【異分野に学ぶ】 平成の大横綱  「白鵬のメンタル」

全日本選手権で7度目の優勝を飾り、斉藤清と小山ちれの持つ8度優勝の記録まであと一つと迫った水谷隼。

そして水谷が優勝した日から5日後、両国国技館で行われた大相撲初場所(13日目)で、横綱・白鵬が史上最多33度目の優勝という前人未到の大記録を打ち立てた。

水谷はこれからも、何度も優勝すると私は思っているが、レベルが年々上がっている今の全日本で優勝回数を重ねていくことは並大抵のことではない。

そこで私は、優勝記録を塗り替え、今後もその記録を伸ばし続けるであろう大横綱・白鵬の強さの秘密を探ることで、水谷が勝ち続けるためのヒントが得られるのではないかと考えた。

そして見つけた本がコレだ。
本書を読む前、私は、『水谷隼が大記録を打ち立てるために白鵬から学ぶべきこと』という、身の程知らずで大きなお世話なエントリーを書こうとしていた。
しかしすぐに、そんなことは書くべきではないと思い直した。

大相撲は年に6場所開催されており、年に1回の開催で7度の優勝を誇る水谷は、白鵬にも引けを取らない偉業を達成しているわけで、勝手に「学ぶ」などと言っては、偉大なチャンピオン水谷隼に失礼であると気づいたからだ。

そこで私は、勝ち続ける2人には共通点があるのではないか? 「そうだ、共通点を探そう!」というスローガンを新たに掲げ、『白鵬のメンタル 人生が10倍大きくなる「流れ」の構造』を紐解いたのである。


入門当時、体の線も細く、将来大横綱なるとは誰にも思われていなかった白鵬が、その夢を叶えられたのはなぜか。
トレーナーとして10年以上にわたり、白鵬のフィジカルとメンタルをサポートし続けて来た著者によると、キーワードは「流れ」。

勝負に勝つことはもちろんのこと、品格までも求められる横綱という地位。
その重責によるプレッシャーやストレスは相当なものである。
そうした相撲人生で求められるものは、競技者としての強さだけではなく、「メンタルの強さ」であった。

そんな白鵬がメンタルを保っていられる秘訣は「流れ」にあるという。
「流れ」を大切にしている白鵬は、日常生活の様々な場面で、常にそのことを意識している。
 
たとえば、どこで着替え、いつトイレに行き、どの場所でまわしを締めるか、あるいは、どの場所に立って何回四股を踏み、すり足をどのくらいやるか――毎回行っているルーティンの所作がおおよそ決まっているのです。いまでは朝稽古の際にも、本場所同様に、土俵で塩を撒くようになりました。
(中略)
「流れ」を意識するということは、自分の動作を意識的に行っているということです。何となくではなく、ちゃんと理由がある。あまり注目されてはいませんが、じつはそれが、横綱の強さの秘密なのです。

つまり、ルーティン・ワーク(同じことの繰り返し)である。
これにより、試合の日でも、いつもと同じように振る舞うと体にリズムが生まれ、「うまくいく流れ」が作りやすくなるという。

技術面においても白鵬は、自分の「型」を追求することで、「うまくいく流れ」を作り出す。
本番でイメージ通りの動きができるように、稽古で繰り返すことで型を体に覚えさせるわけだが、白鵬はそのやり方が他の力士と少々異なっていて、それは、「格下の(弱い)力士」と稽古することで型を作ろうとするからだ。

卓球の練習もそうだが、稽古では、自分のレベルの向上のためには、きるだけ強い相手とやった方が良いと普通は考える。
しかしそれでは、自分の型はなかなか通用せず、最後まで自分の動きを通すこともできないため、いつまで経っても型が作れない。

これに対し、自分より弱い力士と繰り返し稽古をするメリットはというと、
 
思い通りに動ける分だけ、自分の型が作りやすく、つねに確認ができ、自分の体におぼえこませていくことができます。うまくいかない場合は、すぐに微調整することができ、その動きを確認することも容易でしょう。
 そうやって型ができてくれば自信にもなります。また、うまくいく動きが再現しやすくなる。その再現しやすくなった状態で強い力士と稽古して、本番に臨めれば、手強い相手と戦う際にも十分に対応できるはずです。

白鵬の圧倒的な強さの背景にあったのは、「流れ」によって培われたメンタルが深く関わっていたのだ。
「運を引き寄せる=良い流れを作る」というわけだ。

同じように「流れ」を大事にしているスポーツ選手と言えば、大リーガーのイチローが思い浮かぶ。
何年間も毎日昼食にカレーを食べ続けていたという話は有名であるが、他にもイチローは、毎日同じ時間に同じ練習をして、試合の時も、打席に入る前の動作、打席に入った時の構えなど、精密機械のように常に同じである。

ルーティン化して結果を出している人で、私がもう一人思い出すのが、ジブリ映画の主題歌や北野映画の曲などを手掛ける作曲家の久石譲さんである。
作曲家とルーティンワークはまったくイメージが結びつかないが、久石さんは日々、判で押したような規則正しい生活を送りながら作曲していると語っていた。
まさにこれも「流れ」である。

こうした「流れ」がきちんと作れているとスランプにも陥りにくく、コンスタントに結果が出せる。

そんな「流れ」を作るための方法論を知ることは、どのような立場の人にも有益であるはずだ。

例えば受験生であれば、どのように椅子に座り、どのようにペンを取り出し、どう持つのか、消しゴムの使い方はこうで、ハチマキの結び方はこうする、と決めておいて、日々実践する。更にテスト・試験の時にも同じように行うことで「流れ」を作り、本番の受験でも普段通りの力を発揮する、というわけだ。

私のようにブログを書いている人も、ルーティン化して「流れ」を作れば、「書くことが浮かばない!」「どう書けばいいのかわからん!」と呻吟することもなくなるかもしれませんよ!

全日本選手権で9年連続決勝へ進出している水谷隼。
水谷も、日頃の生活や練習、そして試合当日には、決まった行動を取り、そのことによって自分の「流れ」を作っているのではないかと想像してしまう。
だからこそあれほど安定した成績を残せているのではないか、そんな風に考えてしまう。

競技は違えど、偉大なチャンピオンとして、水谷隼と白鵬の2人には何かしらの共通点がきっとあるはずだと勝手に決め付けて本書を読んだ私であるが、水谷が普段どのような練習をして、どのような生活を送っているのか、私は知らない。

ということで、絶賛発売中の水谷隼の著書『卓球王 水谷隼の勝利の法則―試合で勝つための99の約束事』をこれから爆読みして、共通点を見つけ出してやろうと考えている次第。

それについてはまた近いうちに書きますので、本日はこの辺で。

また明日!(明後日かな)

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