【卓球雑学】 両面同じ色でもよかった!? 相手を惑わすアンチラバーの変遷!

今月号の卓球レポートを読んでいると、最後の方に掲載されている「なんでもQ&A」のコーナーに「アンチラバー」についてのQ&Aがあった。

今もまだアンチラバーがあるということに私は驚いたのだが、皆さんはアンチラバーについてどれほど知っているでしょうか。
そこで今日はアンチラバーについていろいろと綴ってみたいと思う。
 

まずは卓レポに載っていたQ&Aをどうぞ――

Qアンチラバーを交換するときの目安
 
『スーパー・アンチ』を使っていますが、ラバーを交換するときの目安はありますか?
 
Aスポンジが劣化して硬くなってきたとき

『スーパー・アンチ』のようなアンチラバーの寿命は、他の裏ソフトラバーに比べてとても長いのが特長です。アンチラバーはシートに特殊なゴムの配合を用いることで摩擦係数を極端に低く抑え、硬く仕上げています。そのシートにバタフライで最も軟らかいスポンジを組み合わせることで、ナックル性のボールを返球することができます。
また、相手の回転の影響をほとんど受けないという特長もあります。
以上のような性質を持つアンチラバーは回転を重視しないため、摩擦力の低下によって回転がかかりにくくなるということを気にする必要がありません。しかし、アンチラバーにも他のラバーと同様に寿命はあります。その見極めのポイントはスポンジの状態の変化にあります。
アンチラバーのスポンジは他のラバーと同じく、ゴムで形成されているため、時間の経過とともに硬化していき、徐々に伸縮力が弱まります。その結果、使い始めたときに比べてラバーの性質が変化していきます。ですから、「打球感が硬い」と感じ始めたときが貼り替えのタイミングと言えるでしょう。
それぞれのラバー特有の性能と寿命を知ることで、最大限の効果を引き出しましょう。

アンチラバーもいくつか種類があるようだが、このバタフライの『スーパー・アンチ』とはこんなラバーである。
相手の打球のスピンを抑えてナックル性のボールを送るなど、相手を惑わすことができるラバーです。ウラソフトラバーと組み合わせて使えば、スピンとナックルの変化プレーで相手をほんろうすることができます。
(バタフライ オンラインショップ)

価格も2200円と、他のラバーと比べて格段に安いね。
私はアンチラバーの現物を見たことはないが、私の持つアンチラバーのイメージといえば、「回転がまったくといっていいほどかからない表面がツルッツルのラバー」である。
町の卓球場にある貸しラケットのようなやつね。
まあ実際はそんな単純なものではないはずであるが、それほどアンチラバーには縁がなかったということだ。
 

そんなアンチラバーであるが、いつ頃誕生したのだろうか?
卓球レポート1981年5月号に掲載された、元世界チャンピオンの長谷川信彦さんのアンチラバーについての記事には次のように書かれてある。

 アンチラバーは’73年のサラエボ大会から

アンチラバーの誕生は、イボ高より10年あとの’71年ごろヨーロッパで生まれたといわれている。それをオーストラリアのカット選手が日本に持ち込み、全国に広まったと聞く。
そして’73年のサラエボ世界大会でアンチ使用者の活躍が目立った。男子でいえば田阪選手を破った李富栄(中国)、今野選手を破ったカットのボルッセイ(ハンガリー)、女子では2位のグロホワ(チェコ)、団体戦で大関選手を破ったカットのキシャジ(ハンガリー)、団体優勝のカットの鄭賢淑(韓国)、女子複1位のカットのアレキサンドル(ルーマニア)などがアンチ使用選手だ。
私もこのとき李富栄組のダブルスと対戦したが、日本ではこのラバーがまだ発売されておらず、表ソフトとアンチの両面で出す変化サービスにやられた。
しかし、このころのアンチラバーは、ふつうの裏ソフトに比べると極端にスピードが出ないし回転がかからない。色は裏ソフトと違うし打球音も違いすぐにアンチで打ったことがわかった。一時人気が出たが、4~5年後には数少なくなった。

2年前から同音同色のアンチが爆発的なブーム

ところが、4年ほど前に日本のある一流卓球メーカーで裏ソフトとほぼ同音同色のラバーが開発された。そして、それを使った選手が’79年、’80年の各種の全国大会で優勝した。各地の大会でもアンチを使った選手が大活躍をし、アンチラバーの大流行が起こった。
この新しくできたアンチラバーは、以前のアンチラバーより「どちらの面で打球したか?」が非常にわかりづらくなった。スポンジの関係で従来のアンチより、裏ソフトに飛び方も近く攻撃にスピ-ドもでる。しかもやや裏ソフトに近いため自分から変化もつけられる。(後略)
卓レポ過去記事 「作戦あれこれ」第65回 対異質ラバー作戦 より抜粋

 

昔はラバーの色がフォアとバックで同じでもよかった時代があった。
その頃は裏ソフトラバーとアンチラバーを貼ったカットマンが、ラケットをクルクルと反転させながら、どちらのラバーでカットしたのかわからないという惑わし戦法で戦っていたという。

 
なぜそれが禁止され、両面が同色でなければならないというルールになったのか?

 
きっかけは、1983年の世界卓球選手権東京大会で中国代表の蔡振華が大活躍したからである。
蔡振華は、フォア面が裏ソフトラバー、バック面がアンチラバーの異質攻撃型の選手で、シングルスでは準優勝した(引退後は中国代表監督を務めた)。

 

実際に動画を観てもらいたい。
紹介するのは83年の世界卓球の団体戦決勝であるが、相手は若き日の初々しいワルドナーだ。
両面同じ色のラバーを貼ったラケットをやたらクルクル反転させているところに注目してもらいたい(ちなみにワルドナーも両面同じ色である)。

蔡振華vsワルドナー 83世界卓球団体決勝

 

この蔡振華の活躍によって、両面同じ色にするというルールに変更されたのである。

斬新過ぎるとルールまで変えられちゃうんだねえ。
恐らく蔡振華はこのあと苦労したはずであるが、それを思うと気の毒な気もする。

ラバーという用具がある卓球は、テニスやバドミントンと比べて戦型の種類が多いというのが特長である。

アンチラバーを使用している日本や世界のトップ選手というのは私は知らないが、アンチラバーを駆使して戦う常識破りのスター選手の登場を心から願う!

 

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