吉田沙保里の怒りと水谷隼の問題提起に思う、スポーツにおける演出の難しさ

先日、『ビートたけしのTVタックル』(テレビ朝日系)を観ていたら、女子レスリングの「ユニフォーム変更問題」をやっていた。


世界レスリング連合が、レスリングのユニフォーム(シングレット)変更について審議を始めたそうで、男子はグレコローマン(上半身のみの攻防)は上半身裸にするという案があり、女子は従来の上下一体型から、ビーチバレーのようなビキニタイプにしようという案も浮上しているというのだ。

男子の筋骨隆々の肉体美を晒すのは、観る側も楽しめそうであるが、問題は、やる側にとって難がある女子の方だ。

五輪3連覇中の女王、吉田沙保里選手はこの案に対し断固反対の声を上げている。

 

激しく接触するレスリングでは、ビキニタイプだとポロリする可能性があると指摘し、「絶対イヤ」と憤っている。

更に、その姿がイヤでやめる人がでてきて競技人口が減るのではないかと危惧。

現に吉田選手も、もし採用されたら、「引退する」とまで言っているのだ!

リオ五輪で4連覇という大偉業に挑戦する女王が、こんなことで引退してしまうなんてことになったら残念すぎるではないか!

 

けれど、世界レスリング連合も伊達や酔狂で言っているわけではないようだ。

 

1月15日にスイス・ローザンヌで行われた世界レスリング連合の理事会において、「マットと選手・審判のユニホームを変更することが承認された」とのこと。

レスリングをよりメジャーなスポーツにするために、色々と変更するようである。

マットに関しては「テレビとネット中継での見栄えをよくするため、中央がダークブルー、ゾーンがオレンジに置き換えられる。」とのことで、我が卓球界もメジャー化計画のひとつとしてフロアマットの色を変更した過去があるので、これはすんなり理解できた。

審判のユニホームについては、「現在のスーツとネクタイ姿から、以前のようなポロシャツ姿に戻る」とのことであるが、これは観る側からすれば「どっちでもいいよ」という気持ちなので「へえ」とう感想以外はない(深い意味があっての変更だったらごめんなさい)。

ここまではいい。しかしここからである。

シングレットをビキニタイプにするのはちょっとどうなんだろうかと思うのだ。

セクシーさをアピールして観るものを惹きつけようなんて、バラティの企画じゃないんだから!

 

めちゃたくさんのアイデアの中にこんな案もありましたよ、というレベルの話であればわかるが、かなり本気のご様子なのだから、そら吉田選手がマジ切れするのもわかる。

 

「より女性らしく」するという考えがあるそうなのだが、レスリングという競技の性質上、女性らしさを強調する必要があるとは思えない。

実際にポロリ事件が起こってしまった場合にはどうするのだろうか。

世界レスリング連合はそれでも「ポロリは進化系女子レスリングの夜明けぜよ!」と言い放つつもりか。

相撲では、まわしが取れてしまった力士は負けとなってしまうが、レスリングでもポロリした選手は失格、或いは減点、というふうにルールが改正される可能性もなくはない。

そうなったらもう、わけがわからないではないか。

世界レスリング連合のネナド・ラロビッチ会長は「レスリングが見る側にとって魅力的なスポーツであるための第一歩だ。選手とファンが誇らしく感じ、アピールできるようなユニホームに変えていきたい」とコメントしたという。

 

レスリングは一昨年、五輪競技から除外の危機に直面した。

「見る側にとって魅力的なスポーツ」であるために、あれこれ策を練ることはもちろん理解できる。

 

卓球台やボールの色を変えたり、ルールを変更するなど、卓球界が行ってきたメジャー化への改革を見てきているだけに、世界レスリング連盟の気持ちは痛いほどよくわかる。

 

しかしそれが、競技の本質的な魅力とはかけ離れた部分でアピールするというのは方向が違うのではないだろうかと思うのだ。

肌の露出を禁止するイスラム圏の選手たちの問題もある。

多くの選手が嫌がっている変更案は見送った方がいいだろう。

 

より楽しく観戦してもらうためのアイデアや演出であっても、選手の声をよく聞くことが大事であるという話なのであるが、卓球界でも最近、こんなことがあった。

 

「照明暗すぎる」「大会使用球を統一して」卓球“モノ言う王者・水谷隼”の問題提起

水谷の問題提起はふたつ。ひとつは全日本選手権で採用されたプラスチックボール(7種類)が、メーカーによって性質に差があるので、次回からは球を統一してほしいというもので、これは本エントリーのテーマと違うので詳しくは触れない。

 

水谷が問題提起するもうひとつのこと、それが演出面の話なのだ。

もう1つの大きな不満が、暗い照明。男女シングルスの準決勝、決勝が行われた最終日の演出だ。「昨年、一昨年はあそこまで暗くなかったと思う。あの光では見づらい」と水谷は訴える。

 女子シングルス準優勝の森薗美咲(日立化成)も「自分の影が映るし、すごくやりにくい。『みんな普通にやれてるのかなあ』って思うほど違和感があった」と打ち明けた。ショーの要素を強める演出はスポーツ界に広まっており、水谷や女子シングルスの石川佳純(全農)らが制した昨年12月の卓球ワールドツアー・グランドファイナルも同様の環境で行われた。「ラリー中に(照明が)ついたり消えたりして、もっとひどかった」と振り返る水谷は「変えていきたいのは分かる」と、ファン層拡大のため華やかな演出が好まれる傾向に一定の理解を示す。

 

だが、「見せるのを意識するあまり、選手のことを考えないことが多くなった。選手の意見を何も聞いていない」。

ボールの問題を含め、せめて国内大会では、選手の声をできるだけ反映してほしいとの立場を貫く。

 

「コアなファン以外の人も観て楽しめる」スポーツにするための改革は大賛成であるが、試合をやるのは選手である。

選手の声を無視して良い方向へ進むはずがない。

私が思うに、卓球もレスリングも、アイデア会議に選手たちを参加させてみてはどうだろうか。

協会の人たちや指導者、そしてトップ選手が皆で集まってがっつり会議をすればいいと思う。

各々が持ち寄ったアイデアをプレゼンして、そこからあーでもないこーでもないと揉み倒せば、何かしら良き案が出るのでは?

最後に私は言いたい。

女子選手だけに恥ずかしい思いをさせてはいけない。

女子のシングレットをビキニにするのであれば、男子のシングレットもブーメランパンツにするべきである。

 

そこまでやるなら、私も納得しようではないか。

ね、世界レスリング連合さん。

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