卓球王国を読む 2015年4月号


今月号の卓球王国は、全日本選手権の話題がてんこ盛りだ。
 
その中でも、ボリュームたっぷりの「チャンピオンインタビュー」は一番の注目記事だ。
 
若い世代の活躍が目覚ましい中で、7度目の優勝を飾った水谷隼と、54年ぶりの3冠に輝いた石川佳純、2人の王者がそれぞれ全日本についての思いを語っている。
詳細は雑誌を確認してもらいたいのだが、ひとつだけ水谷の印象に残った言葉を紹介する。
 
水谷は「君と他の選手との違いは何でしょうか」と問われ、次のように答える。

 

環境が違います。ぼくは日本の環境を嫌って海外に行ったわけで、ぼく目線で言えば日本にいたら強くなれない。ただ、生活は海外のほうが厳しいし、日本にいるほうが友達もいるし楽しい。日本を離れたくないというのは理解できる。全日本が終わってすぐに海外へ出発して試合をする、世界選手権が終わってそのまま海外リーグでやるということばかりなので、日本でのんびりやっている選手に負けたくない。ぼくは試合もたくさんしたいし、日本では満足できないから……その差じゃないですか。(後略)

 

「日本でのんびりやっている選手に負けたくない」
誰よりも厳しく自分を追い込んで修練を積んできたからこそ言える台詞なのだろう。
 
 
そして今回、私が特に面白く読んだ特集はコチラ
 
『全日本ランカーに聞く! プラボールで用具を変えた?』
 
セルロイドボールからプラスチックボールに変わったことにより、打ち方や用具を変えた方がいいのかどうか、迷っている人も多いと思う。
この企画では、全日本でベスト16に入った選手全員(計32名)に、プラボールへどのように対応したかについて話を聞いている。
打ち方や用具を変えた選手、変えなかった選手、検討中の選手、それぞれのプラスチックボールへの対応や考察は、プラボール問題でお悩みの方には間違いなく参考になるはずだ。
 
攻撃選手だけでなく、カットマンも4人いて、守備型のトッププレーヤーのプラボール対策を知ることができるのも、この特集のおいしいところである。
その中から2人のカットマンのコメントを紹介する。
 
佐藤瞳(札幌大谷高)
セルの時からもっと攻撃力がほしいと思っていて、プラになってさらに飛ばなくなったのでフォアのラバーを厚から特厚に変えました。ラバーが厚くなった分だけ、ボールをつかんでくれるので、攻撃だけでなく、カットも切れるようになったと思います。プラになってストップがすごく止まるので、あまり下がりすぎると間に合わなくなってしまう。今は前よりも台に近いところでプレーするようになりました。

 

塩野真人(東京アート)
速いボールに対するカットが正面衝突するような感覚になり、抑えきれずオーバーすることが多かったので、バックのツブ高を変えました。『スパイクP2』は、柔らかいスポンジで、粒も小さめで倒れやすいので、食い込みが良く、弾みのコントロールがしやすい。ツッツキもやりやすいし、プラでも信頼が置けて安心して打てます。
今後は安定性を上げるためにラケットを「素手感覚」があるものに変える予定です。基本は同じ材質のブレードで、グリップを変えようと思います。
 
 
そして、129頁にさりげなく掲載されていた『テナジー 値上げの衝撃』もオモロであった。
 
2月21日から「バタフライ」ブランドでお馴染みのタマスが、一部の製品で出荷価格の大幅な改訂と「オープン価格」を実施するという。
ラケットの『ティモボル』や『水谷隼』などのヒット商品はメーカー出荷価格が30~40%近く上がるのだとか。
中でも、プロアマ問わず多くの選手が使用する人気ラバー『テナジー』の値上げ(8000円前後に上がる)は、卓球界に大きな衝撃を与えた。
 
そんな今回の値上げについて、タマスの取締役・山松謙三氏に話を聞いている記事なわけだが、製品の値上げには、やむにやまれぬ事情があるようだ。
 
出荷価格改訂の大きな理由は、「海外流出」の広がりによって日本でバタフライ製品が入手しづらくなることを防ぐため、だそうだ。
今の円安の状況によって、本日と海外の価格にかなりの差が生じており、そのため日本で買い付けて、非正規ルートで海外に売る人がいるということだ。

 

(前略)
最近では外国の方々が日本製品のおむつなど日曜雑貨品をまとめ買いするニュースが報じられていますが、ラバーだと大量に旅行用カバンに入れて持ち出すことができますし、密輸出などの不法取引によって海外に出荷されるケースもあります。ラケットも同様の問題があります。
 
お小遣いで購入している学生選手にとっては大打撃となるであろうが、この記事を読んで、なぜ値上げをしなければならなかったのか、その理由を理解することもまた必要なことなのかもしれない。 

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