強い選手の出場枠を減らすことは卓球の発展に繋がるのか?

卓球王国7月号に国際卓球連盟(ITTF)のトーマス・バイカート会長のインタビュー記事が載っていた。

昨年9月にシャララ前会長から職を受け継いだ現役の弁護士でもあるバイカート会長。「我々の使命は全世界の人々に卓球を広めることだ。卓球の素晴らしさをもっと多くの人に知ってもらいたい」と意欲を燃やす頼もしいお方である。

このインタビューの中にバイカート会長のこんな発言があった。

――来年はリオ五輪もありますが、ITTFは中国のメダル独占にならないように策を講じてきました。あなた自身は何かアイデアを持っていますか?
TW IOC(国際オリンピック委員会)に背中を押される形でITTFは今までルールを変えてきたし、ロンドン五輪でもシングルスのエントリー枠を一国3名から2名に減らすなどしてきた。もちろん中国に罪があるわけではないが、ひとつの国がメダルを独占していくのはスポーツとしても良くないことだ。
実は、IOCに対しては、5番目の種目として混合ダブルスを申請している。これは参加人数はそのままでメダルを増やすという意味で、この件に関してはIOC会長(トーマス・バッハ)とも1週間前に話をしたばかりだ。できたら2020年の東京五輪の時に、実現させたいと思っている。同時にITTFは世界選手権の規模の縮小、参加人数の制限も考えている。
(卓球王国103頁より抜粋)

五輪に5番目の種目として混合ダブルスを申請しているというのはとても良いことだと思うが、同時に考えているという「世界選手権の規模の縮小、参加人数の制限」というのが気になる。

 
個人的に私は、五輪のエントリー枠を一国3名から2名に減らしたことが卓球にとって良いことだとは思わない。
中国には強い選手がゴロゴロいる。ただでさえ出場できないツワモノがたくさんいるというのに、これ以上減らすというのは気の毒である。
何より強い選手が観られないというのが卓球ファンとして悲しい。

エントリー枠を減らすと、中国選手と対戦しなくてもメダルが取れる可能性がある。
本来ならメダルはもの凄く価値のあるものである。
しかし中国選手と対戦せずにメダルを取った場合、観ている方としては興奮や感動は半減してしまうのではなかろうか。
私なら「中国選手と対戦してたらどうだったかなあ」という疑問が頭を離れないだろう。

むしろ私は強い選手がたくさんいる国は出場枠を増やしてもいいとさえ思っている。
理想としては中国からは10人くらい出てもらいたい。
その中で勝ち上がる選手は本当に強い選手であり、最高に価値あるメダリストなのではないか、と思う。

ここでいきなりだが、ボクシングの階級が何階級あるかご存知だろうか。
シンキングタイム!
はい終了!

答えは「17階級」です。

めっちゃ多くないですかこれ?

しかも、ボクシングには団体がいくつもあり、日本ボクシングコミッション(JBC)が認めている世界の主要団体は4つある。
とんでもない数の世界チャンピオンがいるわけですね。

卓球で言えば、現在世界ランキング61位の大島祐哉選手もなんとか世界チャンピオンになれるということだからね。
水谷なら3階級制覇してるくらいの実力ってとこかな。

私はボクシングの大ファンであるが、これほど世界チャンピオンが多いと世界戦の中継でも観ない試合もある。
つまり世界戦やチャンピオンの価値が下がっているということ。

色々な事情で階級をたくさん設けているのだろうが、スポーツの世界チャンピオンはほんの一握りの選手しかなれないからこそ価値があるわけで、多過ぎると誰が本当に強いのかわからない。

つまり、卓球はエントリー枠を「減らす」ことで、ボクシングは階級を「増やす」ことで、それぞれメダリストやチャンピオンの価値を下げてしまっているのではないだろうか。
とまあ、そんなことを思ったわけであります。

バイカート会長も言っているように、そのスポーツの発展のために色々と策を講じることは必要であるが、レベルの高い試合が観られる機会を少なくするような方向には行ってほしくはない。

せめてこれ以上ボクシングは階級を増やさず、卓球はエントリー枠を減らさないでもらいたいものですね。

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