卓球レポートを読む 2017年12月号

 

今月号は、発売日当日に猛烈な勢いで一気読みしました。

 

 

全日本にかける男の準備

今月号の注目企画はコチラである。

【カラー特集】
水谷隼のルーティン
最強の男が勝つためにしている最高の準備とは?
【インタビュー】
水谷隼
『これからも日本の卓球界を引っ張っていく存在でありたい』
~歴史を変えた男のモチベーション~

インタビューの方は、おなじみスポーツライターの城島充さんがまとめたもので、城島さんの個人的な追憶を交えながらの、水谷選手の心象風景レポートは、城島さんでないと書けないであろう秀逸な内容となっている。

で、ここで取り上げるのは「水谷隼のルーティン」である。
こちらは、水谷選手が9度の優勝を果たしている全日本選手権に焦点を当て、水谷選手がどのように準備をし、どのように試合に臨むのか、そのプロセスを細かく追うことで、技術・戦術とは別の側面からその強さの秘密に迫ってみる、という企画である。

〔試合前日までのルーティン〕
〔試合前日のルーティン〕
〔試合当日のルーティン〕
〔試合後のルーティン〕

以上の4つのルーティンについて、計20の質問に答えているのだが、技術的なこと以外のことを知ることができる貴重な内容となっていて非常に興味深かった。

例えば、〔試合前日までのルーティン〕より、こんなQ&A。

Q7 試合前のジンクスはある?

温泉に行く
ジンクスというか、最近は試合の始まる前日に温泉に行くのがルーティンになっています。平成24年度の全日本の前に、行き慣れたところではなく初めての温泉に行って、いつもは引かないおみくじまで引いたら「凶」が出て、決勝で丹羽(現スヴェンソン)に負けたので、それ以来、自宅近くの温泉に変えました。
中では、サウナに入ったり、湯船に浸かったりしてリラックスしています。若い時は必要ありませんでしたが、最近はマッサージもするようになりました。効果は分かりませんが、気持ち的にやっておいた方がいいかなという気がして。歳ですね(笑)。

まさに大人のルーティン。
私も最近よく温泉や銭湯に行くので、そのリラックス効果はよくわかるが、試合の前日に行くというのが面白い。
ちなみに、「編集部注」によると、水谷選手の言う「温泉」とは、いわゆる「スーパー銭湯」のことなんだとか。
この感性もまた、独特で実に面白い。

また、〔試合後のルーティン〕より、こんなQ&A。

Q19 試合に勝ったときは?

早く帰る
勝ってその日の試合が終わった場合、翌日の試合があるときは一刻も早くホテルに帰って休みたいですね。会場は、いるだけで精神的に疲れるので。
試合が終わったらまず交通機関をチェックして、すぐに帰る準備をします。翌日の対戦相手が試合をしている場合は観戦することもありますが、試合が始まるまでに時間が空いていたら、待ってまで見ることはしません。
帰ったら、コーヒーを飲んだりして「普通」に過ごします。普通が一番です。
体のケアはストレッチを軽くするくらいで、状態によってはアイシングやマッサージもします。
後は前日のルーティンと同じですね。

こんな感じで20の質問に答えているわけだが、我々一般プレーヤーと同じような答えもあれば、さすが水谷選手と感心する独特のこだわりもあった。

私は毎年全日本選手権を観戦しに行っているんだけれど、こうした選手の裏事情を知った上で観戦すれば、いつも以上に楽しめそうである。

次の全日本で水谷選手を見るときは、1つ1つのルーティンに注目しながら観戦したいと思う。

 

ツッツキの極意

もう1つの目玉企画がコチラである。

世界の技から学ぶ!
ツッツキと、ツッツキからのラリー

こちらの企画は、世界卓球2017デュッセルドルフで撮影した連続写真の中から、トップ選手たちがツッツキしているシーンをセレクトし、技術的なポイントに加えて、ツッツキした後の展開についてもポイントを解説する、という内容である。
登場するのは、馬龍、張継科、樊振東、張本智和、丁寧、劉詩雯の6選手。

前半はツッツキの技術的なポイントの解説となっているが、そこからちょっこし抜粋してみる。

フォアハンドでツッツキするときのスイング
ひじの屈伸に注目!
続いてフォアハンドでツッツキするときのスイングのポイントを紹介しよう。
右足を踏み込んでひじにゆとりをつくり、打球面を上向きにして準備したら、準備で曲げたひじを伸ばして前方向にスイングすることがポイントだ。
打球するときは、ボールの下の方をこするように打つことが基本だが、効果的なツッツキを送るためには、ボールをこするだけでなく、「押し」を加えることも意識しよう。押す力を加えることによって、打球にスピードが出るので、相手の時間の余裕を奪うことができる。
打ち終わりまで前傾姿勢を保つこともポイントだ。スイング中に上体が起き上がってしまうと、スイングが不安定になるので注意しよう。

 

私の場合、ツッツキをするときに、切ることを意識してインパクトの瞬間を強くすることはあるけれど、意外に「押す」ということに意識がいっていない。
深いツッツキを送って相手の体勢を詰まらせるためにも、「押す」ことをしっかり意識しなければいけないと思った。

にしても、派手さのない繋ぎの技術であるはずのツッツキが、中国のトップ選手がやると、なんとも言えないカッコ良さが漂うのが不思議である。
ツッツキで魅せることができる中国選手は、もはや芸術家の域である。

私もツッツキが様になるようなプレーヤーになりたい――。

 

んなわけで、今月号はこんな感じである。

さて、私は全日本選手権を毎年観戦しに行っていると言ったが、東京体育館が改修工事に入るため、2019年と2020年の全日本選手権は大阪市中央体育館で開催されるそうなのである。

私個人としては実に残念な限りであるが、全日本選手権を東京以外の地で観られるというのは、多くの卓球ファンにとってはプラスなことである。

大阪でのいつもと違った雰囲気の全日本選手権、私もぜひ観てみたいものである。
たこ焼きを食べながらの観戦なんて、きっと楽しいに決まっている。
嗚呼、時間が取れたら大阪まで行きたい――。

 

4 件のコメント

  • 以前神巧也選手のブログでツッツキについて質問した際に回答をいただけたので、そこから抜粋。
    ・ツッツキは有効なレシーブのひとつ
    ・ストップと同じモーションからツッツキすれば相手の判断が遅れる
    ・返球されても、判断が遅れてからのドライブは質が落ち、カウンターを狙いやすい
    ・ツッツキ=守りの技術 ではなくツッツキ=攻めの技術 の意識を持つことも大切
    だそうです。参考までに。

    • Kさん
      神選手のコメントありがとうございます。参考になります。
      特に最後の「攻めの意識を持つ」というのは大事ですね。
      私もツッツキはできるだけ攻撃的にと思ってあれこれ工夫していますが、いざ試合になると「入れにいくツッツキ」になっちゃいます……。
      ツッツキの奥深さははかり知れないですね…。

  • やっぱり、卓球レポートといえば水谷選手って感じですねー
    自分的には荷物のエピソードが面白かったですね笑
    編集部注の試合にかける思いとこの取材にかける思いの
    違いを思い知らされたというのが良かったです

    まぁ、当たり前といえば当たり前ですけどね笑

    • しんこうしんこうさん
      卓レポの水谷選手への特別な愛情を感じますよねー。

      今回の企画の編集部注は、両者の間に深い信頼関係があるからこそ書けるユーモアが随所にあって面白かったですね。
      ゼッケンのくだりもナイスコメントでした 笑

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