福原愛選手が発する「サー」の効果とは?


以前から気になっていた『スポーツオノマトペ なぜ一流選手(トップアスリート)は「声」を出すのか』という本を読んだ。

なぜ気になっていたのかというと、本書の中で、福原愛選手が取り上げられていたからである。

 



「アマゾンの内容紹介」より
なぜ、ハンマー投げ・室伏広治は「ンガーッ」と叫ぶのか? 卓球・愛ちゃんの「サー」には意味があるのか? トップアスリート(一流選手)ほど、試合中に「声」を出します。実は、スポーツ時に「声」を出すことで、よい成績が期待できるのです。こうしたスポーツシーンで用いられる「声」を『スポーツオノマトペ』と命名し、世界で初めて科学的に分析・解説しているのが本書です。 スポーツオノマトペを理解すれば、(1)一流選手の試合を観戦していて楽しくなる、(2)実際に声を出すことで自分のプレーが上達する(ダイエット効果も得られる!)、(3)こどもたちにスポーツのコツを指導しやすくなる、などの効果が得られます。柔道家・井上康生氏推薦の1冊!!

 

著者の藤野良孝さんの言う『スポーツオノマトペ』とはスポーツシーンで用いられている「声」全般のことであり、「気合い」や「掛け声」と呼ばれる声も広義のスポーツオノマトペとしてとらえているという。

その具体的な例として、福原愛選手の「サー」を取り上げている。

ちなみに藤野さんは、『北斗の拳』の主人公・ケンシロウが攻撃する時に発する「アタタタタタタタ」という声も、広義のスポーツオノマトペであると考え、研究の対象にしているという。

「サー」は7種類ある!?

卓球経験者からすれば、卓球選手が試合中に声を出すとこは普通のことなので特に違和感を覚えることはないが、一般的には不思議に思う人も多いそうで、藤野さんは「愛ちゃんの『サー』には意味があるの?」とよく訊かれるのだという。

藤野さん曰く、福原選手の「サー」のバリエーションは、大別すると4パターンに分けられるという。

①「サー」     単音型
②「サーサー」   単音の繰り返し型
③「サーサーサー」 単音の3回繰り返し型
④「サーサーヤー」 単音の繰り返し+異なる単音付加型

①は、「サービスやスマッシュが決まったとき」に発せられる。
②は、「相手選手に連続して点を入れられ、ようやく入れ返したとき」に発せられる。
③と④は「試合が押されぎみで、かつ、ラリーが長期にわたって繰り広げられているときに得点を入れたとき(苦戦している状況から脱出できたとき)」に発せられる。

他にも、「サー」の後にワンクッションおいて再び「サー」というパターンもあり、文字で表すなら「サーサー」ではなく「サー・サー」。

「サー」の間に息継ぎを入れているようだという藤野さんは『運動過程において息継ぎを入れるということは、身体にゆとりがあり、冷静に状況を判断できている証拠です。また、私たちの生理現象にあるように、大きく深呼吸をすることは気持ちを落ち着かせる心理的効果があります。この一拍間をおく「サー」がみられたら、リラックスできて余裕がある状態と判断してもよいかもしれません』と語る。


なんのために「サー」を発しているのか?

福原選手が「サー」を発することによる効果はいくつかあるそうだが、その中のひとつが「自己暗示」である。

元巨人軍のエースピッチャーであった桑田真澄さんが、投球前にグローブに向かって何やらブツブツ呟くことを知っている人も多いと思うが、その行為をスポーツ心理学では「セルフトーク(独り言)」と呼ぶそうだ。

自分自身に話しかけることで、勇気づけたり、精神的なゆとりを与えたり、理想的なパフォーマンスを実現させるなどの効果をもたらせるのである。

そして福原選手の「サー」は、このセルフトークの「凝縮バージョン」なのだという。

セルフトークは「今日も勝つ! 絶対に勝つ! 私なら負けない。負けるはずがない」のように、文章形式でなければいけないが、卓球の場合だと、サービスやレシーブのときや、激しいラリーの応酬の最中にブツブツと文章形式で自分に言い聞かせる余裕がない。

けれど「サー」というスポーツオノマトペであれば、長い文章の代わりに一言で自分自身に暗示をかけられる。「今日も勝つ、絶対に勝つ!」のような強い気持ちをぎゅっと凝縮したのが「サー」という言葉なのだそうだ。

また、「サー」にはリズムを調整するという役割もあるのではないかと藤本さんは考察する。

また、「サー」は一つの連続したプレーがとぎれた瞬間に観察されます。サーブやスマッシュが決まった後にみられることが多いのですが、試合の流れでみれば、それは、あくまでも途中経過に過ぎません。相手とのラリーが続いた後、とぎれた試合のリズム、テンポを掴むために発しているのです。ですからラリーが長くなればなるほど、発する「サー」の数も増え、「サーサーサー」のようにリズムを調整する必要が出てくるわけです。リズムは試合そのもののリズムであり、フットワークなど自分の動きのリズムでもあります。次の動き・試合の流れへのつなぎとしてワンポイント的に「サー」を発しているように感じます。

 

そして、「お守り」としての効果も期待できるという。

私は知らなかったが、藤本さんによると福原選手の「サー」は、中国で活躍していたある卓球選手の声をまねたものなのだそうだ。

目標とする選手の声まねから生成された「サー」というスポーツオノマトペには、自分自身を元気づけるお守り的な意味も含まれており、声を出すことで、常に目標(憧れ)の選手を目指して試合をしているのだという。

これも一種の自己暗示であると言える。

福原選手の「サー」に関しては、あくまでも藤本さんが客観的に観察した結果をベースに、その使い方や効果などを探ったものである。

けれども、こんなにも「サー」とは奥深いものだったのかと、私はけっこう感心してしまった。

特に、憧れの選手の声をまねることによる「お守り的効果」というのは、意識的にやってみても良いのではないだろうかと思った。
打ち方やサービスの出し方のマネをするというのは多くの人がやっていることだと思うが、試合中の「掛け声」をマネるというのは基本的にやらないと思う。

中国選手の声をマネることで、気持ちがノッて(その選手になりきって)きて、良いプレーができるようになるということもあり得るのではないだろうか。

トップ選手の試合を観るときは、自分に合ったスポーツオノマトペを見つけるために「声」に注目してみるのも良いかもしれませんね。

私も声マネする選手をちょっと探してみようかと思います。

やっぱ郭炎かなあ…。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。