卓球王国を読む 2017年5月号

 

花見の季節だけれど、「花より団子・団子より卓球」の精神で、今月号も楽しく読み倒しました。


卓球王国 2017年 05 月号 [雑誌]

 

今月号の注目企画はコチラ

王者の技 【後編】水谷隼
王者はその瞬間、何を考えているのか

先月号の前編は平野美宇選手の技を中澤コーチが解説していたが、後編は水谷隼選手が自分の技を自ら解説している。

全日本の準々決勝・準決勝・決勝について解説しているのだが、注目ポイントは、技術にフォーカスしているのではなく、「その試合のその瞬間、水谷隼は何を考えていたのか」という頭の中を知ることができる点である。

 

Tリーグへの期待と課題

そしてもうひとつの注目企画がコチラ

未だ見えぬ「Tリーグ」
[1]TリーグへのQ27 回答=松下浩二
[2]日本のスポーツリーグ事情を探る
[3]海外の卓球リーグを探る

4月に新法人が立ち上がり、来年9月の開幕に向けて走り出す「Tリーグ」
しかし、選手も関係者も卓球ファンも、その実態はよくわからない。

そこで、「Tリーグ」の中心的人物の松下浩二さんへの27のQ&A、日本のスポーツリーグ事情、海外の卓球リーグ事情を探りながら、未だ見えぬ「Tリーグ」の実態に迫ってみよう、という内容である。

15ページにわたるガッツリ特集であるので、大まかな構想・今後の予定・課題など、いろいろとTリーグについて知ることができる。

リーグ運営の巨額な資金をサポートしてくれるスポンサー探しや、スター選手の参加の有無など、なかなか大変そうではあるが、「T1の年棒は500万円~4000万円」「T1チームの傘下にジュニアチーム配置の義務化」「テレビとネットの両方で見られるようにする」など、松下さんが描く構想が実現すれば面白いリーグが誕生しそうだという期待を抱ける。

松下さんはTリーグの将来像を次のように語っている。

「Tリーグはすべての卓球人が関われるリーグです。自分たちには関係ない、関われない、できないという問題ではない。自分たちがT1を目指すのであれば、そのクラブ運営に必要なお金を作り出さなければいけない。でも、T1に行けなかったら関係ないかと言ったらそうではなく、T2でもT10でもチームとして活動できるし、楽しむことができる。
(中略)
最終的には、すべてのチームがTリーグに参入してもらうのがこのTリーグ構想ですし、下のリーグにすべてのチームを落とし込んでいこうと思っています。
たとえば、東京には「東卓リーグ」があり、6部まであります。愛知には「社会人リーグ」があり、下は39部まであるとも聞いています。これはいわゆる県や都単位のリーグです。それぞれの市町村にもリーグ組織を持っているところがあります。
卓リーグや愛知県社会人リーグの1部が、将来的にT4に相当するかもしれません。そしてそこで優勝すると、関東リーグ(T3)や東海リーグ(T3)があり、その上のT2が東日本リーグに相当するというイメージです。
そういった地方のリーグを将来的にTリーグのピラミッドの中に組み込んで、日本全体をすっぽりと包み込むのがTリーグです」

 

これが実現すると、クラブ、実業団、学校、同好会などのカテゴリーに縛られることなく、すべての卓球人が自由に参加できるという、卓球界の素敵な未来が訪れるわけだ。

卓球ファンはワクワクしながら待つしかないのであるが、あまりにも情報が入ってこないと不安になってしまうのも事実。

この特集は、そんな不安を少しでも解消し、Tリーグについてあれこれ考えるきっかけになるだろう。

 

伝説のコーチング その全貌が明らかに

そして今月号から始まった、注目の新連載がコチラである。

作馬六郎の王子卓球
第1章 〈必殺技・王子サービス〉

王子サービスの生みの親である作馬六郎さん。
独自の卓球理論とコーチングで多くの選手を育て上げた作馬さんが、その指導法のすべてを公開する、という企画である。

作馬さんが35歳のときに誕生した王子クラブ。
そこで習っていた選手が四天王寺中に進学してからは四天王寺中・高の選手を受け入れるようになったという。
全国から才能あふれる選手が集まってくる四天王寺では、厳しい環境を勝ち抜いた選手がレギュラーとして試合に出場する。
その一方で壁にぶつかり伸び悩む選手もいて、悩みを抱え、最後の救済場所として王子クラブにやってくるそうだ。

「王子は落ちこぼれだからね。私のところに来る選手は体は小さいし、体力もない。とてもアスリートとは言えない。だから普通の戦い方や用具では勝てない。うちで何かをつかんで勝てるようになり、四天王寺に戻るということが多いです」(作馬)。一度卓球を諦めた選手がチャンピオンになる。いつしか「再生工場」とも呼ばれるようになっていた。
作馬を一躍有名にした「王子サービス」は体が小さい選手が勝つために誕生した必殺技だ。卓球はどんなにすごいプレーをしても入る点数は1点。強烈なドライブでも、長いラリーでも、そしてサービスエースでも同じ1点。だからこそ作馬はサービスの重要さを説く。「卓球はサービスがすべて。サービスという1球目攻撃を磨けば体が小さくても勝てる」。この教えは今でも変わらない。

20歳の時に卓球を始めたという作馬さん。
当時は1台の卓球台を6~7人で使い、勝ち抜き戦を行っていたため、負けると次の試合は1時間後になる。
そこで、1人でできるサービス練習に力を入れることになり、その結果生み出されたのが王子サービスなのだという。

ひとりの練習ではラリーには強くなれません。しかし、ラリーをする前にサービスでの1球目攻撃で相手にミスをさせることができる。そこから少しずつ勝てるようになりました。その時の経験が私の指導の根幹になっています。
サービスでも同じものばかりではダメなので、色々な人のサービスを研究しました。また、私はスポーツ全般が好きだったので、違うスポーツの技術を卓球に活かせないかと見ていました。のちに王子サービスと言われるしゃがみ込みサービスは、テニスをヒントにして生まれました。一般的に卓球のサービスはボールの下か横をとらえますが、テニスはボールの上をとらえて、縦に振ります。テニスは卓球以上にサービスを持っている選手が有利で、サービスも合理的です。それを研究し、王子サービスができあがってきました。

 

第1章の今回は「王子サービス」がテーマということで、作馬さんの教え子で、元五輪代表の福岡春菜さんがモデル&解説を担当している。

試合動画を見ただけではそのやり方やポイントがわからない王子サービスであるが、福岡さんの解説でその秘密をバッチリ学べるというわけだ。

今後の展開が大いに楽しみなこの企画。
「個性的な卓球を身につけたい」「自分のプレースタイルを大きく変えたい」という人は必読の連載となりそうだ。

 

そして、長くなるので詳しくは書かないが、今野編集長と卓球コラムニスト・伊藤条太さんによる、追悼記【さよなら久保彰太郎さん】も非常に興味深い記事であった。

久保さんはかつてタマスの取締役専務を務めていた方。
この追悼記では、常ならぬ執念で卓球界を変革し、卓球市場を動かしていた陰の人物であったことが紹介されている。
これほどすごい人物でありながら卓球ファンですらその名前を知っている人があまりいないのは、久保さんが表に名前が出ることを徹底して嫌っていたからだそうだ。

今回初めて明かされる、偉大な卓球人のその人生。
卓球ファンにはぜひ読んでいただきたいレクイエムである。

 

以上、卓球界の情報という名のサクラが満開の5月号でした。

 

 

5 件のコメント

  • サーブはやはり最も重要ですよね。
    サーブで点が取れれば負けることはありませんし
    王子サービス…是非使ってみたいです
    久保さんの名前初めて聞きましたが、立派な人ですよね。
    追悼を深く読むタイプではないのですが
    のめり込んでしまいました。
    彼のことを生前に知っていれば、会いに行き話させてもらいたいかったです

    • しんこうしんこうさん
      サービスを徹底的に鍛えれば格上選手に勝てる可能性もグッと上がりますよね。
      ひとりの時にどれだけ黙々と練習できるかにかかってきますね。
      作馬さんにはぜひ、ペンで王子サービスを使う選手を育ててもらいたいですww

      久保さんの情熱には本当に敬服します。
      私も名前だけは知っていましたが、これほど凄い方だとは思いませんでした。
      講演会などやってほしかったですね。
      久保イズムを継承する方の登場を祈るばかりです。

  • 卓球王国待ってました!笑
    やはり他のスポーツなどを理解すると理屈で覚えるのでいいですね。ジャンプの某卓球漫画ではテニスのサーキュラースイングやってましたね笑

    • シェーク裏裏野郎さん
      いろんなスポーツを応用できそうな気がしますねw
      意外なスポーツからヒントを掴めれば、個性的な技を生み出すことができるかもしれません。
      相撲の摺り足を卓球に使えないかと考えてますが、なかなか難しいです 笑

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