卓球のプロリーグが誕生しないワケ その②


卓球のプロリーグ誕生は卓球ファンの多くが望んでいることであると思うが、日本リーグとプロリーグ設立検討準備室との関係性は、ちょっと不穏な方向へと向かっているようなのである。

 
 
日本実業団リーグ連盟専務理事の佐藤真二さんは次のように語る。
「私も12月の理事会でそうなる(賛否の決定)と思っていました。日本リーグサイドは8月28日のプロリーグ設立検討準備室(以下準備室)との話し合いで、日本リーグ用のプレゼン資料を用意してくださいと要望しました。ところが10月5日の話し合いで出てきたものは従来の企画書であり、プロリーグを作るうえでのメリット、デメリットの説明がない。明らかに資料として不足していると思っています。
 今までの資料は海外リーグの説明であったり、企業チームがプロリーグに参画できるかどうかを決断するのに必要な具体的資料、プレゼンではないと日本リーグサイドは判断をしています。もし示される企画書が理解できるものであり、加盟チームから理解を得られるものであれば手順を追って各チームのヒアリングをしてもらっていいと思っています。
 ただ現実的にはそれが不十分で、もし資料があがってきて日本リーグ内のプロリーグ対応委員会でその資料をもんで、準備室との理解のできる資料になれば手順を追って各チームにプロリーグの説明をする。その後、準備室が各チームと具体的なヒヤリングを行えばいいと考えています。
 だから理解・満足できる資料が出ていない今の時点で日本リーグは賛成も反対もない。プロリーグのほうは日本リーグを大事にしていくと言ってくれているので、互いが共存共栄できるように今後、現実的な問題を検証していけばいいと思います」 
 
これに対し、プロリーグ検討準備室の松下浩二室長の言い分はこうである。
「設立検討委員会で3年間、準備室が立ち上がってから6カ月経っています。今まで何度も話し合っているし、その設立検討委員会のメンバーに佐藤真二・日本リーグ専務理事も入っています。何度も会議をやってきて、ここに来て『企画書として整っていない、これは日本リーグ用ではない、共存共栄できる日本リーグの立場になった案じゃないといけない』言われています。佐藤専務理事が一番わかっているはずですが、本当に今までの経緯や話し合いを日本リーグの方たちに説明しているのかどうか疑問です」
 
「今までリーグのほうから具体的にどの部分が不足しているのかという要望は一度も出ていない。今ままでの資料にはプロリーグの収支、スポンサー問題、分配金、運営費などのことも書いています。これ以上何を望んでいるのか具体的な指摘がなく、『もっと良いものを』と言われています。過去に出した資料でも何が足りないのかを言わないまま、『もっと具体的なもの』を出してくれと言われても作りようがないのが現状です」
 
松下さんの憤りが伝わってくるね。
ギスギスした会議の様子が目に浮かぶようですな。
 
ひょっとすると日本リーグ側から「現役時代のカットと違って企画書の切れ味は悪いですね」なんてことも言われたかもしれない(そんなわけない)。
 
一連の報道を見ていると、孤軍奮闘といった感じの松下さんであるが、「なぜそこまでプロリーグ設立にこだわるのか?」という質問に対してこう答える。
「プロリーグを作る大義があるからです。日本にはプロリーグが絶対必要です。世界の強国で自国にプロリーグがないのは日本だけです。選手が卓球に専念して生活できる環境を作ることが競技力向上にもつながります。またプロリーグは卓球を愛する子どもたちに夢を与えるものだし、それは同時に卓球というスポーツのステイタスを上げていきます。
 日本のトップ選手を国内で観れるのもごくわずかです。大量の選手が海外でプレーしている現状もあります。なぜプロリーグが必要なのかという大義があるから、私は全くぶれていません。胸を張ってプロリーグ設立を推し進めていきます」
 
卓球はプロとしても十分に稼げるとも力説する。
「スポンサー料、入場料、賛助会費、リーグからの分配金、クラブとしてのプロ活動(卓球教室、グッズ販売)などで十分やれます。プロリーグ全体でもサッカーのJ2の1クラブの運営費とたいした変わりはない。卓球にはそれだけの力があるはず」
 

「卓球のプロなんて」と多くの人から反対されながらも日本人プロ第1号となって活躍し続けた松下さんの言葉はやはり重い。
 
そして、プロリーグはトップ選手の引退後の生活とコーチの質の向上にもつながるという。
「1983年以降、世界選手権に出場をした男子選手で引退をした選手は51人。その内の3分の2が卓球にたずさわっています。残りの3分の1は卓球と関係ない仕事をしています。卓球にたずさわっている人の半分は指導者です。世界で戦うほどの実績を残した人が卓球界から離れるのは卓球界の損失です。プロリーグはそういう選
手たちの受け皿でもあります。選手のセカンドキャリアを考えた時に日本代表になった人がフルタイムでコーチできる環境、それがプロリーグでもあり、そこで経験を積んでナショナルチームのコーチになる人が出てくる。逆に、ナショナルチームでコーチしていた人が、やめた後にプロリーグのコーチになるケースもあるでしょう。
 プロリーグによって、経験を積むことでコーチ能力が高まり、プロコーチが働く場を提供できる。コーチのレベルが上がっていけば、日本の競技力も上がるのは必然でしょう。つまりコーチが育っていけばよい選手も生まれていくのです。
 現時点で、水谷、丹羽、松平健太、吉村、大島、岸川という日本のトップクラスも(来シーズン)日本リーグではプレーしません。プロ選手、もしくはこれからプロになろうとする選手がそこを目指していない。大阪でやった日本リーグのファイナル4でも観客は300人足らずだった。最盛期に58チームあった加盟チームも28チーム(実業団チーム)になっています」
 
学連はおおむねプロリーグ設立には賛成しているとのことなので、やはりネックとなるのは日本リーグのようだ。かといって日本リーグを悪者のように言うのは絶対に違う。
 
日本リーグは1977年からスタートして38年間という長い歴史があり、卓球界への影響・貢献は計り知れない。それは本当にリスペクトすべきことである。
 
プロリーグが誕生すれば、日本リーグ加盟チームのいくつかがプロリーグに移ったり、最悪日本リーグが消滅してしまうかもしれないと危惧しているのかもしれないが、日本リーグを運営している人たちの立場からすればそう思うのは当然のことだ。
 
どちらが正しくてどちらが間違っているということはない。
 
ただ、「どちらが楽しいか」で言えばプロリーグができた方が楽しい、といちファンとしては思う。
 
日本のスター選手が観られるのは、全日本選手権やジャパンオープンなど一部の大会だけで、ほとんどのトッププロは海外のプロリーグに参戦しているため観る機会が少ない。
プロリーグが誕生すれば日本のスター選手を観る機会が増えることに加えて、助っ人としてやってくる海外のスター選手も観られるようになるだろう。
 
プロリーグができたとしても日本リーグが消滅するわけではく、共存できる道がきっとあるはずで、理想論ではあるが、ともに卓球界を盛り上げていければ最高だ。

プロリーグ、日本リーグ、海外リーグ、いろいろな選択肢があった方が卓球キッズたちの夢も広がるわけだしね。
 
 
プロレスなら面白いが、卓球界で組織同士が争っているのを見るのは何とも悲しい気分である。
とにかく次の理事会では「プロリーグ発足の準備を進めます」という声が聞けることを期待したい。
 
ところで、もし卓球のプロリーグが誕生したら、どんな名称になるんだろう。
やっぱり「Pリーグ」かな。
思い切って和風に「卓リーグ」とか(麻雀のリーグみたいだから却下)。
 
なんにしても、その時は名称を一般公募してもらいたいものである。
 

2 件のコメント

    • 犬山次郎さん
      あっ、そうなんですね (>_<) アルファベット一文字だとかぶる可能性が高いので、よく考えて決めないといけませんね。

  • コメントを残す

    メールアドレスが公開されることはありません。