卓球王国を読む 2017年11月号

 

今月号も、隅から隅まで、ずずずい~っと読み倒しました。

 

卓球王国 2017年 11 月号 [雑誌]

 

早田ひな インタビュー&スーパーテク

早田ひな選手って表紙映えするよね。
なんだかカッチョいい。

そんな今月号の注目企画はもちろんコチラである。

【インタビュー】
早田ひな
【技術特集】
徹底解剖! 強者のスーパーテク VOL.5
早田ひな 勝利の3球目攻撃

まずは早田選手のインタビューがあり、卓球を始めた頃からこれまでの歩み、怪我のこと、中国選手のこと、T2参戦についてなど、いろいろと語っている。

そして技術特集では、「国内屈指の威力を誇る早田選手の3球目攻撃を石田大輔コーチが詳しく解説する」という内容。

石田コーチは、父親のクラブ(石田卓球クラブ)で卓球を始めた早田選手のことは小さい頃から知っていたが、正式なコーチになったのは2年前だという。

そんな石田コーチと早田選手が目指すのは、男子的なプレーと考え方だという。

私がコーチになって、世界で勝つために彼女に求めたことは「男子的なプレーと思考」。
プレーの面で言えば、女子はパワー不足という観点から、どうしてもラリー志向が強く、サービスから3球目で決めにいくという意識が少ない。男子は3球目攻撃で得点を奪いにいく意識が高く、中国の女子も3球目攻撃の意識とレベルが高い。早田には3球目で決めることを強く意識させて、それを重点的に練習させています。
周りから「早田の3球目は威力がある」と言われることがありますが、「3球目を打ちまくれ!」という指導と、それを磨くための練習をたくさんしています。早田は、日本の女子ではあまりいないプレーをしていると思います。
3球目で得点を奪うという考えは男子では当たり前のこと。試合の中で3球目攻撃での得点率は高いという考えを持つようにと、早田には常に話しています。幸いなことに、彼女は長身で手足も長いという利点があるので、前陣で両ハンドで叩くようなプレーではなく、フォアドライブの威力を軸にしたプレーを追求しています。

このかなりリスキーとも言える「3球目を打ちまくる」というプレースタイルは、世界で勝つことを意識したスタイルなわけであって、それはすなわち中国を倒すということを意味している。

世界で勝つには中国を破らなければいけない。中国にはこじんまりとしたプレーでは勝てません。早田は3球目をフルスイングのフォアドライブで狙うことが多いので、得点力が高い反面、ミスも目立ちます。もう少しつなぐボールがあってもいいと感じる人は多いと思いますが、それでは中国に勝てない。
実際に、丁寧と劉詩雯(ともに中国)と対戦した試合を分析してみても、3球目をいい形で攻撃できた時は得点率が高いけど、ラリーが長くなると今の早田では彼女たちから点を奪えない。もちろん、強く打つのではなくて、ショートスイングでの攻撃やカウンターも増やして、プレーを安定させていかなければいけませんが、大前提として、サービスから3球目で勝負できるようにならなければいけないと考えています。

確かに日本人選手が中国選手と対戦する時、ラリーの応酬になると分が悪い。

3球目攻撃を磨きに磨いて、ラリー戦になる前に勝負を決める。
これは身体的に恵まれた早田選手だからこそ取れる戦術であり、このスタイルが完成に近づいた時、中国の度肝を抜いてくれるに違いない。

そしてこの「勝利の3球目攻撃」について、早田選手の連続写真を用いながら石田コーチが「4大ポイント」を詳しく解説しているので、早田流のプレースタイルに興味のある人は必読である。

 

世界最強ペンホルダーの苦悩とプライド

続いての注目企画は、なんと言ってもコチラ。

【インタビュー】
許昕
【技術特集】
世界に学べ!最強の得点術〈vol.3 許昕〉

ついに来ましたよ。
許昕アニキの大特集。

技術特集の方は、日本男子NTの倉嶋洋介監督が「許昕から学ぶべき3つのポイント」を解説しておって、もちろんコチラも非常に勉強になるが、ここではインタビュー記事の方を取り上げてみたい。

「強い意志を持った人間でなければペンホルダーでは戦えない」

もうこのフレーズだけで私は泣きそうになっちゃったよ。

意外にも、卓球王国が行う許昕への初インタビューとのこと。
いろいろな質問をぶつけているが、意外な事実がいくつもあって、非常に興味深く読んだ。

許昕が卓球を始めたのは6歳で、両親は卓球未経験。
日本のトップ選手のように、卓球経験者の親によって3歳くらいから英才教育を受けているのと比べると「卓球エリート」という感じがしない許昕。
これだけでも親近感を感じるではないか。

卓球を始めた頃はなんとシェークだったという許昕は、先生に言われてペンホルダーに変えたという(ナイスアドバイス!)。

その後、順調に成長し、数々のタイトルを手にして「世界最強のペンホルダー」の称号を得る。

そんな最強ペンホルダーの許昕であるが、インタビューを読んでいてひしひしと感じるのは、ペンという戦型であることへのプライド、そして、ある種の「やりきれない思い」であった。

――周りはシェークハンドの選手ばかり。ペンホルダーで勝ち抜いていくのは、相当な苦労があったと思います。
 実はぼくは、プレーをするうえでは周りからの影響は特に感じていないんだ。ただ、ルールだけが常に変わり続けてきた。たびたび行われてきたルールの改正が、いつもペンホルダーの選手に損失を与えてきたんだよ。
もしもルールが変わらなければ、こんなにペンホルダーが減ることはなかったんじゃないかな。もともと、かなり多いプレースタイルだったんだからね。ルールが変わるたびにペンホルダーは減っていったんだ。

特にプラスチックボールへの変更は大きな影響があったという。

インタビュアーである筆者も「30分ほどのインタビューの間に、許昕がルールの改正についてたびたび口にしたことが印象的だった。絶えずルールが変わってきたことが、ペンホルダーの活躍の場を奪ってしまったのだと」と書いているが、確かに最近の許昕の戦いぶりはどこか苦しそうに見える。

しかし許昕には、強靭な精神力と、ペンホルダーとしての誇りがある。

――最後に、あなたは日本のペンホルダーの選手にとても人気があります。最強のペンホルダーとして、何かアドバイスをもらえませんか?
 アドバイス? ペンホルダーでのプレーには、シェークよりも多くの困難があることは確かだよ。だから強い意思を持った人間でなければ、ペンホルダーでは戦えない。これが最も重要な点だね。そしてシェークの選手よりもしたたかに生き抜いていかなければならない。主流ではない戦型だけれど、シェークの選手と張り合って、戦っていくんだから。
そしてひとたび気を緩めたり、「とても勝てそうにない」と感じてしまったら、あっという間に敗れてしまう。それがペンホルダーというスタイルだ。ペンホルダーの一番難しいところなんだ。
――やはり、ペンホルダーとしてプレーすることのプライドはありますね?
 もちろんプライドはある。ペンホルダーにあえて挑戦しようという人、ペンホルダーでプレーしようという勇気のある人は、ほとんどいないのだから。

これまで磨き上げてきたものが、ルール改正によってあっけなく崩れ去ってしまう無念。
その胸中は察するに余りあるが、許昕という男は決して折れない。
不屈の精神力でもって、まだまだ大暴れしてくれるに違いない。

先月号の樊振東のインタビュー記事は、樊振東の満面の笑みの写真が印象的だったが、今回の許昕の写真は、どこかもの悲しそうな表情で、憂いを帯びている。

ペンホルダーとしての苦悩、トップ選手としての重圧、多くの故障を抱える肉体。
あらゆる困難と向き合いながら、高い目標に挑み続ける許昕の満面の笑みが見られるのは、シングルスで世界の頂点に立った時ではないだろうか。

いち許昕ファンとして、弾けるような笑顔の許昕が見られることを強く祈りたい。
そんなことを思わされたインタビュー記事であった。

 

11月号はほかにもいくつか注目企画があって、平野早矢香さんが9月に『卓球の鬼と呼ばれて。』を上梓したのを記念した特別企画もその1つ。
コチラは『卓球の鬼と呼ばれて。』から抜粋した平野語録を紹介するという企画で、今回はその前編である。

そして、話題の卓球映画『ミックス』の裏側(メイキング)にスポットを当てた企画というのもある。
コチラは、王国の記者さんによる撮影現場見学記や、卓球監修を務めたYOYO卓球の川口陽陽さんの話が載っている。

半年ほど前に陽陽さんから「卓球映画の監修をやることになったんですよ」と聞いた時は、私はここまで映画が話題になり、ここまで陽陽さんが深く関わることになるとは思ってもみなかった。
記事によると陽陽さんは編集にも立ち会ったそうである。
映画を観る予定の人は、これを読んでおくと、より楽しめるはずである。

というわけで、そんなこんなの11月号でした。

 

8 件のコメント

  • 石田さんの良いところは中国選手を倒すための
    練習をさせているところですかね
    今、平野選手が中国選手に勝っていますが、
    早田選手も中国の牙城を切り崩しにかかってくれることを
    願います

    許昕選手のインタビューは
    ペンに一番必要なものは頭脳だと答えたのには痺れました
    あれだけ、フットワークがエゲツないプレー
    してるから、フットワークとか答えそうだとおもったのに

    • しんこうしんこうさん
      早田選手クラスになると、国内のトップ選手よりも中国選手を意識した練習をしないと国内の争いにも負けてしまうんじゃないでしょうかね。
      石田さんの対中国選手を見据えた分析力と指導力、ただ者じゃない人だと思います。
      ミウミマは速さで対抗し、早田選手はパワーという違う角度から中国に挑む。この戦いがこれから楽しみです。

      シュシンのその言葉、私もシビれました!
      誰よりも動きまくっているのに、誰よりも冷静に戦っているカッコよさ。
      これほどのペンホルダー選手は今後暫く現れないでしょうw

  • 中国選手と言えども、相手からの返球が自身のキャパシティを超えていればまともな返球は難しいはずです。問題はそのキャパシティをどう超えるか。早田選手はこの問いの答えとして、3球目という早い段階でのフォアドライブに活路を求めたのだろう、と(勝手な)考察をしています。
    これ、我々一般層が格上選手と戦う時にも大事だと思います。格下相手なら普通にやっても相手のキャパシティを超えますが、格上選手のキャパシティを超えるにはある程度のリスクと覚悟が必要なのかもしれません。

    • Kさん
      おおなるほど。
      確かにラリーで中国選手のキャパを超えるのは難しそうですよね。
      早い段階での攻撃の精度が上がれば、中国選手も崩せるかもしれません。
      リスキーな卓球でかつ安定性が上がれば、早田選手は打倒中国へかなりの可能性を秘めていると言えますね。
      そしてこれは我々にもあてはまるというのはその通りだと納得。
      サービスからの3球目、レシーブからの4球目、ここを徹底的に磨き上げることに格上攻略のカギがあるということですね。
      あとはこれをリスクを背負ってでも果敢に打っていける勇気が必要ですね。
      これがなかなか身に付かないんですが… 笑

  • 確かに早田選手ってパワープレーが多いですよね。
    恵まれたフィジカルってやつですかね。
    シュシンはとにかくかっこいいですね!シェークでも学べることは多いです

    • シェーク裏裏野郎さん
      日本人離れしたパワープレーが魅力ですよね。
      女子の日本人トップ選手はなぜか小柄な人が多いですから、貴重な人材です。
      さらに肉体が出来上がった時が楽しみです。

      シュシンのカッコ良さは半端じゃありません。
      戦型の壁を越えて多くの人が憧れる稀有な存在ですね!

  • 攻撃的なプレイスタイルだからこそ頭を使う。という許昕選手の言葉に感動。ちょっと違うかも知れませんが、以前読んだバレーボール漫画の話しを。主人公のチームは超攻撃的。対戦相手は「攻撃重視のチームなら守備が弱い」と考えましたが、主人公のチームは攻撃(アタック)に持っていく為に攻撃練習以上に守備練習に時間を費やしました。卓球とは直接関係無い話しで申し訳ありませんが、感じたまま思い浮かんだことを書かせていただきました。

    • てぐすさん
      シビレる言葉ですよねぇ。
      家訓にしたいほどです。

      怪物級の攻撃力を発揮できるのは鉄壁の守備力があるからこそ、というのは納得ですね。
      許昕選手もレシーブやストップなどの技術が上手いからこそ、あの恐ろしいほどの攻撃に繋げられるのでしょうね。
      私は鉄壁ショートが武器ですが、そこからの決定力がないのがツラいところです 笑

  • naruko へ返信する コメントをキャンセル

    メールアドレスが公開されることはありません。