卓球ファンの裾野を広げるための戦略あれこれ

 

「スージョ」という言葉をご存知だろうか。

スージョとは、相撲ファンの女性の呼び名なのだが、「相撲ファン」という相撲雑誌がこれを提唱し、いま爆発的に浸透しているのだ。

この言葉を誰が作ったのかはわからない。
相撲協会が更なる人気を獲得しようと戦略的に生み出したわけではないだろうが、相撲が注目される新たなきっかけとなっていることに、相撲協会は喜んでいることだろう。
これを利用しない手はない。女性ファンを意識したサービスをどんどんやればいいと思う。

〇〇女子という言葉は最近よく使われるようになった。
歴女にリケジョに森ガール、カメラ女子なんてのもある。
なんでもかんでも女子やガールをつける必要があるのかと思っている私だが、ことスポーツに関しては好意的に見ている。

最近では「カープ女子」がお盛んであるが、テレビでやっているカープ女子の特集を見ていると、その生態はジャニーズの追っかけをしている人たちと酷似していて、非常に楽しそうである。
その姿を見ているだけでも、野球に興味がなかった人でも、野球、或いは広島カープという球団は面白いのかもと興味をそそられる可能性は大いにある。

そして野球界で、カープ女子の次に来ると言われているのが、オリックスファンの女子、「オリ姫」。

オリックス、2年で観客動員30%増の秘密 「カープ女子」の次は「オリ姫」の時代だ

女性ファン限定で選手の撮影会「集まれ!カメラ女子」を開催したり、独身イケメン選手トリオが登場する女性限定のクリスマスパーティーをやったりと、女性ファン狙いの施策が功を奏し、観客動員数の増加に繋がったようだ。

こうした、「〇〇女子」的な呼び方に対して批判的な声も多くあるようだが、人気が低迷しているスポーツや球団が盛り上がって世間の耳目を集めることができるならば、大いに結構なことだと思う。

大相撲は近年、八百長問題や野球賭博問題など、相次ぐ不祥事により、存続の危機とさえ言われていたが、今はまた相撲の人気が上がって来ている。
1月の初場所では15日間すべて「満員御礼」となり、これは「若・貴ブーム」のあった97年以来、18年ぶりとのことで、卓球ファンから見れば羨ましい限りの活況である。

スージョという言葉の存在は、そんな相撲界にとって追い風となるはずである。
前々から相撲ファンであったという女性からすると、スージョというぽっと出のカテゴリーに自分を入れてくれるなという思いはあるかもしれない。
その気持ちは重々わかるのだが、相撲界に若いファンを取り込むという視点から見れば、これはもう利用するっきゃない、と思うのだ。

で、我らが卓球界の現状はどうかというと…

卓球の全日本選手権を観戦しに来る人のほとんどは、恐らく卓球経験者か卓球関係者で、卓球に詳しくない人で観に来ている人は選手の知り合いというパターンでほぼ間違いはないと思う。

卓球ファンの裾野を広げるためには、卓球経験者ではないが、卓球・卓球選手に興味が湧いて試合を観戦しに来たという人を増やさなければならない。
野球やサッカーは、そもそも若者にも子供にも人気のスポーツであり、新たな女性ファンを獲得することもそれほど難しいことではないと思うので、卓球界が参考にすべきは、やはり相撲界だろう。

相撲界は色々な企画・イベントを仕掛けてファンを楽しませている。
例えば、イケメン力士・遠藤に「お姫様抱っこ」をしてもらえるイベント(応募者はなんと8132人!)。
力持ちである力士ならではのナイスな企画である。

もっと驚きなのは、日本最大の客船で2泊3日の船旅をする「大相撲クルーズ」という企画。
これは「船内では関取とのふれあいイベントやトークショーなどを実施。更にご乗船いただいたお客様には、大相撲のマス席へご招待。お土産のプレゼント付き。」というプレミアムなクルーズなのだ(お値段11万円~51万円)。
スケールがデカイ!
力士や親方だけでなく、行司・呼出・床山といった裏方的な人たちも乗船するというのだから、相撲ファンにとっては天国のような船である。
(卓球で言えば、選手や監督の他に、審判・卓球メーカーの開発者・福澤朗が乗っているようなもの)。

卓球界も何かとイベントなどはやっているようではあるが、驚くような企画やユニークなイベントがあまりないように思う(奇をてらえばいいというものでもないが)。
にわかの女性ファンであろうが、コアなファンであろうが、相撲界は力士とファンの触れ合わせ方がうまい。
卓球界でも、もっと選手とファンが密に交流できる場が必要であると思う。

両国国技館のように、卓球にも聖地と呼ばれる場所ができるのが一番いいのではないだろうか。
プロリーグが発足してくれれば良いのであるが、色々と難航しているようなので、それはまだ先の話になりそうである。
であるならば、例えばAKBグループのように、そこに行けば毎日のように誰かが卓球の試合をしている(選手と試合をしてもらうこともできる)という「卓球劇場」のようなものを作るとか、できないものだろうか。

〇〇女子やイケメン選手イベントといった戦略を、安易な発想と笑うのは簡単である。
けれどもまず、そのスポーツに興味を持ってもらわなければ何も始まらない。
「卓球にはラバーというものがあって、スポンジの厚さや硬さによって打球感に違いの出る繊細なスポーツ云々」などというマニアックな話がいきなり伝わるわけはない。
卓球の奥深さについては、卓球に興味を持ってもらった後に知ってもらえればよろし。

まずは敷居を下げ、「ちょっと卓球観ていかない? 面白いよ」という気軽な雰囲気を醸し出している場所が必要である。
気軽であるのにレベルが超高い、そんな場所。

プロリーグや卓球劇場が実現するのであれば光が見えそうな気もするが、もし無理なら、もうひとつ私はこんな提案をしたい。

爆笑問題や人気芸人達が出演する、2ヶ月に1度、銀座で開催している『タイタンライブ』というお笑いライブがある。
そしてそのライブを全国のTOHOシネマズ映画館で同時生中継するという、映画史上初の試みが「爆笑問題withタイタンシネマライブ」である。

「お笑いライブには行ったことはないけど、お笑いライブを観てみたい・・・」という人も、自分の街の映画館で、ビールを飲んだりポップコーンを食べながら気軽にライブを楽しめるというわけだ。

これを卓球界に取り入れるのである。

東京でやっている全日本選手権やジャパントップ12を、観たくても観られない人たちのために生中継する、「卓球シネマ」をやるっつうのはどうだろうか。
3Dにするのもありだよね。

デートコースにもなるよ、たぶん…。

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