してみて、改めてプッシュやフリッカーの有用性に気が付いた…と言うか裏面打法はレシーブ以外はもうダメだ(´Д⊂ヽ
    って事に気が付いた自分としては身につまされる思いです。
    今月号も買いですね。
    買ってきます。

    • つぐさん
      ほんともうシビレまくりですよ~。
      私もまったく裏面を使いこなせていない身なので、かなり勇気づけられました。
      庵木さんのバックサービス、ぜひトライしてみてください。
      私もチャレンジしてみます(かなり難しそうですが)。
      独自のスタイルを追求し、周りに嫌がられるくらいの異端になりましょう 笑

  • ファンゼントン選手のプレーはあまり注目したことがなかったですが、今回の記事は特に参考になりました。
    この、重心を落とす、というフォームは吉田海偉選手がカウンターの際によくしているイメージがあったのですが、中国特有のものなんですかね?
    ペンホルダーの勝ちへの考え方は、ひどく共感しました。なんであれ人と異なった事をやる以上、固有の戦術やプレースタイルを確立して、バランスブレーカー的な立ち回りをすることが重要ですよね。

    • 卓球主義さん
      記事を読んであらためて試合を観ると「重心を落とす」という打法の凄みがよくわかりますね。
      これで連続攻撃するなんて、どれだけフィジカル強いんだよって思います。
      確かにこの打ち方は中国選手に多い気がします。
      シュシンなんかも顕著ですよね。吉田選手も元々中国選手ですし。
      日本からもこの技術を習得したパワーファイターが出てきたら面白いですよね!

  • 異端になろうっていう考え方は
    現代卓球で不利と言われているカットマンにも言えそうです
    これを読んでから、ペン表に仲間意識が芽生えてます笑

    • しんこうしんこうさん
      まさにカットマンにも当てはまる考え方だと思います。
      フォア粒とか、フォアはオール攻撃とか、異端のカットマンの活躍は心踊りますね。
      カットマンとペン表が日本代表になることを祈りましょう 笑

  • トップ選手のインタビューって読むのが楽しいですよね
    しかも樊振東・・・読みたいですね。
    私事ですが卓球レポートの年間購読で水谷選手のサイン入りリュックが当たりました!

    • シェーク裏裏野郎さん
      私もインタビュー好きなのでその気持ちわかります。
      読んでいるだけで強くなりそうです よね 笑
      サイン入りリュック凄いですねー!
      私はラバーしか当てたことないので、めっちゃ羨ましいです。

  • この記事読んで、庵木さんのサーブってどうやって打ってるんや?と思いバックナンバーを買って読んでやってみましたが・・・・。

    こんなん無理じゃないっすか。。。人間の身体って一部分だけ別方向には動かないんだなと感じました。

    • 伊藤さん
      ほんとこればっかりは不思議としか言いようのない技術ですよね。
      私もトライしましたが、難し過ぎます 笑
      庵木さんは身体を部分的に自在にコントロールできる特別な感覚の持ち主なのかもしれませんね。
      ただ、それもどきのサービスぐらいなら何とかできるかもしれないので、諦めたくはないですが 笑

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